ゲイリー・J・タニクリフ監督、コリン・フォード、クロエ・グレース・モレッツ、ギルバート・ゴットフリード、クリストファー・ロイド出演の『クロエ・グレース・モレッツ ジャックと天空の巨人』。
2010年作品。日本劇場未公開。
昔々のこと。おとぎ話の登場人物たちが住む村の少年ジャック(コリン・フォード)は、“勇者”になるために犠牲を払おうとお気に入りの牛のゲームを質屋で豆粒3つと取り替える。地面に落ちたその豆を一粒食べたガチョウのグレイソンは人間の姿に変身する。グレイソンとともに残りの豆から生えてきた木に登って魔法の国に着いたジャックは、凶暴な巨人によって竪琴に姿を変えられてしまった少女デスティニー(マディソン・ダヴェンポート)を救いだすことにする。道中、迷路で巨人の手下に襲われた彼らを、ジリアン(クロエ・グレース・モレッツ)という少女が助ける。
完璧に、現在劇場公開中のブライアン・シンガー監督による同名邦題作品に便乗しての日本でのリリースですね。
題名まるっきりおなじだけど、いいのかなこれ。
こちらの原題は“JACK AND THE BEANSTALK(ジャックと豆の木)”。
でも、いまはいいけど、あちらがDVDリリースされたら物凄くまぎらわしいんじゃないだろうか。
親が間違ってこれ借りてきて、「こ~れ~じゃ~ないぃ~!!(ノДT)」とギャン泣きしてる子どもの姿が目に浮かびますが。
ヒロイン役クロエちゃんは、ちょうど『キック・アス』(感想はこちら)撮影のちょっと前、『(500)日のサマー』(感想はこちら)と同時期ぐらいだろうか。
「クロエ・グレース・モレッツ」とDVDのパッケージにド~ンと名前が出てるけど、いうまでもなくこの映画の主人公はジャック役のコリン・フォード君。
『幸せへのキセキ』ではマット・デイモンの息子役だったそうですが、僕は未見。
子ども向けなのはわかってたんで童心にかえって愉しもうと思ってたんだけど、じっさいに観てみたらなんと未就学児童向けなのであった。
昔観た『ネバーエンディング・ストーリー』のTVドラマ版をちょっと思いだした(原形をとどめないぐらい原作が改変されていた)。
よーするに原典を自由に翻案したもので、「昔々のこと」といっときながら、まず冒頭でジャックがグラサンかけて登場したり黒装束のニンジャもどきたちとたたかうシーンから「これはかなりがんばって観ないといけないな」と覚悟を迫られる。
どう見たって劇場公開されるような作品じゃなくてTV放映用のドラマで、セットや美術、撮影などすべてからかなりの低予算であることがうかがえる。
クリストファー・ロイドがジャックの学校の先生役で最初と最後に出てきて、さすがの存在感(後ろの黒板に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のタイムマシンの次元転移装置の絵が描かれている)。
途中、チェビー・チェイスがワンシーンだけ登場。しばらく見ないうちに、じっさまになったなぁ。
そして、巨人の声をダース・ベイダーの声でおなじみのジェームズ・アール・ジョーンズがアテている。
これはなかなかお得感があるかもしれない。
もっとも「巨人」といっても昔ながらの着ぐるみで(スーツアクターの目が直接出ているライダー怪人方式)背の高いプロレスラーぐらいの大きさなんで、ブライアン・シンガー版のような怪獣並みの大巨人を想像していると衝撃をうけるかもしれない。
『トランスフォーマー』を観ようとしたらモノクロ実写版の「鉄人28号」(身長2メートル)だった、ぐらいの。
この巨人の手下に鎧を着たシュレックみたいなのがいる。
敵はこの二人のみ。
しかもジャックが直接巨人たちと派手にたたかう場面はなくて、シュレックに金の卵ぶつけて気絶させるだけ。
10歳ぐらいのときの動いてるクロエたんが観たい!というロリコンか、ガチョウのかぶりものしたおっさんに笑える幼児以外には薦めません。
アメリカの児童向けだから、完全に殺菌消毒されていてそのユルさは折り紙つき。
悪者が血を流したり死んだりするようなことはぜったいにないし、子どもが暴力をふるう場面もアンパンチ程度のものさえない(武器は枕だったりする)。
こんな人畜無害な作品ばっか見せられてたら、子どものときだったら発狂してたかもしれない。
以下、ネタバレありますが、この作品に関してはどうだっていいですよ、ネタバレなんて。
さて、ジャックが通っている学校の同級生はラプンツェルや眠り姫、ヘンゼルとグレーテルや赤ずきんなどおとぎ話の登場人物たち。
ジャックは、彼らのように「自分の役割」を果たしていない、とクリストファー・ロイド演じる先生にしかられる。
ジャックが目指すべきことは“勇者”になること。
しかし先生は、ジャックはおちこぼれの家系だとバカにする。
おまえの父親は逃げたのだ、と。
それに対して、ジャックは「お父さんは冒険に出かけているんです」と答える。
つまり「蒸発した」ということですが(^▽^;)
村長から、勇者になるには自己犠牲の精神が必要、と教えられたジャックは、その一環として大切にしていた牛のゲームを質屋にもっていって、まったく価値のなさげな豆粒3つと取り替える。
意気揚々と家に帰ると、母親は仕事をクビになっていた。働き者の妖精たちが彼女のかわりに仕事をうばってしまったのだった。
当面の生活のためにあなたの牛のゲームを売ってきてちょうだい、といわれる。
幼児向けにしてはなんだか妙にシビアな展開。
しかし、牛のゲームはさっき豆粒と取り替えてしまった。
質屋にもどると、なぜかそこは本屋になっていた。
どっからどう見ても先ほどの質屋のオヤジとおなじ顔の主人が、今度はジャックに何も書かれていない本をくれる。
彼が冒険をすると、そこに物語が書かれるのだ。
なんか『ネバーエンディング・ストーリー』みたい。
うちにもどって母親にそのことを告げると、「お父さんは『女の子を助ける』とかいって私たちを置いて出ていってしまった。みんな作り話よ」という。
なんだこの泣ける話は(;^_^A
これはけっこう面白いんじゃないか、と思っていたら、ジャックが窓から捨てた豆を食ったガチョウが人間に変身、残りの豆からは天までとどく木が生えてくる。
この人間に変身したガチョウのグレイソン、見てくれはガチョウの着ぐるみを着て顔だけ人間のおっさんである。
演じているのはギルバート・ゴットフリードという人。
オープニングタイトルで真っ先に名前が出るのはクリストファー・ロイドではなく、この人。
アメリカでどのくらい知名度があるのか知らないけど、すくなくとも日本じゃ顔も名前も一般には知られてないんで、その後はガチョウのかぶりものした甲高い声のやたらテンションの高いおっさんがわめき散らしてる姿を延々見せられるハメに。
この人をメインキャラクターとして起用したプロデューサーは、たぶんジャー・ジャー・ビンクスの生みの親とおなじセンスの持ち主なんだろう。
誰なんだよこのおっさんは、と思って観終わってから調べてみたら、なんとながらくアフラックのCMでアヒルの声を担当していたが東日本大震災の直後にTwitterで不適切なツイートをしてクビになった野郎だった。
てめぇかっ!!
知ってたらこんな作品観なかったのに。…いや、クロエたんは見たいが。
まぁ、2010年の作品だからな。どうかこいつが路頭に迷いますように。
せっかく面白そうになった作品が、このガチョウのおっさんの出現を境に完全に幼児向けに移行してしまう。
魔法の国の迷路でまよっていたジャックとグレイソンの前に、巨人の手下のシュレックと黒装束のニンジャもどきがあらわれる。
そこに白装束のクロエたんが登場してたたかうのだが、アップ以外はおもいっきりスタントマンになってしまう。
もはや代役であることがバレてるとかいったレヴェルではなくて、スローモーションで白装束の謎の東洋人が延々とニンジャもどきたちと枕で殴りあう。
子役には危険なことさせてませんよ、ってことですかね。
…早送りしたくなった。
こうしてクロエ演じるジリアンは巨人の手下たちを撃退、ジャックたちと行動をともにすることになる。
ジリアンに嫉妬するガチョウのおっさん。
ほんと、どーでもいい展開。
地上では村長に命じられて豆の木を伐ろうとする木こりたちの前にジャックの母親が立ちはだかって抵抗している。
気がふれたのか「私はどかない~♪」と歌いだすお母さん。
このあたりで映画がはじまってからすでに1時間ぐらい経っている。
ワナをかいくぐってなんとか巨人の棲む建物(全景が映らないので、お城なのかなんなのかもわからない)にたどりついたジャックたちだったが、けっきょく捕まってしまう。
じつはジリアンは、巨人に囚われた父親を救うために巨人と取り引きしてジャックたちをわざと巨人のもとにおびきよせたのだった。
その事実を知ったジャックはショックをうけるが、反省したジリアンがジャックと同様にもっていた自分の本を捨てて彼の物語のために協力することを告げると和解する。
そして、牢屋の床に刻まれていた紋章を見て、ジャックはかつて自分の父親がジリアンの父親を救うために巨人の手にかかって命を落としたことを知る。
父さんは、みずからを犠牲にして人を救ったほんとうの勇者だった!!
ガチョウ親父も助けだして眠っている巨人から竪琴をうばいかえし、シュレックに金の卵をぶつけて豆の木をつたって地上に帰ろうとするジャック。
目をさました巨人はジャックたちを追ってくる。
地上では木こりたちがジャックたちが降りている豆の木を伐っている。
木は倒れ、巨人は地面にめり込んで(死ぬところはありません)、ジャックたちは無事生還。
じつはジリアンの父親は、かつて魔法の国から生還した本屋の主人だった。
ジャックは先生にA+の成績をもらって、めでたしめでたし。
…って、オイッ!!!
そもそも、なんでジリアンの父ちゃんは娘を危険な魔法の国に置き去りにして地上にもどったんだ?
しかも、この親父を助けるためにジャックの父親は死んでるわけで、どう考えてもコイツがすべての元凶なのだが、なんか「イイ人」みたいに描かれてる。
ジャックの家は母親が失業中で依然食料にも事欠く貧乏であることに変わりないのに、そのあたりについてはまるで言及なし。
この映像作品の脚本家が何人もいることから勝手に想像するに、僕が「面白そう」と感じたように最初は現実の世界をおとぎ話の姿を借りて描いたものだったのが、シナリオがリライトされていじくられてるうちにどんどんどーでもいい話に改悪されていったのではないか。
だって最初の方のシビアな導入部と中盤以降の子どもだってだまされないような、ほんとに愕然とするほどつまんない展開のテイストがあまりにも違うもんだから。
これまで観たクロエ関連作品のなかでも群を抜くほどの駄作(断言)でした。
いや、まぁクロエたん萌えのロリコンとガチョウのおっさんに笑える幼児は観てみたらいいんじゃないですかね。
あまりにもつまんなすぎて子どもが暴れても責任は負いませんが。
ちなみに、ネットでは竪琴に変えられてしまった少女デスティニーもクロエの2役だと記しているサイトがあるけど、じっさいに演じているのは別人のマディソン・ダヴェンポート。
この子はヘタすりゃクロエより美少女なのだが、出番はごくわずか。
そして現在、知名度ではクロエの方がはるかに上である。
子役の世界の力関係はわかりませんなぁ。
…なんか、ロリコン変態オヤジの気持ち悪い文章になってしまったけど、そんな楽しみでも見いださなきゃ観てらんなかったんだよ、この作品は(逆ギレ)!
あぁ、はやく『キック・アス2』が公開されないかなぁ。
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