「爆音映画祭」でマシュー・ヴォーン監督、アーロン・ジョンソン主演の『キック・アス』を観てきました。2010年作品。R15+。
ちょうど来年初めにマシュー・ヴォーン監督の最新作『キングスマン:ゴールデン・サークル』の公開も控えてるし。
「爆音映画祭」って名前は知ってたけど、行くのは初めて。
僕は大きい音って苦手で、耳が痛くなっちゃうので「爆音」と聞いて怖れをなして参加したことがなかったんです。
でも『キック・アス』は大好きな映画だから(以前書いた感想はこちら)、今回上映ラインナップに入っていたのでどうしても観たくて。
きっと他のお客さんたちも『キック・アス』のファンなんだろうけど、カップルや一人で観にきている女性、そして僕みたいなお一人様のおじさんの姿が(15歳未満は観られないのであまり若い子たちはいなかった)。
いつもよりも多少後ろめの席に座ったんだけど、そしたら恐れていたほど音は大きくなくて、通常の映画の音声との違いもわかんないぐらいでした。若干スピーカーがビリビリと振動してたような気がしたんだけど。
なので音については正直そのありがたみがわかんなかったんですが、ともかくお目当ての映画が再び映画館のスクリーンで観られて嬉しかった。
『キック・アス』は2011年の劇場公開時に観ています。これまで映画館で観た映画の中で一番回数が多くて、その後、去年の11月に公開された『この世界の片隅に』*1を現在までに同じ回数観ましたが、今回6年ぶりに『キック・アス』がさらに1回分更新。*2
前回観たのは単館系の小さな劇場で今はもうないんですが、おそらくフィルムでの上映だったので、今回は初めてデジタル上映での鑑賞。
僕にはもはやフィルムの時との画質の違いはまったくわからないんだけど、映画の上映環境の変化などからも、あぁあれから結構な月日が経ったんだなぁ、ってしみじみ思いました。
デジタルになったことで、フィルムの頃よりも劇場での再上映もしやすくなったんでしょう。こうやって定期的にお気に入りの映画を映画館で観られたら最高(^o^)
撮影当時12歳だった“ヒット・ガール”役のクロエ・グレース・モレッツは今ではもう20歳。
成長してからの最近のクロエちゃんも見てるから、あらためて『キック・アス』の時の彼女の外見の幼さ、身体の小ささに驚く。
あんな子によく「お○○こ野郎」とか言わせたよなぁ^_^; 3年後の2014年に公開された続篇の時にはもう大きくなってたから、そういう危なさは感じなかったもんね。
暴力シーンも、これからはこんな小さな子役があんな残酷な暴力シーンを演じるようになるのか、と思ったけど、あれから『キック・アス』みたいな作品が公開されてないところを見ると、ほんとに特殊な映画だったことがよくわかりますね。
演じた本人ももちろん凄いけど、あれを演じることにオッケーを出した親御さんも凄いよな。
映画の公開後、クロエはインタヴューで彼女が劇中で使っているFワードについては「ただの台詞」、暴力シーンについては「小さな女の子が大人の男の人をあんなふうに何人も殺すことなんて現実には不可能だから、あれはファンタジー」ときわめて冷静に答えている。
『キック・アス』は世界中でヒットしたからクロエちゃんも人気者になったけど、よくありがちなその後有名子役が身を持ち崩して…という問題は起こしていなくて主演映画も順調に公開され続けているんで、家族やまわりの大人たちのサポートもしっかりしているんでしょう。彼女自身もちゃんと自分をコントロールすることができる人なんだな(ベッカムの息子と別れて女優業を休止するとか言ってた時にはちょっと心配もしたけど)。
アメコミオタクのヘナチョコ高校生“キック・アス”ことデイヴ役のアーロン・ジョンソンは、『ノーウェアボーイ』の監督サム・テイラーと結婚して2012年にアーロン・テイラー=ジョンソンに改名。
今『キック・アス』を観ると、劇中でデイヴが胸の谷間に発情していた女性教師のことが思い浮かぶけど、奥さんとの出会いはあんな感じだったんだろうかw
この映画での彼は声が甲高くて口許もだらしない、あの髪型もすべてがイケてない感じなんだけど、あれは全部役作りなんだなぁ。他の出演作ではもっと凛々しいもんね。
今回久しぶりに観て、デイヴが好きになってやがて付き合いだすケイティにほんとにイライラした(>_<)
人のこと勝手にゲイだと決めつけて「話し相手が欲しいなら相手になるわよ」とか「ゲイと友だちになるのが夢だった」とかわけわかんないこと言ってるし。
だってさぁ、たとえばもしも僕が女性の同性愛者の人に「レズビアンと友だちになるのが夢だった」とかホザいたら、「何言ってんだ、こいつ」って死んだ目されるでしょ、きっと。
しかも、ラズールという名の麻薬中毒者に金をせびられて困っている、とデイヴを通じてキック・アスに助けを求めておきながら、ラズールが(ヒット・ガールに)殺されると同情して、キック・アスに頼ったことを後悔したりしてる。
観客はその前のシーンでラズールがたちの悪いヤクの売人だったことを知っているから、イイ人ぶりながら見当違いなことばっか言ってるケイティがいちいちムカつくのだ。
ケイティの描き方に作り手の悪意を感じるんだよね。
だからそんな女の子に夢中になってるデイヴもただのバカに見える。
ケイティと、彼女といつもつるんでるエリカは、ジェフ・ワドロウ監督が撮った続篇ではさらにしょーもないキャラにされてしまっている。演じてる女優さんたちにはなんの罪もないのに、不憫すぎ。
この映画って、ヒット・ガールことミンディ以外の女性キャラはほとんどがどーでもいい描き方をされていて、デイヴの母親はあっさり死んでしまうし、ミンディの母親はおなかに我が子を宿しながら自殺する。
女性キャラがないがしろにされまくってて、なんかもういかにも悪ガキどもが作った映画、って感じ。
デイヴたち三バカの幼稚っぽさとか、ギャングたちもその延長線上で、まともな大人はミンディの育ての親で警官のマーカスぐらい。
この映画で殺されるのはフランク・ダミーコに撃ち殺されたコスプレ君とあと1人を除けばほぼギャングたちばかりなので、殺し方も容赦がない。
デカい電子レンジみたいなところに閉じ込めて破裂死させたり、車の粉砕機で潰したり、撃ち殺したり刺し殺したりことごとく惨殺。
ジェイソン・フレミングが演じる男なんて、ベルボーイを命じられて愚痴ってたり、ミンディに対しても親切に建物の中に入れてあげただけなのに無残に殺されてほんとに気の毒。
この辺の残酷風味は『キングスマン』にも受け継がれてましたが。
マシュー・ヴォーンのこのちょっとギャグめかして人を殺す、というのがなかなか凶悪で魅力的なんですよね。
このテイストはハズすとただ残酷なだけで面白くもなんともないんだけど、残念ながら続篇は結構それをやらかしていた。
『キングスマン』もそうだったように、やはりマシュー・ヴォーンのあの引き笑いを呼び起こす悪趣味なセンスって真似が難しいようで。*3
ゲイをバカにしたような差別的な台詞が多いのも、今だとかなり微妙かも。
だからか、続篇ではキック・アスの仲間の覆面ヒーローたちの中にゲイのキャラもいた。
でもそのキャラが有効に働いていたかというと、ほとんど記憶に残ってないんだよなぁ。
バッドテイストな映画って残酷だったり時に差別的でもあるけど、その要素を抜くと毒がなくなって面白味がなくなっちゃう場合もあってなかなか難しいところですが。
この映画は、可愛い顔をした小さな女の子がとんでもなく下品だったり差別的な言葉を吐くのが意外性があってウケたわけで、でもそれと同時に彼女の縦横無尽に走り跳び銃を撃ちまくる姿がどこか感動的でもあった。
そのどちらかが欠けていても、ヒット・ガールはあれほどの人気キャラクターにはなれなかったでしょう。
もちろん、ニコラス・ケイジ演じる“ビッグ・ダディ”の狂気やクリス・ダミーコa.k.a.“レッド・ミスト”の憎めなさ、そしてその父フランク・ダミーコを演じるマーク・ストロングの極悪ぶり。
フランクにはアメコミヒーロー物の悪役、というのでは収まらない妙なリアリティ、本物のギャングっぽさがあって、それも続篇からは失われてしまった要素だった。
荒唐無稽なB級“なんちゃってヒーロー”映画なのに、あの作品にはどこか僕の心の琴線に触れる青春映画の側面があった。
最後の戦いのあとに一緒に空を飛んでいくキック・アスとヒット・ガールの姿に胸がいっぱい。
完全に大人の女優に成長したクロエが再びヒット・ガールを演じるのは難しいだろうし(ビッグ・レディになってしまう)、2作目があまり当たらなかったこともあってさらなる続篇の実現の可能性は限りなく低いけれど、まだ僕は希望を捨てきってはいないんだよね。
いや、もうクロエちゃんはこまっしゃくれた小さな女の子は演じられないにしても、ぜひアメコミの世界に戻ってきてほしいんですよ。
たまにはそういう映画にも出てくれないかなぁ。
彼女は運動神経がいいから、アクションなんかきっと似合うと思うもの。
ともかく、あの限られた時にしか作れなかった貴重な作品ですよね、この『キック・アス』は。
だからこそいつ観ても愛おしいし、またいつか映画館で再会できる日を心待ちにしています。
さて、そんなクロエちゃんの2016年の主演映画『彼女が目覚めるその日まで』が12月16日から劇場公開されます。
アメコミヒーロー映画じゃないけれど、観にいこ~っと♪
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