※以下は、2010年に書いた感想です。
監督:本広克行、脚本:君塚良一、主演:織田裕二の『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』。2010年作品。
湾岸署から盗まれた3丁の拳銃で人が殺される事件が起きる。やがて犯人とおもわれる男はかつて青島(織田裕二)が逮捕した犯人たちの釈放を要求してくるのだった。
質問です。
あなたは『踊る大捜査線』が好きですか?
○ はい、大好きです
× いいえ、大嫌いです
いかがでしょうか?まぁ、嫌いな人はこんな文章読んでないと思いますが。
僕はどーかというと…おいおい述べていこうと思います。
前作『レインボーブリッジを封鎖せよ!』の公開時、歌舞伎町の映画館の前を長蛇の列がとぐろを巻いてたのを思い出します。
いわゆる映画痛、いや映画通と呼ばれるかたがたには時に蛇蝎のごとく扱われるこのシリーズ。
事務所とのゴタゴタでレギュラーメンバーの一人が外されるという、このシリーズを温かく見守ってきた客をほったらかしにした事の顛末にはうんざりしますが(ハッキリ言うけど、水野美紀の前の事務所がこれまで彼女の魅力を充分に引き出せてたとは思えないです。自由になった今の方が何倍も輝いてるんじゃないか?)、でもみんな、好きなんでしょ?『踊る~』が。
というわけで、青島君三たび。
映画館で席についたらまわりは子ども連れのファミリー客で一杯。
隣の席の若いお母さんが思いっきり僕の席に座ってて、何度も確認してしまった。
小学校低学年の子たちとかが観るんだこれ。…面白いの?
ちっさい女の子たちがスリーアミーゴスや青島君のボケにウケてるし。
で、僕自身はどうなのかというと、大ファンではないけれど、これまでなんとなく普通に愉しんできたクチです。
おまけにユースケ・サンタマリア主演のスピンオフ作品まで観てしまった(ギバちゃん主演のは未見)。これまたさほど不満を感じることもなく。
なので、もうファンといってしまっていいんではないか?とも思ってたのだが。
しかしこの『踊る〜』の監督さんが2年前に撮った『少林少女』(感想はこちら)が近年稀に見る“超電波映画”だった事実を僕はまだ忘れていない。
あれにはほんとにマイッた。頭がおかしくなるかと思いました。
かなり期待してただけに、あの時感じた混乱と失望はハンパなかった。
まぁそんなわけで、無条件には信用できないのです。
と、いつものように上から目線で語ってますが、実は同じく織田裕二主演の『アマルフィ』を単純に「面白かった」と感じた自分としては、その後あの作品がツッコミどころがあり過ぎる珍作としてけっこう酷評を浴びてるのを知って、自分の映画を見極める目にあまり自信が持てなくなったりもしてまして。
…でも別にい~や、批評家じゃねぇんだし、と居直ったりしておりますが。
以下、ネタバレあり。
で、青島君なんである。
とりあえず今回もまた上映時間が140分を超えてます。
あいかわらずフジテレビは強気ですね。
いいんですよ、別に。面白ければ上映時間が3時間だろーが4時間だろうが。
しつこいけど、もともとこのシリーズに文句つけたり粗探しするつもりなんかないんだから。
だがしかし。
30分経っても、1時間ぐらいになっても何も起こらないのだった。…エッ?
顔にコントみたいなメイクした三人のじーさんたちの茶番。スカンクの放屁(もしホンモノを食らったらあんな程度じゃ済まなくて、真下もすみれさんも悪臭でゲロ吐きまくってると思う)。
もはや笑いどころか怒りがこみあげてくる。
…あぁ、そうか。真面目に映画を作る気なんかないんだ、と。いや、おふざけでも何でもいいんですって。面白ければ。
でも人はもう山のようにウジャウジャ出てくるんだけど、もはや湾岸署のお馴染みのあの人たちが何に一所懸命になってるのかすらわからなくなってきて。
すでに置物と化したギバちゃんは目つぶってるか一言二言喋るだけだし。
それとユースケ・サンタマリアが小泉孝太郎に言ってた“目には目を、歯には歯を”作戦、ってなんなんですか?
ハッカーにはハッカーを、って意味なら言葉の使い方間違ってるでしょ。
それをゆーならせめて「毒をもって毒を制す」だ。「目には目を」じゃ復讐になっちゃうだろ!大丈夫なのか君塚さん。
警察署に身元もさだかでない派遣の運送業者を大量に出入りさせたり(問題が発生したあともまだウロチョロさせてるし)、終身刑の凶悪犯にガキみたいなカウンセラーをつける恐るべきセキュリティの甘さとか。
具合悪そうな仲間にいたわりの言葉じゃなくて「しっかりしなさいよ、どうせ死ぬんでしょ?あんたが頑張らないとあたしの拳銃で人が殺されるのよ!」と耳を疑うような言葉を浴びせる深津絵里や、ただ怒鳴ってるだけの本庁のお偉いさん。
もうさぁ、今さら「所轄はひっこんでろ!」とかいいんだよ。
かつて青島刑事が逮捕した犯人たちが大挙して釈放され町は大混乱に!…とか期待したら裏切られますからね。残念ながら。
そして新湾岸署が頑丈なシャッターで覆われちゃう場面。
あそこはドラマ上、絶対に主人公の青島が何とか知恵を振り絞って彼自身の手で開けなきゃ意味がないわけでしょう。
なのに鐘突きみたいに木の杭でゴンゴンと何やってんだあんた。
何がしたいんだよ青島ぁ!!
さんざん大騒ぎしといて「電源切ったら開く」って、コンセント抜けたら時限爆弾が停まる『裸の銃を持つ男』のギャグか?
もうトンデモなさ過ぎてどっからツッコんでいいのかわからないよ!!
さらに、病気で死にそうなら(間違いだったってことはすでに観客は知ってる)警察や報道陣、すべての人々が静かに耳を傾けてくれるという実に素晴らしい世界。
『少林少女』といい、なんだろう、この映画の作り手さんたちは「信者」を作ろうとしてるの?観客を何か間違った方向にマインドコントロールしようとしてます?
今回の“犯人”の台詞、「ケイイチは他にもまだいるぞ」って。
みなさん、怖かったですかぁ~?戦慄した~?
もうねぇ…、これはヒドい。ヒド過ぎる。長さんが草葉の陰で「ダメだこりゃ」って呆れてるよ。こんなの映画じゃねぇっつーの!!…と絶叫したいけど、僕は自分の映画を見極める目に自信が持てないので何とも言えないです。
ただこれだけは確かなのが、140分もかけて見せる内容ではない、ということ。
この映画に関わった多くの俳優さん、スタッフのかたがたにはもちろん何の恨みもありませんし、みなさんほんとに頑張ってお仕事されてるんだろうと思います。
それは重々承知の上で、観終わった今あらためて本作品のすみれさんの最後の台詞をこの映画そのものに贈りたいと思います。
「死ねばよかったのに」。
気になるかたはどうぞご覧あれ。
僕がここに書いてることが正しいのか間違っているのかは、ご自身の目でお確かめください。
最後に自分に質問。
あなたは『踊る大捜査線』が好きですか?
○ はい、大好きです
× いいえ、大嫌いです
この映画に関していえば、限りなく×です。
見事なまでの急下降。公開初日に観に行ってしまった自分自身を激しく後悔。
4作目も作る気満々みたいですが、おそらく僕が観ることはないですね。*1
さらば、湾岸署。そしてもしかしたら本広監督も。*2
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