映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『ブルーノ』


※以下は、2010年に書いた感想です。


ラリー・チャールズ監督、サシャ・バロン・コーエン主演『ブルーノ』。
2009年作品。日本公開2010年。R15+

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同じ監督・主演コンビによる前作『ボラット』は以前ホモダチ、いや友だちの家でDVDで観て爆笑しました。

ボラット』では、口ヒゲの“なんちゃってカザフスタン人”に扮したコーエンがアメリカの人種や宗教、経済格差、性差問題を愚弄しまくっていく。

興味ある人は、コーエンがオッサンと二人で全裸でくんずほぐれつしてる強烈な映像がYouTubeにもあがってるから、それ観て笑えればいいけど受けつけなければ今回の『ブルーノ』もやめておいた方がいいでしょう。

別に観なくてもビタ一文損しないし。

ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』(2006)
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ボラット』では無邪気な顔してユダヤ人について次々と人種差別発言を繰り返すキャラを演じてたけど、当人はユダヤ系のイギリス人でケンブリッジ大卒のインテリだったりする。


ボラット』観た時は同じイギリスのお笑い集団モンティ・パイソンのメンバー、エリック・アイドルに似てるなぁ、と思ったんだけど(声も喋り方も)、ヒゲ剃るとベン・スティラーアダム・サンドラーに似てんだな。


ブルーノのキャラクターはスティラーの『ズーランダー』っぽいし。

この『ブルーノ』では、セレブになるためにハリウッドにやってきたオーストリア出身のゲイ、ブルーノをドキュメンタリーのキャメラが追う、という体裁をとっている。

以下、ネタバレあり。


さる超有名ハリウッド俳優をマジギレさせたり(「ファッ○・オフ!!」と怒鳴られる)、どう考えてもアウェイな場所にわざわざ出向いていって現地の人々にちょっかい出すという、よーするにかつて「電波少年」で松村邦洋がやってたことと同じなんだけど、サシャ・バロン・コーエンは役者なので日本のヴァラエティ番組のようにタレントやお笑い芸人が素を見せるのとは違って、何があろうとあくまでも“役柄”のままで通す。

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とんねるずの『矢島美容室*1もこれぐらいやってくれれば観てみようという気にもなったんだけど(アレは一体誰が観に行ったんですか^_^;)。

セレブの発展途上国からの養子縁組を茶化したり差別問題を取り上げたりもするけど、とにかく全篇に渡ってオカマさんの下半身ネタがてんこ盛り。

疑似フェ○場面では吐き気がしました(長ぇよっ)。

この映画で繰り広げられる「バカ」に意味を求めようとすればできないことはないだろうけど、でもほんとはバカに意味なんかない。

バカは世界を救わない。

ブルーノが歌う「ユダヤ教徒イスラム教徒もケンカしないで、撃つならキリスト教徒を~♪」とか「韓国も北朝鮮も仲良くしよう、同じ中国人なんだから~♪」(ヲイヲイッ)って歌なんかも最後まで人をナメてて素晴らしい。

スワッピング・パーティで叶姉妹のお姉さんみたいなゴツい女の人にムチでシバかれる場面なんか、ちょっとうらやましかったりして(嘘です!)。

やっぱイギリス人ってヘンタイが多いのかな(偏見)。

付き人のルッツもナイス・キャラ。

アメリカのド田舎でホモ嫌いのレッドネックに囲まれながらのムダに命を張ったパフォーマンスには感動すらおぼえる。

ゲイもホモ嫌いもみんなまとめてバカにする姿勢が素晴らしい。

ただ、『ボラット』に比べると劇映画的な要素が増えたために、どこまでがガチでどこからが仕込みなのかわからないので(素人相手にキャメラを何台も持ち込めたり、スムーズ過ぎるカット割りなど)、たとえばアルカイダの下部組織の幹部の前でオサマ・ビン・ラディンをコケにしてみせたり、アラブとイスラエルの代表者を握手させる偉業(?)にも素直に驚くことができない。

そういえば、雑誌「映画秘宝」でエガちゃんが「オレの方がもっと危険な目に遭ってる!」と言ってた。

今後もこの“モキュメンタリー”=フェイク・ドキュメンタリーの手法を使い続けるのなら、サシャ・バロン・コーエンが演じる“役柄”と彼が今までけっして見せなかった“素”の部分が映像の中で交錯し、彼のアイデンティティが揺れ動いた時、さらなる映画的な面白さが生まれるんじゃないだろうか。

お薦めはしません。

物好きな人だけが観ればいいと思う。

ちなみに劇中、ブルーノが自分の“ジュニア”(もはやジュニアなどと呼べないぐらいワガママなサイズ)をモロ出しにしてブンブンぶん回し、最後にその“ジュニア”が一言「ブルーノ!」と叫ぶという、スティーヴ・オーデカークの「親指シリーズ」をさらに頭悪くしたよーな、観客が大笑いするかドン引きするか見事に二分されるであろう場面があるんだけど、映画館ではスクリーンに大写しになったサシャ・バロン・コーエンの“ティムティム”におもいっきりボカシ、というかフィルムを引っ掻いたシネカリみたいなモジャモジャの目隠しがしてあったので、何がどうなってんだかよくわかんなかった。

おかげで客席から笑いはおこらず。

こういう映画を劇場で公開できただけでも快挙、という考え方もあるけど、やはり残念。

この国は一体いつまで文化後進国のままでいつづけるんでしょうね。


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*1:日本で同じ時期に公開されていた。