映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

「チャップリン 作品とその生涯」


チャールズ・チャップリンの映画(全11プログラム)を上映する「フォーエバー・チャップリン ~チャールズ・チャップリン映画祭」は僕の住んでいるところではすでに終了しましたが、今月や来年の1月など、これから上映が始まる地域もあるので、引き続きチャップリン関連の記事を。

ei-gataro.hatenablog.jp

ei-gataro.hatenablog.jp


ひと月の間チャップリンの映画を劇場で観続ける、という幸福な時間を過ごせて大変満足しているし、この催しを企画してくださったかたがたに感謝していますが、一つちょっと残念だったのは劇場パンフレットがなかったこと。

今年は監督だったり俳優だったり、特集上映に足を運ぶ機会が結構あったんですが、そこではだいたいパンフレットは用意されていたのに、チャップリンの映画の特集上映会に専用のパンフがないというのは寂しい。

で、劇場で販売されていたチャップリン研究家の大野裕之さんの著書「チャップリン 作品とその生涯」(2017年刊。本体920円。※僕の行った劇場では本体価格で買えました)を購入。


他にも何冊か大野さんのチャップリン関連の本がありましたが、中にはなかなかお値段の張るものもあったし、どれが一番今の自分にはお手頃だろうかと吟味したうえで買ったこの「チャップリン 作品とその生涯」は、チャップリンの誕生から晩年までその生涯と、彼の作品(未発表作品や未完成・未撮影の作品も含む)について作者自身が直接関係者に取材したさまざまなエピソードを交えて解説してあって、劇場パンフレット代わりにはもってこいの一冊でした。

もしも、僕と同様に劇場でパンフレットが売ってなくてがっかりしたかたは、読み応えがあってお値段もちょうどいいのでおススメです。

著者の大野裕之さんは「日本チャップリン協会」の会長さんということで以前お名前だけはどこかで拝見したことがあったんですが、大野さんが書かれた本を読んだことはなかったし、詳しいプロフィールも存じ上げませんでした。

脚本家、演出家でもあって、名斬られ役の福本清三さんが主演した『太秦ライムライト』の脚本を書かれていたんですね(プロデューサーも担当)。

“ライムライト”ってタイトルが入っているのはノスタルジーを感じさせる効果を狙ったものだと思っていたら、書いた人がしっかりチャップリンと関係があったとは。

ameblo.jp


何ヵ月か前にNHKで放送された「ヒトラーVSチャップリン 終わりなき闘い」を観て非常に面白かったですが、大野さんも番組に協力されていたんですね。「チャップリンヒトラー」という本も書かれてますし。

www.nhk.jp


チャップリン 作品とその生涯」の中でも大野さんはチャップリンを目の敵にしたナチスが行なった彼の映画の妨害工作、デマによる誹謗中傷などについて書かれていますが、それは現在の日本でも同様に気に入らない者を攻撃する手段として用いられていることだったりする。「ユダヤ人」「共産主義者」として攻撃されたチャップリン(彼はそのどちらでもなかったのだが)はいかにして闘い生き抜いたか。

差別や暴力に対して「笑い」を用いてそれらを無化する。

『独裁者』の字幕では細かい部分が省略されてしまっているラストの床屋=チャップリンの演説を、本書ではしっかりと全文載せている。

この本は2017年に出版されたものだけど、あれから5年経って、ウクライナでの戦闘などが重ねられるように、戦争とコロナ禍の時代である現在、ここに書かれていることはますます私たちにとって重要になってきている。

扇動者に耳を貸さないこと、デマに踊らされて差別や暴力行為に加担しないこと。

大野さんはチャップリンについての講演などでも彼の時代を超えた人権意識や失敗を繰り返しながら得てきた知恵について語られていますが、「チャールズ・チャップリン映画祭」の「いま私たちにはチャップリンが必要だ」というキャッチコピーは、まさにチャップリンその人が持っていた意識を私たちも共有しよう、ということだと思います。

誕生日が同じ年の4日違いで同じ時期に偶然特徴的なチョビ髭を生やし始めた(チャップリンの髭はアザラシの毛による付けヒゲですが)チャップリンヒトラーを分けるものは、戦争を拒絶するか利用するか、人権や民主主義の大切さを理解しているかしていないか、その違いからくるものだと思う。どちらを見習うべきなのかは言うまでもないですが、迷っている人もいる。迷うことはない。チャップリン自身がそのことに言及してもいる。自分はもしかしたらヒトラーの方になっていたかもしれない、と。

だから、自分自身で選択するのだ。「正しい方」を。

チャップリン 作品とその生涯」にはまだまだ興味深いことが多く書かれていますが、あとはぜひ実際にお手に取って確かめてみてください。


関連記事
『独裁者』
『キッド』『黄金狂時代』『街の灯』
『モダン・タイムス』
『サーカス』『巴里の女性』
『映画はアリスから始まった』
『アーティスト』
『エヴァの告白』
『ジョーカー』
『彼らは生きていた』

ブログランキング・にほんブログ村へ にほんブログ村 映画ブログへ にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

f:id:ei-gataro:20191213033115j:plain
↑もう一つのブログで最新映画の感想を書いています♪