映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

※2019年の“はてなダイアリー”終了に伴い、2018年9月にブログを移行しました。

『マイク・ザ・ウィザード』


マイク・ジトロフ監督・主演、その他もろもろ担当の『マイク・ザ・ウィザード』。1988年作品。

http://www.youtube.com/watch?v=15fgnbLdAuYwww.youtube.com

特撮マンの主人公マイクが仕事を求めてハリウッドのスタジオに自分の作品を売り込んで、SFX(スペシャル・エフェクツ=特殊効果)を駆使したTV特番を作り上げるまでを描く。

ネタバレは無し。


VHSヴィデオ版を鑑賞。

公開当時、タイトルやポスターは見たことがあった。

何やらSFXを扱った映画ということや一部でカルト的な人気があることは知ってたけど、未見でした。

なんとなく『オースティン・パワーズ』みたいなアホで下品なギャグだらけの映画を想像していたんだけど違っていた。

たしかに“コメディ”ではあるんだろうけど、この作品が作られたのは80年代。

あの時代の雰囲気を濃厚に醸し出している。

だから今風の「笑い」を求めて観たらユルいことこの上ない。

でも「映画」、特にトリック撮影を用いた「SFX映画」が好きな人、かつてそういう映画を自分でも撮りたい、と思ったことがある人などには愛すべき作品。

少なくとも僕はおおいにほのぼのしました。そしてちょっと身につまされもした。

この映画を好きな人がけっこういるというのもうなずける。


主人公を演じるのは、この映画の監督本人。しかもキャラクターの名前も本名のままの「マイク・ジトロフ」。

といっても、もちろんこれはドキュメンタリーじゃないし、インディペンデント映像作家がプロになろうと奮闘する姿を描いてはいても作品そのものが“SFX”を随所に盛り込んだ“魔法の映画”だから、実録物風というよりはある種のファンタジー映画といえる。

さっきから僕が連発している“SFX”という言葉だけど、まだ現在のようにCGが普及してなくて“VFX(ヴィジュアル・エフェクツ=視覚効果)”という言葉がひんぱんに使われるようになる前は、ミニチュア撮影だろうと光学合成だろうと、日本では「特撮」の英語読みみたいな感覚でとにかく全部ひっくるめてそう呼ばれていた。

何しろこの映画の中でメインのSFXとして使われているのは「ストップモーション・アニメ」。

ようするに「コマ撮り」。

やがてメジャーな映画ではCGに取って代わられる技法である。

あの当時を知ってる者としては、それだけでちょっと胸にグッとくるものがある。

この時代、たとえば86年には『F/X 引き裂かれたトリック』という、これまたSFXマンが(かなりムリのある)特撮技術を使って敵の目をあざむいて撃退するという映画が作られている。

『F/X〜』はひと頃TVでよくやってました。


さて、この映画『マイク・ザ・ウィザード』の主人公マイクなんだけど、のちに『バットマンフォーエヴァー』(1995)でジム・キャリーが演じた悪役リドラー、になる前のオタク君エドワード・ニグマにソックリだな、と。


つねに緑色の上着を羽織りオモチャにあふれた家に住み、背が高くて髪が中途半端に伸びてる。そのハイテンションぶりと身振り手振りがオーヴァーなところなど実によく似ている。

ジトロフ監督がバットマンの悪役のキャラを拝借したのか、それともジム・キャリーがこの作品を参考にしたのかは知らないけれど。

映画作りの舞台裏を描いているんだけど、ほんとに映画業界を目指してる人の参考になる作品では全然なくて、映画のスタッフになりたくても正規の組合員じゃないと雇ってもらえないとか、撮影すんのにスタジオ代やら掃除代やらでやたらと金がかかるとか、撮影所の備品は一切外に持ち出せないなど、ハリウッドとは縁のない人間にはなんの役にも立たない(しかも誇張されてるのでリアルなバックステージ物というわけでもない)お話。

フランソワ・トリュフォーの『アメリカの夜』のような、映画にたずさわる人々の人間模様を描いた作品、というにはノリがかなり軽い。

あまりにくだらない番組を作らされて「これがプロの仕事か。まるで学芸会だ!」とわめいて踊りながら空のフィルム缶の束を蹴散らすオッサンやウディ・アレンのソックリさんが出てくるとこはちょっと笑ったけど(アレンはハリウッドにはいないと思うが)。

どんなにがんばってもかならずうまくいくとはかぎらない。

ましてやこれはハリウッド映画。

クライマックス直前に主人公はかならず危機におちいる。

マイクはつぶやく。


つまらないことが多すぎる
夢だけで生きられたらいい


どうしようもなく幼稚な考えだけど、僕自身今でもそう思ってしまうことがしょっちゅうある。

切ない話だ。

でもこれは“魔法の映画”だから、最後にはハッピーエンドが待っている。

劇中、主人公に「金は出すからいいものを作れ」と言っておきながら、ことごとく約束を反故にして作品だけかっさらおうとする悪徳プロデューサーを演じているリチャード・ケイは、実際にこの映画『マイク〜』のプロデューサーであり、もともと短篇映画だったこの作品のオリジナル版を撮ったマイク・ジトロフの才能に惚れこんで、彼がこの長篇映画を完成できるように尽力した人物。


イイ話だなぁ。

しかし、僕はてっきりこの映画は80年代のはじめ頃に作られたんだとばかり思ってたけど、実は88年の作品なんだよね。

それにしちゃ登場人物の服装なんかが妙に70年代っぽかったり、笑いのセンスもずいぶんといにしえな感じがしたんだけど。モサいというか(^_^;)

この映画のもとになった短篇映画は79年制作なので、舞台をその時代に合わせたのかもしれないが。

狂騒的なとこなんかがちょっとブライアン・デ・パルマの『ファントム・オブ・パラダイス』(1974)を思わせたり(80年代的ノーテンキさに溢れているのであんなに暗くはないが)、フランク・オズの『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』(1986)っぽいかな、とも。全体的にティム・バートンの『エド・ウッド』(1994)の80年代版みたいでもある。

『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』(1986) 出演:リック・モラニスティーヴ・マーティン ビル・マーレイ
www.youtube.com

マイク・ジトロフ監督のその後の作品については寡聞にして知らないし、今も映画監督やってるのかどうかもわからないけれど、この一作で映画史の一部に名前を残したことはたしかなわけで。

どうやら日本ではDVD化はされていないようなのでなかなか気軽に観ることはできないけど(そんな無理してがんばって観るほどの作品でもないし)、もしヴィデオデッキを持っていてどこかでこの映画のVHSを見かけたら、手にとって一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。


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