映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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『パリ警視J』


ジャック・ドレー監督、ジャン=ポール・ベルモンド、ヘンリー・シルヴァ、カルロス・ソット・マヨール、ピエール・ヴェルニエ、モーリス・パリエール、クロード・ブロッセ、チェッキー・カリョ、ロジェ・デュマほか出演の『パリ警視J』(1983年作品。日本公開85年)。PG12。

音楽はエンニオ・モリコーネ

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パリ警視庁のジョルダン警視(ジャン=・ポール・ベルモンド)は、フランス最大の犯罪シンジケートの親分メカチ(ヘンリー・シルヴァ)を追っていた。マルセイユ沖で大規模な麻薬取引があるとの情報を得た彼は、ヘリで組織の船を追い、押収した麻薬を全て海に投げ捨てる。さらに危険地帯へと乗り込んで捜査を進めていくが、メカチはジョルダンの部下を殺してジョルダンに濡れ衣を着せようとする。モンマルトル署に左遷されながらもメカチ逮捕に執念を燃やし続けるジョルダンは、メカチの犯罪を証明できる唯一の男フレディの行方を探り当てるが……。(映画.comより転載)


ボルサリーノ』(1970) のジャック・ドレー監督作品。

ジャン=ポール・ベルモンド傑作選3」で鑑賞。今月いっぱいで終了しましたが、結局、全7本上映中4本を観ることができたのでした。

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60年代の初め頃に撮られた『冬の猿』に70年代初めの『華麗なる大泥棒』『ラ・スクムーン』、そして80年代初めの『パリ警視J』と、20年ほどに渡るベルモンドの出演作品をざっと観てきて、個人的にけっしてなじみ深かったわけではないこのフランスの映画スターを堪能させてもらいました。

もちろん、まだまだ多くの作品に出てらっしゃったんですが、ひと月近くという期間で一人の俳優の主演作品を特集する企画というのは僕はこれまで通ったことがなかったので、なかなか新鮮でした。

最後に観た『パリ警視J』というタイトルに、勝新太郎の刑事ドラマ「警視K」を思い出した…って僕は観たことないんですが「映画秘宝」かなんかの記事であのドラマについて読んだことがあって。

勝新のTVドラマの方は80年の作品だから、『パリ警視J』という邦題(原題は“Le marginal”。ならず者の意)をあちらから頂いたんだろうか。

…なんていうか、テレ東の「午後のロードショー」とかでやってそうなB級刑事アクションでしたね。僕は現在関東圏に住んでないので、午後ローは観れませんが。

麻薬課の型破りデカが超法規的なやり方で犯罪組織のボスを追い詰める、という、スティーヴン・セガール主演とかでよくある奴(笑)

メカチ役のヘンリー・シルヴァは、セガールの映画『刑事ニコ/法の死角』(1988) でも悪役やってましたが。今ではセガールの方が現実の世界で悪役みたいになっちゃってるけど。


ヘンリー・シルヴァさんは今月惜しくも亡くなられましたが(ご冥福をお祈りいたします。22.9.14)、僕が彼の出演作を初めて観たのはウォーレン・ベイティ主演・監督の『ディック・トレイシー』(1990) でした。

ギャング役だったけど、あの映画ではアル・パチーノダスティン・ホフマンもギャング役の俳優たちはみんな顔を特殊メイクで覆ってたから、ヘンリー・シルヴァも絶妙にご本人の顔の雰囲気を残しながらも素顔が全然見えない役柄でした。

↓チーズが溶けたような顔してる人がヘンリー・シルヴァさんです。
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前年にティム・バートン監督の『バットマン』が大ヒットしているので、そのブームに乗っかろう、という狙いだったんだろうけど、そして今観たら豪華キャスト(って、ほとんどおっさんばかりだが)がコミックキャラを楽しげに演じる様子はバカバカしくて愉快かもしれませんが、公開当時に劇場で観た時にはなんだかユルユルな映画だな、と思った記憶が。

『刑事ニコ』はTV放映で観たなぁ。セガールがまだ細くて毛が薄かった。

僕はアクション物を熱心に観てるわけではなくて正直このジャンルにまったく詳しくないので、この『パリ警視J』がハリウッド映画に与えた影響があるのかどうか(あるいは逆にハリウッド映画を意識して作ったのか、それとも世界的にこういう感じの刑事モノがいっぱい作られていたのか)知りませんが、まるでアメリカ映画のような内容だった。石原プロの「西部警察」っぽかったりも。

もうちょっとあとになると『ビバリーヒルズ・コップ』(1984) や『リーサル・ウェポン』(1987) 『ダイ・ハード』(1988) なんかが作られるんですが、1983年頃ってハリウッドではどんなアクション映画があったっけ。

まぁ、上記のハリウッド製の刑事アクションに比べるとこちらは明らかに「B級」なんですよね。予算もシナリオの出来も。

ところどころで高速道路でたくさんの車が猛スピードで向かってくる中を徒歩でそのまま突っ切っていくとか、ヘリからの飛び移りとかカーチェイスやラスト近くでの銃撃など、見せ場もあるにはあるんだけど、ベルモンド演じる主人公ジョルダンは怪しげな場所に行ってはさまざまな種類の裏街道の人間たちと会う。それを結構長々と見せる。

夜の商売の“おねぇ”役で『デリカテッセン』(1991) の肉屋の親父役のジャン=クロード・ドレフュスが出ていた。顔がインパクトあり過ぎ^_^;


これまで観てきたベルモンド作品に比べても、女性の登場人物の活躍の場がほとんどないし、出てきてもお飾りのような扱いで、マッチョなデカが悪人をぶっ飛ばしまくる──みたいなことをずーっとやってる。

そのわりには、ジョルダンの親の話とか、物語の本筋とあまり関係ないやりとりが多い。


アクションも、スタント場面以外は乱闘シーンにしてもどうもユルくて、迫力不足。

歩いているベルモンドに通行人が気づいて振り返ってたり、人通りの多い街なかでの場面がゲリラ撮影なのがわかる。

ベルモンドの特徴として、はみだしデカではあってもけっして熱くならないんですよね。激昂しない。

自分がかつて面倒を見た元ボクサーの若者が殺されても憤怒の表情を見せることはなくて、あまりショックを受けてる様子もない。

でも、そのあと公衆の面前で敵の乗った自動車に追突しまくって殺したり、敵のボスも問答無用で射殺する。

殺す前に台詞のやりとりで物語を引っ張るとか、冷静だった主人公の怒りがついに爆発する、みたいな感情の起伏の描写がないので、彼が何考えてるのかもよくわからず共感したり感情移入することもできない。

ほとんど無敵で危機に陥らないし、夜の女たちからは「タダでもいい」とモテまくる。

そういう部分では、この映画もまた紛れもない「ベルモンド映画」でしたね。

途中であっけなく殺されてしまう元ボクサーの若者フランシスを若かりし日のチェッキー・カリョが演じている。

シャワーシーンで思いっきり彼の「お宝」が映ってるんで、こんな映画でも出し惜しみしないのか、と感心した。女の人のおっぱいもほんのワンシーン出てくる。

ハッテン場みたいなバーのシーンでハードゲイなアニキたちが抱き合ってキスし合ってたりして、どちらの方面に対するサーヴィス場面なんだろうと。


中国系っぽい人々が集う不思議な賭場に行ったり、16歳の少女が囚われている溜まり場に助けにいったり(そんでこれまたあっさりと成功する)、アクション場面以外のアンダーグラウンドな人々の描写が面白かったけど、メリハリのないダラダラした演出なんで観ていて睡魔に襲われてしまった。上映時間は100分ぐらいなのに長く感じた。

ストーリー的にはスッカスカで、ほんとTVで観るB級刑事モノそのものな作品で。

これ観ると、『フレンチ・コネクション』や『ダーティハリー』がいかによくできてて面白い映画だったか痛感するもの。

予算とか映画の規模だけの問題じゃなくて、やっぱり脚本と演出の問題だと思う。ほんとに面白い映画はそうそう作れるものではないということですね。

…ただまぁ、思わず居眠りしてしまいそうになる雰囲気、特に中身が何もない、ちょいと古めな「刑事アクション」のテンプレみたいな要素を集めて作ったような映画が愛おしくなることもあるわけで。

エンニオ・モリコーネのムードたっぷりな音楽が贅沢で、その後作られるハリウッドのアクション物とは違う気だるさがあって、スゲェ面白かった!という満足感は全然ないんだけどw でも憎めない映画だな、と。バカっぽくて。

いろんな意味で80年代っぽいな、と思いましたよ。

さて、今ちまたでは「国葬」が話題になってますが、ベルモンドさんの追悼式はフランス政府が主催して行なわれたんだそうです。

フランスの人々、それから世界中の多くの人々に愛されたスターだったんですね。

あらためてご冥福をお祈りいたします。


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