映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

※2019年の“はてなダイアリー”終了に伴い、2018年9月にブログを移行しました。

『イントゥ・ザ・ストーム』


スティーヴン・クエイル監督、リチャード・アーミティッジサラ・ウェイン・キャリーズマット・ウォルシュマックス・ディーコンネイサン・クレスアリシア・デブナム=ケアリーアーレン・エスカーペタジェレミー・サンプタースコット・ローレンス出演の『イントゥ・ザ・ストーム』。2014年作品。

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ドキュメンタリー制作者のピートと気象学者のアリソンら竜巻ハンターの一行は、撮影のためにアメリカ中西部の町シルバートンに向かう。ゲイリーが教頭として勤務するシルバートンの高校では卒業式が行われていたが、アリソンの予想通り巨大な竜巻が発生して式は中断、生徒やその家族たちは避難を余儀なくされる。ゲイリーの長男で父親と同じ高校に通うドニーは弟のトレイに式のヴィデオ撮影を任せて、学校の課題に取り組むケイトリンとともに廃工場を訪れていた。しかし巨大竜巻の襲来を知らない二人はその直撃を受け、建物の中に閉じ込められてしまう。


昨年の劇場公開時には観ていなくて、今回初めてDVDで鑑賞。

僕が災害や大事故などを描いたいわゆる“ディザスター・ムーヴィー”を観るのは、多分ローランド・エメリッヒ監督による『2012』(2009)以来。

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『2012』はド派手に破壊される町や惑星直列にマヤの予言、超巨大な方舟などといった雑多なものが矢継ぎ早に出てくる“エメリッヒ・クオリティ”な大味映画で、そこそこ楽しめたけど全篇でVFXを駆使した映像にはちょっと食傷もした。

そして3.11を経験した今では人が災害で死んだり町が壊される映像を無邪気に面白がれるのか?という疑問も湧いてきて、そういうジャンルの映画を積極的に観たいという気持ちもだいぶ失せていた。

『イントゥ・ザ・ストーム』はTVで予告篇を頻繁にやってたけど、ちょうどそのちょっと前に映画館で『GODZILLA ゴジラ』(感想はこちら)を観たこともあって、ディザスター・ムーヴィーはしばらくいいなぁ、と思ったんでパスしてしまった。

でも観た人たちには評判がいいのでちょっと後悔もしてて。

で、いかにも大きなスクリーンで観てこそ意味がありそうな作品なのに、あらためてDVDで小さな画面で観る必要があるのか、と迷ったんだけど、何も考えなくていい、ただ映像の迫力だけを楽しめばいい映画が観たくて結局借りてきたのでした。


POVの手法を取り入れているところは『クローバーフィールド』以降の映画、という感じだし、竜巻を追うチームというとこれもかつて映画館で観た『ツイスター』を思いだす。

ヤン・デ・ボン、今何やってるんだろう。

あの映画も竜巻の中を牛が飛んでいったり、ライヴァルのツイスターハンターの車が巻き込まれて爆発してたり、やはりエメリッヒ系(なんだそりゃ^_^;)のお祭り映画だったと記憶してます。

で、今回のもそういうのかな、と思っていたら、エンタメとしての面白さは確保しつつも思っていたよりもシリアス風味でバカ映画っぽさはそんなになかった。

そこがわりと好感持てましたね。

たとえば雲というのは僕たちは普段から見慣れているけれど、それが渦を巻いて次第に大きくなっていき、建物や乗り物を吹っ飛ばしたり粉々にしたりする迫力。


これまで観てきた同種の映画の中ではかなりの臨場感がある。

科学的に正確かどうか、というのはわからないけど、荒唐無稽に陥らずに極力映像的な「リアル」を追及しようとしているのが窺えました。

滅茶苦茶になった町や家々の残骸が痛々しい。


最近のこの手の映画に共通しているのは、必要以上に残酷な場面は入れない、ということ。

まぁ年齢制限されちゃったら困るからだろうけど、だから現実の災害現場ではありうる目を覆うような惨状、具体的にいえば人体が破損するような描写はない。

人が炎の竜巻に飲み込まれて燃える場面はあるけど、ロングショットだしCGなのがわかるから嫌な後味がのちのちまで残ることもない。

まだCGなんて存在していなかった1970年代ぐらいの“ショック映画”の方がよっぽど直接的に人間の死を描いていて、嫌ァな気分にさせられたものです。

あれはあれで惹かれるものがあった、と認めざるを得ませんが。

結局、ディザスター・ムーヴィーというのは災害の恐ろしさを訴える目的で作られているのではなくて、所詮は町が破壊されたり人が死ぬ様を安全な観客席から眺めて楽しむ見世物なわけで、作り物だとわかってるからこそ、スゲェ!とか怖ェ!とか言って娯楽として消費できる軽薄で無責任極まりないものなんですよね。

「映画」ってそもそも出自がそういう怖いもの観たさで入る見世物小屋的な存在だったので、僕はそういう種類の作品を否定はしないですが、でもそうはいっても暗い快楽に耽っている後ろめたさは感じていたいな、と。

以下、ネタバレを含みます。


この『イントゥ〜』にはYouTubeに自分たちの映像を投稿して大儲けしようとするバカ2人組が出てくるんだけど、その罪のない無邪気さはディザスター・ムーヴィーやホラー映画を観て喜んでる類いの人間を思わせる。


竜巻に飲まれたはずの彼らが最後に無事だった、というオチに不満を漏らす人もいるみたいだけど、僕はこのジャンルへの愛みたいなものとして受け取りましたけどね。

それにあいつらは別に誰かを犠牲にしたりしてないし。自分たちでバカやって勝手に竜巻に飲まれるだけで。

愉快な奴らではないですか(^o^)

昔のショック映画ってもっと人間の汚さや醜い欲望を描いていて、だから見世物小屋的だったんだな、って思います。

今のディザスター・ムーヴィーはジェットコースターのような“アトラクション”なんだよね。

この『イントゥ〜』でもみんなが互いに助け合う。自分だけが助かろうとして輪を乱して結果的に大惨事を招くようなクズは出てこない。

最近の映画にだって『ミスト』みたいな気が滅入りそうな作品もあるけれど、個人的には人間の醜さをことさら強調したような映画を今更観たくもないので、あくまでも希望を残し、劇中で亡くなった人のことも忘れてしまうことなく主人公たちの災害からの生還を描いた本作品は僕はわりと好きです。

災害がほぼ竜巻だけに限られているのが少々物足りないっちゃ物足りなかったけど。

いくらなんでもあんな大変な時にトレイもヴィデオ廻し過ぎだろ、と思ったし。誰か止めるでしょ、普通。この不自然過ぎるほどひたすらカメラを廻し続けるのは『クローバーフィールド』からかな。


ストーリー自体は単純だし、僕はてっきりちょっとオタクっぽいヴィデオ小僧のドニーが主人公なのかと思ってたら、彼は仲良くなった女の子と建物に閉じ込められちゃってほとんど活躍しないし、観てくうちにこの映画の主人公はお父さんだったってのが判明して若干肩透かしを食らったんですが。

まぁ、家族のもとから去った母親を恨みキスを拒んだその直後に彼女を事故で失って、父親からはほっとかれてると感じていた長男が親子の絆を取り戻すという話だから、息子の命を守るために父親が奮闘するというのは正しい展開なんでしょうけど。ちょっとスピルバーグの『宇宙戦争』も入ってるかな。

炎を吸い込んで燃え上がる竜巻の前で呆然と立ち尽くしたままヴィデオを廻していて死んでしまうジェイコブには同情よりも「アホか!」と思ってしまったし、笑いながら竜巻に巻き込まれていった先ほどのバカ2人組がそのあとピンピンしてた、というのはあまりに非現実的でふざけ過ぎじゃないか、とは思う。


劇中で誰が死ぬのかわからない、というのはホラー映画に通じるものがありますが。

こんなことをいってはなんだけど、もっと犠牲者の描写があってもよかったのでは。

必死で逃げても助からない人もいる。善意が仇になることもある。災害や事故には因果応報など関係ない、あまりに理不尽な非情さがある。

だからこそ、生き残った人々にも深く癒えがたい傷を残す。

エンターテインメントという形の中で、そういう現実の世界と大いに接点がある題材をどのようなバランスで描くのか、というのは結構微妙なところでしょうね。

エメリッヒの映画がそうなように、VFXに力を入れ過ぎると映像が浮いてしまって人間ドラマがおざなりになる。逆にそちらに力を入れるとエンタメからはみ出してしまう。

でもかつての『ポセイドン・アドベンチャー』のように特撮も用いながら人間ドラマとしても見ごたえのある作品というのはあるし、この『イントゥ〜』でもピートが払った犠牲は『ポセイドン〜』を連想させもして、いいところいってたんではないかと思います。


ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『クローバーフィールド』『クロニクル』(感想はこちら)のような完全なPOV作品ではなくて時々カメラマンのルーカス(とドニーの弟のトレイ)が撮っている映像が映画に挟み込まれている、という体裁をとっているので、しばしばルーカスが急にいなくなったように感じられるのが可笑しかった。

で、たまに見覚えのないおっさんが映ってるので、「誰だコイツ」と思ったら彼だったりw

主演のリチャード・アーミティッジピーター・ジャクソン監督の「ホビット」3部作で主要キャラの1人を演じているようだけど、僕は「ホビット」シリーズは1本も観ていないのでまったく馴染みのない俳優さんで、ちょっとヒュー・ジャックマンを細くしたような人だなぁ、という印象(ジェラルド・バトラーっぽくもある)。


格好いいパパでしたけどね。息子たちよりも背が高いし。

ヘンに長過ぎることなく90分ほどにまとめてあるので見やすかった。自然の脅威を体感させるアトラクションと、ベタながら生命の危機に直面した人々のドラマの理想的な融合だったんじゃないでしょうか。


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