ジャド・アパトー製作、グレッグ・モットーラ監督、マイケル・セラ、ジョナ・ヒル、クリストファー・ミンツ=プラッセ出演の『スーパーバッド 童貞ウォーズ』。2007年作品。日本では劇場未公開。
…これ以上ないぐらい頭の悪い邦題(原題はただの『SUPERBAD』)^_^;
タイトルどおり、今回は下ネタ・ワードや「童貞」連呼したりするんで、そういうのキライなかたはご遠慮くださいませ。
あと「くだらない」っていうのは褒め言葉です。
高校の卒業パーティでそれぞれ好きな女の子とヤるために3バカ童貞たちが奮闘する。
内容はそれだけ。
なんかこう書くとかつての『ポーキーズ』や『超能力学園Z』みたいなライト・エロ・コメディを連想するけど、この映画はそのほとんどが会話劇なので、映るのは冒頭のエロ雑誌の表紙のお姉さんの“B地区”と後半の女の子の下着姿ぐらい。それ以外にはおっぱいとか裸は出てこない。
下ネタのほとんどは会話の中のみ。
だから喋ってる内容がわからなければ意味不明だし面白くもなんともない。
どうしてこんな恥ずかしいタイトルの映画を観ようと思ったのかというと、3人の童貞の一人を演じているのが『キック・アス』(感想はこちら)のレッド・ミスト役のクリストファー・ミンツ=プラッセだから。
それと製作のジャド・アパトーはスティーヴ・カレル主演の『40歳の童貞男』の監督で、彼の関連作品は映画雑誌「映画秘宝」で今までに何度も取り上げられてきたので。
『スコット・ピルグリムVS. 邪悪な元カレ軍団』(感想はこちら。しかし悲惨な邦題だな)の主役マイケル・セラも童貞君の一人で出ている。
女の子の一人は『ゾンビランド』(感想はこちら)『アメイジング・スパイダーマン』(感想はこちら)のエマ・ストーン。
パーティ・シーンでは、『キック・アス』で主人公の太っちょ眼鏡の友人を演じていたクラーク・デュークの顔も。
また、監督のグレッグ・モットーラはこれのあとにジェシー・アイゼンバーグ主演の『アドベンチャーランドへようこそ』(感想はこちら)を撮っている。こちらも日本では未公開のDVDスルー作品(※その後『宇宙人ポール』も監督。感想はこちら)。
そんなわけで、なんか面白そうだな、と思っていたのです。
そんで実際どうだったかといいますと。
…く、くだらない。最高に。
あまりにくだらなすぎるのですべてを細かく解説はしないけど、この映画だけ観てるとアメリカの高校生ってみんなアホなんじゃないかと思えてくる。
実際はメチャクチャ賢い人だっていっぱいいるはずですが。
以下、ネタバレを含みます。
始まりからいきなりエロサイトについての会話。
ほとんど『キック・アス』の冒頭と同じというのが可笑しい。
友だちの母親の胸の谷間を見てうらやましがったり、アソコが勃っちゃったらどうやって隠すかとか、小さい頃からPOKOCHINの絵ばっか描いてたとか、パーティにちゃっかり潤滑ゼリーを用意、とか、こいつらの会話の内容があまりにも低脳なのでアメリカの高校生に親近感が湧いてくるけど、一方では日本人に生まれてほんとによかったとも思う。
奇しくもここ最近『ソーシャル・ネットワーク』(感想はこちら)『グレッグのダメ日記』(感想はこちら)、そしてこの『スーパーバッド』(さらに『小悪魔はなぜモテる?!』も。感想はこちら)と、アメリカの中・高・大学を描いた作品を観てきたわけで、たしかに映画的な誇張はあるんだろうけど、なんというか、アメリカ人って子どもの時から大人になってもずーっと競争を強いられているんだな、と。
必死になって自分の居場所を確保しないと大変なのは日本だって同じだけど、でもあの国は何から何まですべてが弱肉強食の世界。
虚勢を張って、時にはウソついてでも自分を強くかっこよく見せつけないと周囲から「ルーザー(負け犬)」と見なされる。
いい年した大人が「お前なんかが来るな!」とパーティからも叩き出される始末。
マッチョ天下の国では、いくつになっても「負け犬」はみんなの前で恥をかかされるのね。
さて、3バカ童貞たちは卒業パーティで女の子たちと一緒に飲む酒を手に入れるため、身分証明書の偽造を企てる。
そこで活躍するのがミンツ=プラッセが演じるフォーゲル。
まずこいつは登場してすぐに、歩く女の子のパンツを後ろからガン見している。
大学に進学する前に童貞を捨ててセックスの達人にならなければ!(なんでだよ^_^;)とムダにあせっている他の2人から超然としているフォーゲルは見た目も身振りも喋り方もいかにもな“ギーク(キモい奴)”なんだけど、その一挙手一投足が面白すぎて次第になんだか愛らしくなってくる(でも童貞友だちからは「性犯罪者みたいな顔」といわれる)。
こういう顔と外見の人、日本にもいるよね(^o^)
なんとなく、ミンツ=プラッセってそのうち自分で監督とかしそうだなぁ、ウディ・アレンみたいに。同じユダヤ系だし。
そーいやアメリカのコメディ畑の人たちってユダヤ系が多いのはどうしてなんだろう。
何かでその理由を読んだおぼえがあるんだけど、思い出せない。
んで、そんなフォーゲルが自分で偽造した身分証明書で使った偽名が「マクラヴィン」。
他の2人から「そんな名前があるかよっ!」とツッコまれるけど、ふぅん、アメリカじゃマクラヴィンって名前は珍しいのか。
しかもただの「マクラヴィン」だけ。ファーストネームがない。
あとで警官がいう台詞「たしかに一つだけの名前って最近は多いもんな。シャキーラとか」でちょっと笑った。
このマクラヴィンことフォーゲルのインパクトが強かったので、クリストファー・ミンツ=プラッセ(長い名前だな)は今でも見知らぬ人から「マクラヴィン!」と呼ばれるんだそうな。
多分一生呼ばれるでしょう^m^
今なら「レッド・ミスト!」だろうけど。
そんでそのマクラヴィンが年齢を偽ってニセのIDを使ってコンビニの酒を買おうとするのだが…。
しかし、未成年が酒を調達する、というネタだけでこんなに引っ張れるってすげぇな。
観終わって思ったけど、頑張れば自主映画でも撮れる話だもん。
『グリーン・ホーネット』の脚本・主演のセス・ローゲンが警官を演じてるけど、今年28歳(2011年当時)ってこの人20代にはどうしても見えないんだが(^▽^;)どー見ても30過ぎのオッサンだよ。
このセス・ローゲンとモットーラ組の常連ビル・ヘイダーが演じる警官2人組は、銃を撃ちまくったりパトカー大破させたりと現実離れした「こち亀」の両さんみたいなキャラだけど、この辺の荒唐無稽さと童貞君たちのリアルなボンクラ高校生ぶりが巧いことミックスされてて飽きさせない。
「出会いを求めるならバーじゃなくてスポーツジムに通え」とか、なかなか含蓄がある言葉ではある(って、そーか?)。
女の子たちが美人過ぎないで微妙な顔立ちなのもいい。
ただ不満、というより違和感がないわけじゃないけど。
童貞3人組はいかにもイケてなさげな風貌をしてはいるけど、最初から意中の女の子たちとは仲が良いし、相手の方も彼らに好意を持っているのがわかる。
よーするに、あとは彼らがどう彼女たちにアタックするかだけなわけで。
でもさぁ、そもそも内気な童貞には女の子と仲良くなること自体が至難の業なんだよ!!
3人組は女の子たちの前では一所懸命いいとこ見せようと努力するし、しかもわりと口が達者で女の子との会話も壊滅的なほどヒドくはないので、結果的にかなりイイ感じになるのだ。
アメリカの女の子は積極的だからなのかどうか知らないけど、彼女たちの方からどんどん乗っかってきてくれるし。
だからこれはお話の展開そのものが「そんなわけあるかいっ」のオンパレードともいえて、童貞が見た夢の光景ととれなくもない。
これは「“童貞”を描いた童貞っぽい作りのメタ映画」なのかな?
拳銃=ナニの象徴、というのも実にわかりやすいし。
関係ないけど、むこうの親って『グレッグ~』でもそうだったけど、子どもが悪いことすると罰で「外出禁止命令」ってのをしょっちゅう出すものなんでしょうか。で、それを出されたらどんな悪ガキも律儀に守るのか?
好き勝手やっててなんでそこだけ従順なのかよくわからんが。
…で、はたしてマクラヴィンと童貞たちは女の子に“挿入”できたのか。
まぁこの手の作品の常として、そう簡単にはいかないのだが。
でもこの映画がほんとに描いてたのは童貞喪失のてんやわんやと思わせて、実は“少年たちの成長物語”だったということ。
親友同士で抱き合いながら「I love you.」って、なんだそれw
この監督さんの映画はビール呑んでゲラゲラ笑いながら観るには最適だなぁ。