※以下は、2011年に書いた感想です。
『CUBE』のヴィンチェンゾ・ナタリ監督、サラ・ポーリー、エイドリアン・ブロディ、デルフィーヌ・シャネアック出演の『スプライス』。2009年作品。2011年日本公開。R15+。
遺伝子操作によって禁断の新生命体を作り出した科学者夫婦の物語。
ナタリ監督の『カンパニー・マン』は観たけど、実は有名な『CUBE』は未見だったりする。
もともとホラー系の作品が特別好きなわけではなくて映画館に観に行くことはめったにないんだけれど、予告篇観りゃすぐ気づくがこれはそういう系統の映画。
でもなんというか、出てくる“クリーチャー”の造形に妙にソソられたんである。
うわぁ、なんかキモカワイイ…。
ちょっとマゾヒスティックな気持ちになって、映画館で生理的な嫌悪感に苛まれてみるのも悪くないんではないか、と思い立って。
以下、ネタバレあり。
観る前はなんとなく「ザ・フライ」シリーズのようなグログロ描写のオンパレードを想像してたんだけど、視覚的な嫌悪感よりも別の気持ち悪さに襲われる映画でした。
あるいはこれは子どもをもった夫婦が右往左往する話のカリカチュア、ととれなくもない。
何よりもまずこの科学者夫婦のぶっ壊れ方。
科学者としては優秀だが驚くほど主体性がない夫、これまた夫以上に科学者としては優秀だが性格に問題があり過ぎる妻。
困ったことに劇中この二人の言動がコロコロ変わって、自分たちが作り出した新種の生命体を守ろうとしたり殺そうとしたりと著しく一貫性に欠けるので、「実験体」として彼らに育てられるこの生命体が不憫でならない。
この科学者夫婦、一見まともそうにも見えるんだけど、ストーリーが進むにつれてそのチャランポランぶりが加速していく。
こんな身勝手で不安定な両親に育てられたら子どもは混乱するよ。
まるで毛を剃ったウサギとニワトリが合体したような身体の新種の生命体“ドレン”が駆け回るシーンでは、ジェームズ・キャメロン監督の『エイリアン2』でエイリアンの幼体が逃げ出す場面を思い出した。
でも見た目がほんとに不気味な生き物然とした姿でいるのはごく短期間で、あっという間に成長するこのドレン、とにかくその顔の造作がなんともンゲゲな感じ(子どもの時なんか“リアル版ポニョ”みたいだ)で、目と目の絶妙な離れ具合など、あぁ、人間の顔ってちょっと手を加えるとこんなに気持ち悪くなるんだ、と思わせられる。
こちらはドレンを演じたデルフィーヌ・シャネアック。ちょっとキャメロン・ディアス似の美人さん。
人間に似た上半身と逆関節の足が魔物っぽさを漂わせているし、おそらく意図的にそうデザインされている。
で、気持ち悪いんだけどしっかりエロティックな要素が入ってるところが曲者。
何しろ近親相○に獣○、フリークス趣味と、てんこ盛りなんである。
まぁなかなかにしておぞましい展開が待っている。
それにしても、この手の映画に出てくる男ってどいつもこいつもなんでこう頭が悪いんでしょうか。
エイドリアン・ブロディが演じる夫なんて、まるで『スピーシーズ』でナターシャ・ヘンストリッジ相手に「むひょ〜!」となってたアホどもと同じである。
『戦場のピアニスト』ではアカデミー賞も獲ってるのに、何やってんのこの人(;^_^A
なんでお前らは何かといえばすぐにズボンを下ろすんだ^_^;相手がエイリアンだろうがモンスターだろうが、とりあえず外見が女っぽかったら見境なしって、どんだけ精子脳なんだよ。
『スピーシーズ 種の起源』(1995) 監督:ロジャー・ドナルドソン 出演:ベン・キングズレー マイケル・マドセン アルフレッド・モリナ フォレスト・ウィテカー ミシェル・ウィリアムズ
www.youtube.com
夫がわが子のようなドレンと“♂♀”してしまうシーンには軽い吐き気をもよおしてしまった。
で、その現場をおもいっきりカミさんに見られて半ケツのまま追っかける、って、なんというグロテスク喜劇。
まぁ、新種の生命体の性別がメスからオスに変異することが判明した時点で、ラストはだいたい予想できちゃったんだけど。
『ドーン・オブ・ザ・デッド』でゾンビと追っかけっこしてたサラ・ポーリーが、ここでは倫理観がどっかへいってしまった女性科学者を好演。
この人、顔や体型がどんどんジュリアン・ムーア化してる気がするんですが。
実はこの映画の中ですべての原因を作ったのは彼女だったわけで、あれほどの犠牲を払ってまで手に入れたかったものって一体なんだったんだろうか。
科学者としての栄光?
その答えは夫の口から告げられている。