映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『スターダスト』


※以下は、2011年に書いた感想に一部加筆したものです。


マシュー・ヴォーン監督、チャーリー・コックスクレア・デインズ出演の2007年公開映画『スターダスト』。

キック・アス』(感想はこちら)の監督の過去作ということでチェック。

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今から150年前、イギリスの小さな村ウォールの青年トリスタン(チャーリー・コックス)は、片想いしているヴィクトリア(シエナ・ミラー)の気を引くために、地上に落ちた流れ星をプレゼントしようとする。父からもらった不思議なロウソクの力で村を囲む“壁”の外に出たトリスタンは、そこでルビーのペンダントをつけた娘イヴェイン(クレア・デインズ)と出会う。


前もっていっておくと、今回はかなり悪態つきます。

この映画が好きなかたは読まない方がいいかも。

以下、ネタバレあり。


あらすじのとおり、いわゆるファンタジー映画である。

映画館で予告篇を観たけど、そのときはこの手のジャンルに興味を失いかけていたので本篇は観に行ってません。

公開当時まったく話題にならなかったけど、魔法の国ストームホールドの王役にピーター・オトゥール、永遠の命を手に入れるために星の化身であるイヴェインの心臓をねらう魔女ラミア役にミシェル・ファイファー、トリスタンたちに協力する海賊キャプテン・シェイクスピア役にロバート・デ・ニーロ、ナレーションにはイアン・マッケランなど、豪華キャスト。

最初の若き日のトリスタンの父親(その後「ナルニア国」シリーズのカスピアン王子を演じることになるベン・バーンズ)が村を囲む壁を越えてストームホールドをおとずれるシーンのファンタスティックな感じとか、もしかしたらこれは隠れた名作かも、なんてちょっと期待したりなんかしたのだけれど。

…ムム、しかし。

細かいストーリーを知りたいかたは映画紹介サイトのあらすじでも読んでいただくとして、なんというか、観終わったあとは狐につままれたようだった。


これ原作があるんだってね。

読んだ人の感想によれば、何人かの登場人物が端折られてる以外はストーリー的にはそれほど違いはないそうで。

それならいわせてもらうが、…なんかよーわからん話でした。

最初の方で描かれるトリスタンとヴィクトリアのやりとりなんかは、もうイケてない主人公がクラスや学校一の美人に恋をして、つれない態度をとられても頑張ってモテ男を見返すような、よくあるタイプの「モテね男の逆襲」そのまんまでゲンナリ

キック・アス』と同じじゃん。

たしかに昔話とかおとぎ話って、そういうのけっこうあるけど。

でも監督のマシュー・ヴォーンってほんとは『キック・アス』を自腹で作っちゃったぐらいの金持ちで(父親は貴族)、かみさんはスーパーモデルのリア充なんだから騙されてはいけない。

弱者の味方のふりしてても、魂がこもってないといつか馬脚をあらわすぞ!


観ればわかるけど、これもまた昔ながらの「貴種流離譚」なんだよね。

貧しかったり身分が低かった者が、実は高貴な生まれだった、という類いのお話。

おとぎ話ってのはだいたいそういうもんで、たとえばディズニーアニメ『塔の上のラプンツェル』(感想はこちら)だってそういう話だけど、大事なのはそれをどのように描くか、ってこと。

この『スターダスト』では、魔法の国の描写も人間の青年と星のお姫様の恋物語も完全に描き損ねてると断言してもいい。

王子様やお姫様にあこがれるのは別に人の自由だ。

僕みたいな(幼稚な)人間がスーパーヒーローにあこがれるのと同じで(ロイヤル・ハイネスやセレブは実在するけどスーパーヒーローはいないって?…そりゃそうだが)。

でも今「おとぎ話」を映画にするなら、なぜ人は王子様やお姫様にあこがれるのか、それは何を意味するのだろう?と考えたうえでやんごとなきかたがたを魅力的に描くなり、そういう権威を否定するなりしないと、ただ「主人公は王様の血を受け継いでいたので、最後にあたらしい王様になりました」ってなだけではシラケるじゃないですか。

ラプンツェル』だって、お相手に平民出の元盗人の青年をもってきたことでかろうじてそれをまぬがれていたわけで。

しかもあの王族の奴らって、ピーター・オトゥール演じるストームホールド王をはじめとして、さんざん身内で殺し合ってたでしょ。

その血を引いてる、ってことはけっこう恐ろしい話だと思うんだけど、そういうフリは別にない。


星のお姫様のはずのイヴェインがなんだか妙に所帯じみてたり(クレア・デインズってディカプーとの『ロミオ&ジュリエット』は話題になったけど、『ターミネーター3』のヒロイン役はあまり評判良くなかったし、これもちょっとミスキャストな気がしなくもない)、これまた魔法の国の王族であるはずの王子たちがむさくるしいただのオッサンたちで(マシュー・ヴォーン作品でおなじみジェイソン・フレミングマーク・ストロング)その外見も行動も人間とまったく変わらないとか、観てる最中もとにかく「ん、ん?なんで?」というところだらけ。

空飛ぶ船に乗った海賊キャプテン・シェイクスピアがトリスタンとイヴェインを捕まえたあと、トリスタンがイギリス出身だというだけでいきなり態度が軟化して親切になったり、クライマックスの戦いも、まるでスターウォーズの銀河皇帝みたいになって暴れまわっていた魔女がなんでいきなりイヴェインにやられちゃったのか、その理由がまったくわからない。


いろんな場所をまわったんだろうロケ撮影の映像は美しかったし、魔女の攻撃から身を守る「幸運の花」とか望んだ場所へ一瞬にして移動できる「バビロンのロウソク」などさまざまな魔法のアイテムや、まるで『天空の城ラピュタ』の空中海賊みたいなのが出てきたり、ワクワクする冒険のお膳立ては整ってるのに肝心のお話がぜんぜん面白くないんである。

だって、なんか中学生が思いつきで書いた話みたいなんだもの。

魔女ラミアと王位をねらう王子、主人公の母親を青い小鳥に変えた魔女たちがイヴェインをねらう、ってのを延々とやってるんだけど、マーク・ストロングたち王子一行なんて、ほとんど馬に乗って走ってるだけ。

で、ラストの30分ぐらいになってようやく彼らが鉢合わせして決着がつく。


イヴェインの正体や魔法のルールについてほとんど説明がないのはファンタジー映画だから「そういうもんだ」ということで流すにしても、とにかくストーリーがすべて行き当たりばったりな感じ。

その後、DVDの本篇の前に予告篇が入っていたターセム監督(『ザ・セル』『インモータルズ』)の『The Fall 落下の王国』(感想はこちら)を観たけど、そちらの方がよっぽど“ファンタジー映画”としては上質でした。

落下の王国』(2006) 提供:デヴィッド・フィンチャー スパイク・ジョーンズ 日本公開2008年
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デ・ニーロの女装とかさぁ…笑わせようとしたんだよね?多分。

デ・ニーロさん本人は踊りながら愉しそうだったけど。

これがほんとに原作どおりに映画化したのだとしたら、悪いけど原作の段階でたいした物語ではなかったんじゃないかと思わずにはいられない(原作者は『コララインとボタンの魔女』と同じ人なんだが)。

映画館の大画面で観たらもうちょっと楽しめたのかもしれないけど。


なんかボロクソいってますが、それでもこれはたしかに豪華キャストにもかかわらず話題にもならずに忘れられたのも無理はなかったんじゃないかと思う。

「星の真心」ってのも、たしか「本気で愛した人を守る」みたいなことだったけど、なんかもうご都合主義というか、最後めでたしめでたしで終わればなんだっていいのかよ、みたいな。

イヴェインはいつのまにかトリスタンにメロメロになってるし。

ファンタジーにしてはセンス・オブ・ワンダーが足りないしストーリーがあまりに陳腐、ラヴストーリーにしては男女の描き方が雑すぎるんだよ。

「愛は絶対的」とかいってるけど、真心はいったいこの映画のどこにあるんですか、ヴォーン監督。


それなりに一所懸命この映画のテーマなりなんなりを理解しようと努めたんだけど、途中でどうしてもまじめに物語を追う気がしなくなってきて。

観た映画はぜんぶ感想書くことにしてるから頑張ってここまで書いたけどさ。

この作品の時点で、その後この監督が大化けするなんて誰も想像しなかっただろうなぁ。

まぁ、カップルで観たりすれば「面白かったねぇ」とかいってそれで済む話かもしれない。

こんな映画を独りで観てブツクサ文句いってる方がどーかしてるんだよね、きっと。


※現在、マシュー・ヴォーンは2015年公開予定の『スターウォーズ エピソード7』を監督するのではないか、と噂されている。

しかし、僕は上の感想のようにこのファンタジー映画にはヴォーン作品で唯一ノれなかったため、正直もしそれがほんとうならちょっと不安ではある。

スターウォーズ』というのは、宇宙を舞台にした“異世界ファンタジー”だから。

キック・アス』、そしてこの『スターダスト』のあと観た『レイヤー・ケーキ』(感想はこちら)などからも、ヴォーン監督にはどこかエッジの立った世界観が似合っていて、つまり子ども向けの作品にふさわしいのかどうかおおいにうたがわしいのだ。

ディズニーに売却された『SW』は、ちょうど『ジョン・カーター』(感想はこちら)がそうだったようにさらに子どもの観客を意識した作りになるだろうし、ならばもっとファミリーピクチャーが得意な監督に任せたほうが確実ではないだろうか。


もちろん、ほんとうにマシュー・ヴォーンが『スターウォーズ』の最新作を手がけるのかどうかはまだわからないし、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』の成功もあるから(ただ、あの作品も往年の007映画を意識した作りだったように、SF映画というよりはスパイ映画の雰囲気が濃厚だったのだが)もしも実現したら、あるいはSWの世界に新風を巻き起こしてくれるかもしれませんが。


追記:
その後、『スターウォーズ エピソードVII』の監督はJ・J・エイブラムスに決定。


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