映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

※2019年の“はてなダイアリー”終了に伴い、2018年9月にブログを移行しました。

『ヒーローショー』


※以下は、2010年に書いた感想です。


井筒和幸監督、お笑いコンビ・ジャルジャル後藤淳平福徳秀介)主演『ヒーローショー』。2010年作品。R15+

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お笑い芸人を目指す主人公が、知人のいざこざに巻き込まれてどんどん暴力的な世界に足を踏み入れていくことに。

以下、ネタバレ少々。


井筒和幸監督の『ガキ帝国』(1981)は昔ヴィデオで観たけど、なんとゆーか、ずいぶん乱暴な作りの映画だなぁ、と思った(何しろスタッフやキャストのクレジットがない)。

でもその頃ちょうどいろんなタイプの映画を観まくってた時期だったんで新鮮でした。

主演の一人、故・趙方豪NHKドラマ「たけしくん、ハイ!」で主人公たけしの真面目な長兄を演じてるのが印象に残ってたんで、『ガキ帝国』ではまったく正反対の大阪弁のやんちゃな役で意外だった(矢崎仁司監督『三月のライオン』も今はなき扇町ミュージアムスクエアまで観に行ったなぁ)。

ガキ帝国』(1980) 出演:島田紳助 松本竜助 升毅 北野誠 上岡龍太郎


ナインティナイン主演の『岸和田少年愚連隊』が公開されると舞台挨拶観に行きました。

岸和田少年愚連隊』(1996) 出演:矢部浩之 岡村隆史 大河内奈々子 木下ほうか
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司会のお姉さんの「お二人は実際にも映画で演じた役と同じぐらいやんちゃだったんですか?」という質問に矢部浩之があきれながら「そんなわけないでしょ。あんなことしてたら死にますって」と答えてた。

その後、『のど自慢』はまぁまぁ面白かったんだけど、竹中直人が歌いだそうとした瞬間「カ〜ン」と鐘が鳴る予告篇の出来が良過ぎたせいもあってか満足できず、「ウェルメイド」といえばそうなのかもしれないけど、なんかパンチが効いてないなー、と。

やがて井筒監督が毎週TVで「映画はエロティシズムなんだよ!」と吼えながらいろんな映画を斬り始めてそれはそれで愉しく視聴してたんだけど、自分の新作について「他の映画なんかどーでもいいですから『ゲロッパ!』観て下さい」「韓国で上映してみんな笑って泣いてた」といった発言をしてたので、どんなものかと劇場へ行ってみたけどクスリともホロリともしなかったんで「なんじゃあ、こりゃあ!」と頭にきた。

ゲロッパ!』(2003) 出演:西田敏行 常盤貴子 山本太郎 岸部一徳 桐谷健太


しかも、それをブチギレ・モードで友人たちに語ったら「そんなに怒るぐらいつまんない、ってどんな映画だろう」ってんで何人か観たそうで、その感想が「別にそんなつまらなくはなかったけど」「普通に面白かった」というものでさらに怒り倍増。

井筒監督はヤンキー映画だけ撮れ!と思ってたら『パッチギ!』公開。

パッチギ!』(2005) 出演:塩谷瞬 高岡蒼佑 沢尻エリカ
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予想通りというか、やっぱり面白かったのであった。

まだ“エリカ様”になる前のあの人も初々しかったし。

そんなわけで、井筒監督はヤンキー映画以外も撮ってるけど(『みゆき』とか『さすらいのトラブルバスター』とか)、「井筒和幸のヤンキー映画にハズレなし。その他の映画は…」という僕の評価は今も変わっていない。


さて前作『パッチギ!LOVE & PEACE』から3年。


…結論からいうと、まぁなんとも胸クソ悪い映画でした。

岸和田少年愚連隊』の不死身のヤンキー軍団のお笑い活劇も『パッチギ!』の「イムジン河」や「あの素晴らしい愛をもう一度」の感動もここにはない。

主要な登場人物のほとんどに人として魅力を感じないし愛着も湧かないため、映画を観ていてそいつらが死のうがどうなろうが正直どうでもよくなってくる。


もちろんこれはハッキリ作り手が意識してそう描いてるんでしょう。

てゆーか、監督自身がそう語ってるし。

今まで暴力に爽快感を込めてきた井筒監督が今回はそれを完全に封印しているのは新しい挑戦だと思った。

メチャクチャだけど笑えてどこか憎めないところがあったこれまでの井筒作品のツッパリ兄ちゃんたちとはあきらかに違う、デフォルメを極力排したリアリズムの世界。

予告篇ではまたいつものような「爽やかヤンキー青春物」みたいな雰囲気に見せてるけど、騙されないよーに。

『ヒーローショー』というタイトルから連想する、『のど自慢』みたいなユーモラスな要素は微塵もないですから。

ジャルジャルのコントはけっこう好きなので、舞台やTVでの彼らの笑いが映画ではまったくといっていいほど生かされていないのはかなりもったいない気がするんですが。

あと「迫力あるヴァイオレンス・シーン」を期待しても、そんなものはありません。

ヒーロー物を愛する人間だったらまず絶対に見たくない世界が、冒頭からいきなり始まる。


しかも、かつて東映スーパー戦隊物「デカレンジャー」で“デカブルー”を演じた林剛史は自身の出自を完全に否定するような役回り。

元・正義のヒーローがやってはいかん仕打ちだろう、あれは。
そんなに“レッド”が嫌いだったのか?^_^;

井筒和幸の「ヒーロー物」に対する、もしくは荒唐無稽な絵空事への強烈な悪意がうかがえた。

そういう部分でも好きかどうかというとハッキリ言って好きではないんだけど、でも見ごたえはありましたよ。

映画初主演のジャルジャルの二人は『ガキ帝国』の紳助竜介に比べると演技はずいぶんと達者だし。

友人たちからなんであんなに頼りにされてるのかよくわからない、何か考えていそうで別に何も考えてない元自衛官・勇気を演じる後藤淳平が意外と好演。

地獄巡りをしながら最初から最後までず~っとしょうもない嘘をつき続けるお笑い芸人志望のユウキ役の福徳秀介は、一所懸命演じてる顔がだんだん“ザブングル”の「くやしいです!」の人に見えてきたけど。

多分これまでの井筒さんならどこかでウエットになったと思うんだけど、後藤とバツイチ子持ちの彼女ちすんのドラマでもベタな泣かせには持っていかずに結局突き放している。


この映画観て「暴力はカッコイイ」と思う奴はいないだろうな。

だいたいきっかけはバイト先で連れがカノジョを寝取られた、というまことにどーでもいい理由。それも主人公は直接関係がない。そんなくだらないことで人が死ぬ。

観てるうちにムカムカしてくるのも当然で、そこには青春とか友情とかヒロイックな行為などビタ一文ない。愚かさだけである。

エンドロールに流れるピンクレディーの歌が実に虚しい。

ずいぶんとシニカルな描き方。

とんでもない目に遭っていながら、一見何事もなかったかのように日常に帰っていく主人公の姿が、北野武監督の『3-4X10月』を思わせた。


誰にでもお薦めできる映画じゃないし、実際映画館でも終わったあとは微妙な空気でした。ジャルジャル目当てだったらしい女の子たちが「…どうだった~?」と戸惑い気味に笑い合っていた。

まぁ引くよな、あのラストでは。

それでも「邦画でだってこれぐらい重い描写が出来るんだ」っていう井筒監督の主張が伝わってきました。

同じく暴力を描いてたヤン・イクチュン監督の『息もできない』(感想はこちら)のような感動にまで至らないのは残念だけど。

それにしても、みなさんチャラ男やチンピラ演じるとほんと巧いですねσ(^_^;)


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