毎日「とと姉ちゃん」を観ています。
以下の文章は、ドラマの感想というよりも現時点でのこのドラマに対する僕の印象を綴ったものです。
前作「あさが来た」に続いて視聴率も絶好調のようで。朝ドラ史上今世紀最高視聴率を記録した「あさが来た」の勢いに乗って、ということもあるんだろうけど、番組開始から3週間経っても視聴者の興味が衰えないというのは、紛れもなくこの番組自体が面白いからでしょう。
週末には「あまちゃん」で寿司屋の大将を演じていたピエール瀧が仕出し屋の大将の役で登場、他にも癖のありそうなキャストが続々投入されるとあって、まだまだ快進撃は続きそうですね。
前にもちょっと書いたけど、僕は朝ドラは始まって1~2週間ぐらいの時点でピンとこないとそのあと観続けるのがしんどくてだんだんグダグダになってくパターンが多いんですが、今回はそういうことはなくて、この前に再放送されている「てるてる家族」の舞台が戦後の昭和20年代後期、そしてこちらは現在昭和10年前後と、朝ドラ“昭和アワー”といった感じでまるでTVの中がタイムスリップしてるみたいで、朝ドラの現代劇が苦手な僕はこの2本を続けて観るのが毎朝の楽しみになっています。
最初に聴いた時にはあまり印象に残らなかった宇多田ヒカルの主題歌「花束を君に」*1も、繰り返し聴いてるうちにだんだん耳に馴染んで心地好くなってきました。
浜松で少女期を過ごしたヒロインの小橋常子(高畑充希)は父親の竹蔵(西島秀俊)を結核で亡くし、やがて会社からの支援もなくなって母・君子(木村多江)の実家である東京・深川の材木問屋「青柳商店」に母と妹二人とともに向かう。
そこで利発で人を見る目のある常子は祖母の滝子(大地真央)に気に入られるが、養子で跡取りの清(大野拓朗)と常子を縁組させたい、という滝子に君子は反発、一家は再び実家を出ることになる。
ここまでで不愉快な登場人物がほとんど出てこず、たとえば浜松の玉置三兄弟のように常子たち姉妹に嫌がらせをするようなキャラクターたちもしばらくすると彼女たちと打ち解けたりして視聴者が極力嫌な気分を引きずらないように配慮されているのは、「あさが来た」からの方法論だろうか。
大地真央が木村多江の母親役というのは年齢的にかなり無理を感じるんだけど(白髪頭の似合わないこと^_^;)、何か意味があるのだろうか。
おばあちゃんというよりは「姐さん」という呼び方がしっくりくるような大地さん演じる女将さんは、その気風のよさと佇まいも麗しく、片岡鶴太郎演じる番頭とのやりとりなんかも可笑しくて、これも過去が舞台の歴史モノだからこそ通用する(してるのか?w)設定ではある。
ミュージカルの経験のある高畑充希、元タカラジェンヌの大地真央ときたら、いつ彼女たちが唄って踊りだすのか気になるところですが(「てるてる家族」で浅野ゆう子が毎回コスプレして歌いまくってるだけに)w
まぁ、「とと姉ちゃん」はこれまで観たところ従来の朝ドラと同じくオーソドックスな作りのドラマなので、残念ながらミュージカルシーンはなさそうですが。
そう考えると、10年以上前の作品である「てるてる家族」がいかに斬新な演出だったのか痛感するんですが。
夢の中とかでもいいからやってくれないかな。高畑さんはすでに「ごちそうさん」の劇中で歌を披露していますけどね。
そういえば、去年はディズニーの実写映画『シンデレラ』(感想はこちら)の日本語吹替版で共演の城田優と主題歌の「夢はひそかに」をデュエットしてたっけ。
またあの歌声を聴きたいなぁ。
ずん、ずん、ずん、ズンドコモ♪みつき~w
常子のポジティヴさに嫌味や無理矢理な感じがないのは、脚本の台詞の巧みさと、演じる高畑さんご本人が持っているのであろう実直さとユーモアがそのまま役に活かされているからだと思います。*2
お尻叩いて「ここに桃があるよ」とか「おはじきばばあ」とか、おままごとで赤ちゃん役とかw
常子の持つ根っからの明るさ(時々ボケもカマすがけっして鈍感すぎない)が、シリアスな局面でも一家を引っ張っていく力になっている。
そしてそれは番組の放送開始前のインタヴューで高畑さんが言っていた「主人公は常子というよりも小橋家」という言葉通り、家族みんなが支えあって互いに助け助けられて一緒に生きていく、現実の私たちのようなその姿に視聴者は共感を覚えるのだ。
「あさが来た」が女性の社会進出や仕事と家庭の両立などについて描いていたように、この「とと姉ちゃん」でも女性がいかに経済的に自立するか、そして親ではなく本人の意志によって人生を切り開いていくか、ということが描かれていくのでしょう。
「あさが来た」が一本筋の通ったテーマに貫かれていたように、「とと姉ちゃん」もやがて女性のための雑誌を創刊することになるヒロインを通じて今日的なテーマが語られて「あさが来た」同様さらに多くの視聴者の支持を得ることになるかもしれませんね。
僕が朝ドラの現代劇が苦手な理由を考えてみると、「あまちゃん」にしても「まれ」にしても「どんど晴れ」にしても、共感できる“テーマ”が見えにくかったというか、現代劇だとわかりやすいテーマって描きづらいんだと思います。
現代を舞台に「女性の自立」なんてテーマをもろに描いたら、変に押しつけがましくなっちゃいそうで。
現代ドラマで社会や政府、男性などに対してストレートに批判的なことを言ったら反発する視聴者も出てくるだろうし。
意外と不自由なんだよな、現代劇って。
だから「あまちゃん」みたいに“キャラ萌え”の方向を狙うとか*3、よっぽど視聴者が食いつく物語をやんないと半年は持たない。
少なくとも中身が何もない話を僕は半年間も観続けていられません。
「カーネーション」や「マッサン」「あさが来た」などには、過去の時代を舞台にした歴史ドラマの中で“現代”について語ってた部分があって、そのこと自体に意義があったのです。
そんなTVドラマは今では他にどこも作らないから。
そこにヒロインの可愛さや凛々しさだったり、他のキャラクターたちの魅力も加わってさらに見応えのあるものになっていた。
だから僕は“過去”というクッション、フィルターを1枚入れたドラマが好きなんです。
単純に今風の服装よりもレトロなファッションのほうが毎日観ていて楽しいというのもあるし。
大河ドラマと同様に、歴史モノである時点で娯楽的な要素があるんですよね。だから楽しみながらちょっと考えるようなこともあったりして、そのバランスがいいんだと思います。
「とと姉ちゃん」はこれから戦争の時代に向かっていきます(常子たちの“とと”こと父・竹蔵も、生前に戦争についてほんのちょっと語っていた)。女性たちがますます生きにくくなる時代。
そこを乗り越え生き延びて、彼女たちが新しい時代を作り上げていく物語を、これから見守っていきたいと思います。
追記:
ところで、Twitterでもお尋ねしたんですが結局いまだにわからないままなので、こちらでも質問させていただきます。
浜松から東京に向かう小橋一家にお別れにきた人々の中にいた常子の同級生3人組の一人で、画像の左側の女の子役の女優さんの名前が知りたいんですが、どなたかご存知のかたいらっしゃいませんか?
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『女子ーズ』
*1:当初は「ラ~ンラ~ララララララ~ン♪」という合唱の方が耳に残った。
*2:残念ながら、この高評価はのちに訂正しなければならなくなったのだが…。理由は 「とと姉ちゃん」 ただいま迷走中 を参照のこと。