今回は中途半端に古い映画を二本続けて。どちらもアンジェリーナ・ジョリーの出演作品というくくりで。
以下は、それぞれ2008年と2010年の劇場公開時に書いた感想を一部加筆修正したものです。
まずは、ティムール・ベクマンベトフ監督、ジェームズ・マカヴォイ、アンジェリーナ・ジョリー、モーガン・フリーマン出演の『ウォンテッド』。2008年作品。
しがない会社員のウェスリー(ジェームズ・マカヴォイ)は、ある日、謎の美女(アンジェリーナ・ジョリー)に命を助けられ彼女の所属する組織にスカウトされる。それは何世紀にも渡って“運命の意志”のために戦う暗殺集団だった。
パニック障害の冴えない会社員の正体は、実は射撃が得意な「のび太くん」でした、という話。ボス役のモーガン・フリーマンはあやとりが上手。
アンジーは主人公を導くパイセン暗殺者役。
アンジェリーナ・ジョリーが今この手のキャラクターをやったら最も説得力がある女優なのはたしかだと思う(最近はミラ・ジョヴォヴィッチもそうだが)。『トゥームレイダー』もあのキャラ(だけ)はよかったし、『Mr.&Mrs. スミス』でブラピと対等に渡り合えたのも彼女だからこそ。もちろんこの映画でもタトゥー入りでアクションもバッチリキメてくれてる。
でもなんだかどんどん痩せて物凄く不健康な風貌になってるけど…大丈夫なのか?顔がこわいって。赤ちゃん産んでかなり大変なことになってるようだけど。もうちょっとお肉つけてふくよかさを取り戻してほしい。
モーガン・フリーマンも事故で重傷ってニュースになってたけど、今は“回復風呂”にでも浸かってんだろうか(不謹慎)。*1
修行によって自力で拳銃の弾丸を曲げられるようになる、というアイディアはユニークだし、主演のジェームズ・マカヴォイは『マトリックス』のキアヌっぽい冴えない青年が次第に覚醒していくさまを好演。
でも、ロシア人の監督(『ナイト・ウォッチ』『デイ・ウォッチ』の人だけどどちらも観てない)が撮ったのに、出てるロシア人がみんな同じ顔に見えるのには困った。さっき挙げた有名俳優たち以外、見事なぐらい顔にもキャラにも特徴がない。ネズミ爆弾作ってた奴とか死んだのあとで気づいたし。
お好きなかたもいらっしゃるようですが、個人的にはこれだけ燃えないアクション映画も珍しい。
CMでも流れてるように、カーチェイスや電車のシーンとかわりとハデな見せ場はあるんだけど(しかし乗客皆殺しって…1000人救うために1人を殺す、とか言っといて、すでに無関係な人間何百人も虐殺してんじゃん)、とにかく主人公が戦う動機がどんどん希薄になっていくんだよね。
暗殺集団と紡績って組み合わせは興味をそそられるし、トンデモ陰謀論ってわりと好きなのに全然ノれなかった。父親の正体とかドンデン返しとか、どうもストーリーテリングがお粗末過ぎて。
『スーパーマン』のゾッド将軍=テレンス・スタンプが『スター・ウォーズ エピソード1』の時と同じくどーでもいい役で出ていた(この人、最近はこういう出演多いけど)。
主人公の台詞通り、観てるうちに何もかもがどうでもよくなってくる。これ観たら『マトリックス』が百万倍よくできた映画に思えてきた。
ダメ人間がまわりの気に食わない奴を見返して生まれ変わる映画をやるのなら、もっと共感できるように巧いことダマくらかしてくんなきゃ。
嫌いな女上司はブーデーで、なんでつきあってんのかわからない浮気なカノジョはブサイクで。そしてうだつの上がらなかった主人公が「してやったり顔」でアンジーとキス、っていくらなんでもあまりに都合が良すぎるでしょ。中学生が書いたシナリオか?
『マトリックス』『ファイトクラブ』『リベリオン』…パクるのは勝手だけどどれも元ネタを超えてない。
別に虫の居所が悪いわけでもないのに、なんか久々にボロクソ貶してしまった。いやいや、ほんとはこんなに面白いんだぜ!というみなさんの感想をぜひ聴かせていただきたいものです。
続いて、フィリップ・ノイス監督、アンジェリーナ・ジョリー主演『ソルト』。2010年作品。
ロシアのスパイとして追われることになったイヴリン・ソルト(アンジェリーナ・ジョリー)の逃亡劇。事件はやがて米露両国間の危機を招く規模に拡大していく。
「アンジェリーナ・ジョリーのアクション映画」のファンなら観て損はないんじゃないでしょうかね。
じゃあ、お薦めなのかといったら、いきなり悪口から書き始めますが。
…いやぁ、凄まじい映画でした。
何がってストーリーが。
もう、誰が味方で誰が敵だとか、主人公の正体や彼女の真の目的は?とか、真面目に筋を追ってるとムカッ腹が立ってくるのでご用心。
つくづくアメリカって国は病的なぐらい“外敵”を探してるんだな、と痛感しました。
予告篇でもロシア語訛りで喋ってる男が出てたけど、今さらロシア?世界を征服?一体いつの時代の映画だ、という代物。*2
黒幕の狙いが「イスラム教徒を怒らせる」ってなんの冗談だよ^_^;「サウスパーク」か!!誰だシナリオ書いた奴は。全世界の観客に謝罪しろ!!!
ほんと、主演がアンジェリーナ・ジョリーじゃなかったらおそらく日本での劇場公開はなかったと思う。
しかしホンを選ばんなぁ、この人も。
思えばアンジェリーナ・ジョリーってアカデミー賞も受賞してる演技派女優なのに、彼女が主演した“アクション映画”は出世作『トゥームレイダー』も含めて(彼女自身のアクションは痛快にもかかわらず)どれもこれもみんなお話が恐ろしくお粗末なんだよね。ストーリーの巧みさで唸らされた作品は一本もない。
2年前の『ウォンテッド』でも弾丸をカーブさせたり裸まで見せてくれてたけど、あまりにデタラメなストーリーに怒り心頭に発したものですが。
だからこの映画もそういうことでは今までと同様、何も考えずに頭の中カラッポにして、ただただアンジーの躍動する肉体(と、それ以上に迫力満点の顔面)を堪能すればよいのだ、と。
もうCIAもシークレット・サーヴィスも警察も弱すぎ。そしてアンジー強すぎ。 殺りすぎアンジー。
続篇ができたら次の雑魚キャラはFBIか。
伏線とか関係ない、観客の気を引いておくためだけの、危機のための危機。ドンデン返しにもなってないオチ。
かように画期的なぐらいスットコドッコイな脚本なんだけど、一人は『L.A.コンフィデンシャル』や『ミスティック・リバー』などの脚本家。一体どーした!眠ったまま書いたのか?…と思ってたら、もう一人、『リベリオン』やミラ・ジョヴォヴィッチ主演の『ウルトラヴァイオレット』の監督・脚本家が紛れ込んでいた。お、お前のせいかぁ!!!
『ウルトラヴァイオレット』(2006) 監督・脚本:カート・ウィマー 主演:ミラ・ジョヴォヴィッチ
www.youtube.com
そう、ロシアだの暗殺だの核戦争の危機だのと言ってても、結局は「リアリティ」なんてものからは百万光年離れた“スーパーヒロイン物”だったわけである。
しかも、ぼぉ〜っとスクリーン眺めてればズンドコズンドコ鳴り響くジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽に乗って意外にスルッと観れてしまったりする。
あとにはなんにも残らないが。
エンド・クレジットで「ダニー・アイエロIII世」とあったんでオヤッ?と思ったら、『レオン』(感想はこちら)などの名バイプレイヤー、ダニー・アイエロの息子さんだった。スタントマンなんだそうで。
何度も繰り返すけど、アンジェリーナ・ジョリーは素晴らしいんです。
少なくとも彼女の顔ヂカラと小気味よい身のこなしは見どころではある。
ただストーリーの中身がないのはしょーがないとして(ブルース・リーの映画だって物語が特別優れてるわけじゃないし、セガールやヴァン・ダムの映画にだって別に中身なんかないわけで)、問題なのはいつも彼女に見合う強敵がいないってこと。
『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』の牙兄貴リーヴ・シュライバーが出てるけど、今回は四足歩行で超人的パワーを発揮するわけじゃない。
ヘビー級の格闘家みたいなハゲのロシア人はあっという間に退場しちゃうし。
やっぱ男ではダメだと思う。
だから今一番観たいのは、“アンジェリーナ・ジョリーvs.ミラ・ジョヴォヴィッチ”。
冗談ではなく、これは本気で観たい。
この映画の前に『バイオハザードIV アフターライフ』の予告篇観て猛烈にそう思った。
ってゆーか、それぐらいの組み合わせでなきゃ、もはやジョリ姐の存在感には太刀打ちできないって。
たしかにアンジーとミラジョヴォは互いに演じてるキャラがカブってるとこもあるんで、共演したらそれぞれの魅力が相殺されてしまう危険があるし、どちらも主役張ってる女優さんたちだからゴジラvs.ガメラ並みに実現の可能性は低いけど(どちらか一方を負けさせるわけにいかないから)、やったらみんな絶対観に行くでしょ?
僕の中で彼女たちが、だんだん女優というよりエイリアンとかプレデターみたいなクリーチャー的な扱いになっていってますが。
二人ともハリウッドのヒロイン・アクションを牽引してきた功労者だし、結婚して子どももいるのに今でも身体張ってアクションを撮り続けてるのには本当に頭が下がります。
だからこそ、そろそろここらでほんとの決定版を作って欲しい。*3
もうさぁ、シガーニー・ウィーヴァーやリンダ・ハミルトンも呼んできて女版『エクスペンダブルズ』撮ろうよ、キャスリン・ビグロー監督で。
って自分で書いてて思ったけど…それすっげー観たいかもw
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