四月から半年間観続けてきた「ひよっこ」が終わりました。
ちょっと遅れちゃいましたが、最終回を観終わって感じたことを記しておきます。
文句ばっか言ってると朝ドラクラスタや「ひよっこ」ファンのかたがたにお叱りを受けそうですが、これだけしつこくブログに書いてるだけでもお気に入りのドラマだったんだから、そのあたりはご容赦くださいな。
前回の記事にもちょっと書いたように、僕はこのドラマに世の中への「多様性」の啓蒙というか、いろんな生き方があっていいんだ、っていう主張を込めてほしかったんだけど、家族の大切さとか故郷のありがたみ、みたいな従来の朝ドラの世界をあらためて肯定するような結末に収まっていたのがちょっともったいなかったなぁ。
谷田部家や奥茨城ではみんなが仲が良くて最初からまるで理想郷のように描かれていたから、「家族や仲間が大事」というのはもう充分わかってることなのだから。
もちろん、家族も故郷も人の絆も大事だと思うし、暗くて孤独で破滅的な生き方をあえて視聴者に勧める必要はないけれど、世の中にはさまざまな理由でそのような恵まれた環境に身を置いていない人だっているのだし、このドラマの舞台となった1960年代や昭和40年代っていろんな新しい価値観が入ってきて選択肢もずっと広がった時代だったんだから、これだけヴァラエティに富んだキャラクターたちが登場しているのなら、ここ最近流行りの「キャラ萌え」の要素も加味しつつ、彼らの生き方、人生もまたもっといろんなヴァリエーションがあってもよかったのでは、と思うんですよね。
このドラマの中盤ぐらいまでは、行方不明の実お父ちゃんが見つかるかどうか、そしてついに再会できた父の記憶は戻るのかどうか、ということが物語を推進させていたんだけど、それと他の登場人物たちの人生を並行して描くことで日本の現代史についてのとても興味深い戯画にもなったと思うし。
そういう期待は残念ながら叶えられなかった。
正直なところ、ヒロインのみね子が誰と付き合うとか、そういうのどーでもよかったんだよなぁ。
後半はかなりパターン化されてしまったきらいがあった。特にお父ちゃんが見つかって以降が。
どう話を転がしたらいいのかわかんなくなっちゃってるような停滞気味な状態がしばらく続いてたし。あの停滞は痛かったですね。あそこでまわりの登場人物たちのドラマをもうちょっと深く掘り下げるなりしてほしかった。
肝腎なところが全部本人の台詞だけで処理されてたりしたから(愛子さんとか、お富さんとか、早苗さんとか)。
脚本家のかたが病気でちょっとお休みされてたようなことを耳にしましたが、シナリオが止まっちゃってセット組んでる暇がなかったのかな。
たとえば「あかね荘」の頼りになるハグ姐さん、早苗さんは「会社員」という設定だったけど、彼女の勤め先の描写は一切なかったのが不思議でしかたなくて、だから僕はほんとは何か別の仕事をしてるんじゃないかと思っていたんですが、結局すべて台詞の中だけで語られてて、最後はエレベーターの中で出会ったドラマーと再会して…みたいな楽屋オチのような終わり方(言うまでもなく、早苗役のシシド・カフカは本職はドラマー)だったし、登場人物たちの人生がずいぶんと適当に流されてしまっていたなぁ、という印象。
米屋の米子と三男だって、あんなくっつき方でいいのかな、ってすっごく疑問。
あの二人が最後に結婚するためには、やっぱりもっと彼らのエピソードを描くべきだったと思う。
高子さんの三男の実家への嫁入りの件もそうだったけど、作劇があまりに乱暴すぎる。
あの漫画家コンビの関係は含みを持たせてるようでちょっと面白かったけどね。
いろんな朝ドラ的なお約束をあえてハズしてきた(ヒロインを子役が演じない、子役の可愛さでお話を引っぱらない、ヒロインの口癖がないetc.)のも、描かれるのが非常に限定された期間(4年間)であることも、どれもが新鮮だったし、その試みは大いに評価されていいと思うんだけど、ならばそれはぜひ最後まで続けてもらいたかったな。
最終的にヒロインがこれまでの定番の朝ドラのヒロインになる、というお話だったんだとしたら、なんだかそれはずいぶんと拍子抜けだし期待はずれでもある。
あと、すっごく細かいけど、みね子が上京してから四年経ってるにもかかわらず、弟の進がまったく成長していないのはさすがにちょっと無理を感じたなぁ^_^; いや、進を演じてた子役の子がとても可愛かったから、まるで甥っ子のようで彼の顔を見るのは楽しみでしたけどね。CMソングや「涙くんさよなら」など、歌がらみのところにはいつも進がいたよね。
予想はしてたけど、最終回間際になって登場人物たちがマッハで片付いていくのも慌ただしすぎて^_^;
朝ドラって時間配分がほんとに難しいんですね。
スピンオフの代わりに続篇を作るんじゃないか、って噂があったりするようですが、どうなんだろう。
三男や時子のエピソードはもっと見たいけどね。
いろいろ文句も言ってきたけど、それでもこうやってずっと楽しませてくれた関係者の皆さんには感謝です。本当にお疲れ様でした。
僕は「マッサン」や「あさが来た」も結構好きでずっと観てましたが、それでもこの「ひよっこ」はその中で一番夢中になって観ていたし、だから文句言いながらも愛着はあるんですよ。
これまでの女性の一代記とか現代劇とも違う、お父ちゃんの一件を除けば大きな事件も起こらない、ほのぼの日常路線だったことも毎日楽しみにできた理由でもあった。
乙女寮の子たちはほんとに可愛かったしなぁ。
お父ちゃんの記憶がちょっと戻ったような、でも劇的には変わらないという、みね子にもいえることだけど、これは「変わらない人々」の物語だったんですね。
これまではリアルタイムで観ていたこのドラマが、これからはそうやって褒めたり文句言ったりしてきたことも“過去”になってしまうんだということ、懐かしい思い出になってしまうことに一抹の寂しさも感じています。
毎朝お馴染みだったあの主題歌が聴けなくなるのも。「ひよロス」がジワジワとやってきそう。
このドラマでも主演の有村架純さん以外にも何人もの俳優さんたちが注目されましたね。
これからその人たちがいろんな方面でさらなる活躍を見せてくれることを楽しみにしています。
さて、もう始まってますが、新ドラマ「わろてんか」。
「ひよっこ」とは対照的な大阪のコテコテの笑いを前面に押し出してきてる感じの作品で、現時点ではヒロインを子役が演じてますが、それや実在の人物をモデルにしているのも「ひよっこ」があえて避けていたこと。この定番中の定番、吉と出るのか凶と出るのか気になるところです。
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