映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『レイヤー・ケーキ』


マシュー・ヴォーン監督、ダニエル・クレイグ主演のクライム・ムーヴィー『レイヤー・ケーキ』。2004年作品。日本公開2006年。イギリス映画。

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麻薬ディーラーのXXXX(ダニエル・クレイグ)は、ボスのジミーから彼の友人でおなじく裏社会のボスであるエディの失踪した娘を捜し出すことと、大量のエクスタシーを売りさばくという2つの仕事を命じられる。裏稼業からの引退を考えているXXXXにとっては簡単な仕事に思えたが…。


レイヤー・ケーキ”とは、ボスから下っ端までの裏社会の階層をケーキにたとえたもの。

主人公XXXX役のダニエル・クレイグはこの作品のあとにジェームズ・ボンド役に抜擢されたんだけど(この映画が日本で公開されたのもおそらく007効果でしょう)、ボンド映画を撮りたかったマシュー・ヴォーンがその前に彼を主役にこういう映画を撮ってるのも面白い。

XXXXのボス、ジミーの右腕ジーンを演じているのは「スタートレック ネクスト・ジェネレーション」やスピンオフ作品のオブライエン役でおなじみのコルム・ミーニイ

ほかにもXXXXの仲間のひとりに見覚えのある顔がいるなぁと思ったけどわからず、エンドクレジットで確認したらトム・ハーディだった。

ここんとこクリストファー・ノーランの作品でどんどんマッチョになってるから(バットマンの新作では敵役ベインを演じていた)、この映画の頃の彼はぜんぜん別人みたいに細い顔のイケメン。

また、後半登場する裏社会のボス、エディ役にはダンブルドア…じゃなくてマイケル・ガンボン

この人もいろんな映画でやたらと見るが、悪そうな役が似合うなぁ。

冷静そうに見えて、キレると昔の仕事仲間でも半殺しにしてしまうモーティを演じてるジョージ・ハリスは、『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(感想はこちら)のカタンガ船長演ってた人だなぁ、なんて思ったり。この人もときどき映画で見る。

出演者たちのなかには『キック・アス』(感想はこちら)でヒット・ガールに惨殺されてたギャング役の人たちもちらほら。

しっかりと「マシュー・ヴォーン組」が出来上がってるなぁ。

XXXXといい仲になる美女タミー役のシエナ・ミラーは、マシュー・ヴォーンのその次の作品『スターダスト』(感想はこちら)にもやはり美人役(しかしまたしてもメインキャラではない、お飾り的な綺麗どころの役)で出ていた。

そしてこれまたおなじみのジェイソン・フレミング

もしかしたらマシュー・ヴォーン作品には皆勤賞なんじゃないかとも思うんだけど、しかしだいたいいつもぶざまに殺される役で、この人が一番カッコ良かったのは『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』で悪魔みたいな特殊メイクで素顔がわかんないキャラだったりした。

Sだなぁ、ヴォーン監督。


たしかに出演者の雰囲気やストーリー展開などは『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』などガイ・リッチー作品を思わせるけど(マシュー・ヴォーンはガイ・リッチー作品のプロデューサーで、初監督作品であるこの映画もガイ・リッチーから引き継いだもの)、軽い悪ノリとブラックな笑いの要素もあるガイ・リッチーの映画に比べると(『シャーロック・ホームズ』にはそれは感じられなかったが)、この『レイヤー・ケーキ』はもうちょっと生真面目な感じ。

ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(1999) 出演:ジェイソン・ステイサム
当時はこの“薄毛の人”があんなアクションスターになるとは思いもしませんでした。
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人の死を滑稽に描く部分がガイ・リッチー作品に近いのは、むしろ『キック・アス』の方かもしれない。

僕は『レイヤー・ケーキ』のこの雰囲気、けっこう好きですけどね。


ギャングとか裏社会の人間たちが犯罪を企てて実行に移すが途中であれこれ問題が発生して云々…といった類いの映画はある時期からあまり観なくなった。

なんでかといったら、ハッキリいって観終わったあとに何も残らないから。

フーン、…だから?みたいな。

どうも、ジャンルを問わず自分に興味があるテーマだとか要素なりがないと、映画のなかで描かれる犯罪者たちのいがみ合いとかだまし合いとかにつき合ってるのがシンドくなってきてしまったのだ。

でもたまにこういうタイプの映画を観ると、俳優さんたちはイイ顔してるし、ハリウッド産のVFX満載で荒唐無稽なドンパチ映画とは違った役者たちの芝居どころが随所にあって、退屈することなく最後まで観られました。


ようするに、主人公は人生の甘い味を楽しんでこれからは悠々自適に暮そうとするが、そうは問屋が卸さない…という話。

最初、マシュー・ヴォーンは犯罪映画からファンタジー、そしてアメコミヒーロー物と守備範囲が広いなぁと思ってたけど、『スターダスト』(感想はこちら)を観たときに、ファンタジーに関してはちょっと向いてないんじゃないかと感じた。

この人、やっぱりどこかニヒリスティックなところがあるんではないか。


だからファンタジー撮るなら正統派ではなくて、もっとシニカルな内容の方が、あるいは正統派と見せかけておいて実はかなりグロ入ってました、みたいな、ちょうど『キック・アス』でやったようなアプローチをとったらいかがかと。

レイヤー・ケーキ』は、映画としては今まで作られたヴォーン作品のなかでは一番手堅い作りなんじゃないかと思う。

『スターダスト』はケナしてしまったけど、これはよかった。

主人公が最後に悪の親玉をぶっ殺しておしまい!というハリウッドのアクション映画の常道みたいな展開にならないのがいい。

そもそもこれは“アクション映画”じゃないし。

犯罪組織の人間は若い衆のことなど考えていない。それどころか言葉巧みに利用して…という北野武が描くところの『アウトレイジ』な展開。

けっきょくだからなんなんだ、とも思ってしまうが。

北野武の映画もそうだけど、これをギャングや犯罪者などの特殊な人種の話ではなく一般の人間をカリカチュアした姿だと思えば、普遍化できるかもしれない。


ところで、マシュー・ヴォーンの映画に一貫してる特徴としては、手持ち風のグラグラゆれるキャメラワークやブツ切れの編集といった、いわゆる“トニー・スコット調”の撮り方をしていないこと(演出効果のために『キック・アス』の一場面でやっているが)があげられる。

まぁそんな映画はほかにもいっぱいあるけど、とにかく『プライベート・ライアン』以降ここ10年ぐらい、飽きもせずに使われつづけてるこの手法には僕はちょっと飽き飽きしてるんで、そういった流行りもの(と作り手が勝手に思い込んでるだけ)に迎合するんではなくて、しっかりと画を作って見せてることに頼もしさを感じる。


さて、マシュー・ヴォーンは現在『スターウォーズ』の最新作を撮るのでは?といわれてるけど、そのためなのかどうか知らないが個人的には彼が『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』の続篇を降りてしまったのがとても残念。せっかくあたらしいヒーロー映画のかたちを作り上げたのにもったいない。

キック・アス2』にはプロデューサーとしてかかわってるみたいだけど、マシュー・ヴォーンにはぜひまた従来の型からはずれた犯罪映画を撮ってもらいたいなぁ。


追記:
その後、『スターウォーズ エピソードVII』の監督はJ・J・エイブラムスに決定。


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