映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』


※以下は、2011年のBSプレミアムでの放映時に書いた感想です。


スティーヴン・スピルバーグ監督、ハリソン・フォード主演の『インディ・ジョーンズ魔宮の伝説』。1984年作品。

インディ・ジョーンズ」シリーズ第2弾。

第57回アカデミー賞視覚効果賞受賞。

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1935年。上海でギャング相手にダイヤと清朝初代皇帝ヌルハチの骨を交換する取引が決裂したインディは、助手の少年ショート・ラウンド(キー・ホイ・クァン)とクラブ歌手のウィリー(ケイト・キャプショー)とともに飛行機で脱出するが墜落、インドの小さな村にたどりつく。村人たちは子どもたちをさらわれて悲しみに暮れ、秘石「サンカラ・ストーン」がうばわれたために村は飢饉に苦しめられていた。


ネタバレは特にないです。

スピルバーグの残酷趣味が炸裂して「シリーズ中もっとも悪趣味で中身が無い」などといわれる一方で、「じつは一番好き」という人もけっこういるかくれた人気作でもある。

人気があるのもわかる気はする。

なにしろ特撮大好き少年には楽しい場面がいっぱいだから。

まだデジタル合成が普及する以前の作品なので、爆発する飛行機、パンコット宮殿の外観や洞窟、大量の水がインディたちに襲いかかる場面などもすべてオプチカルプリンターによる光学合成。

有名なトロッコチェイスシーンではミニチュアとストップモーション(コマ撮り)による特撮が使われている。

溶岩の熱で燃え上がる人間のシーンもミニチュア撮影。

中国人ギャングのボス役のロイ・チャオは、ブルース・リーの『燃えよドラゴン』の冒頭に出てくる少林寺の高僧役やジャッキー・チェンの映画の悪役などでおなじみの人。残念ながら1999年に亡くなっている。


また、その息子役のリック・ヤングは『ラストエンペラー』(感想はこちら)や『トランスポーター』などハリウッド映画の悪役や憎まれ役が多いが、『ドラゴン/ブルース・リー物語』(感想はこちら)でのブルースの父親など善良な人の役もある。

ショート・ラウンドを演じるキー・ホイ・クァンはこの映画の翌年、スピルバーグが製作総指揮をつとめる『グーニーズ』で発明好きの少年データを演じている。

グーニーズ』(1985) 監督:リチャード・ドナー 主演:ショーン・アスティン
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成長した姿をなにかの映像で観たおぼえがあるけど、最近は裏方の仕事をしているらしい。

ウィリー役のケイト・キャプショーは、僕はこの作品とリドリー・スコット監督の『ブラック・レイン』(感想はこちら)でヘタックソな日本語をしゃべる女性を演じていたのを見たぐらいだけど、現在はもっぱらスピルバーグ夫人として知られる。

この映画が公開された1984年といえば冬休みに『ゴーストバスターズ』や『グレムリン』『ゴジラ』(感想はこちら)という「3G映画」が公開された年でもあって、それらはよくおぼえてるのにこの映画のことは記憶にない。

もしかしたら、当時僕はまだインディ・ジョーンズのシリーズ自体を知らなかったのかもしれない。

この映画は後年、友だちが録画した「金曜ロードショー」放映版を観たのが最初。

その後、何度もこのヴァージョンをTVで観ている。

このTV放映の日本語吹替版についてちょっと書いておきます。

インディの声はおなじみ村井国夫

ショート・ラウンド役は田中真弓。ソフト版は野沢雅子でさすが大ヴェテランだけあって彼女も達者な声の演技なんだけど、僕はやはり田中さんのヴァージョンが一番しっくりくる。

ウィリー役は藤田淑子


一休さんやキテレツ役など少年役の印象が強いけど(TV放映版『グーニーズ』の主人公マイキー役も彼女である)、大人の女性役も多い。

ウィリーはしょっちゅう悲鳴をあげて騒いでる基本ウザキャラなんだけど(インディにも「騒々しい女だ」といわれる)、藤田さんが声をアテるとユーモアと可愛らしさが加味されてなかなか憎めないキャラクターになる。
藤田淑子さんのご冥福をお祈りいたします。18.12.28

インディとショーティ、ウィリーたちの掛け合いは、字幕版よりもこの吹替版の方が絶妙なおかしみがあっていっそう愉しめる。

今回の字幕版では、最後にキスしようとしてるインディとウィリーに水をかけたあとのショーティの台詞は原語に忠実な「笑える」のくりかえしだったけど、吹き替えでは最後に「頭を冷やしな」の一言。意訳が粋なのだ。

悪役のモラ・ラムの声は石田太郎。今回の役の台詞は少ないが、石田さんも悪役ではけっこうおなじみ(『ルパン三世カリオストロの城』のカリオストロ伯爵役など)。


さて、ひさしぶりに観て、なんというのだろうか、意外なことに思ってたほどワクワクしなかった。

たしかにいままでクドいぐらいくりかえし観てるからというのもあるけど、昔はスゴいと思った特撮場面がいま観るとそれほどには感じられなかったというのもある。

目が肥えてしまったのだ。

いまの技術ならば、あれらの特撮アクションはもっとリアルに描くことができる。

これは前作『レイダース』がいま観ても気持ちがイイのとは対照的な感覚だった。

つまり、ストーリーテリングでワクワクさせてくれた『レイダース』の面白さは僕にとっては普遍的だが、『魔宮の伝説』の面白さは特撮の目新しさにかなりを負っていたということ。

技術が進歩すればその魅力は半減してしまう。

インディといえば1作品のなかで世界各国を旅するのが恒例だが、この作品では映画がはじまって20分ほどで上海からインドに移動してからは、インディたちはパンコット宮殿内の洞窟で右往左往しているだけである。

ハッキリいってお話など無いに等しい。

もちろん、そうはいってもCGではないアナログ特撮には味があるし、特にトロッコのシーンの妙なオモチャっぽさはミニチュア撮影ならではの心地よさがある。

おなじことをCGでやっても、おそらくたいして面白くはないと思う。

ロッコのシークエンスはさまざまなメディアに影響をあたえたので(ゲームとか)、そのアイディアの素晴らしさこそ讃えられるべきだろう。

あの当時の特撮映画をいま観ても楽しいのは、それらがコンピューターのなかで描かれた「絵」ではなくて(もちろん“マットペイント”も多く使われているが、それは“現実に”描かれた絵だ)、実際に撮影現場に存在してスタッフの手作業によって作られたものだからだ。


CGでそれなりに見られるものを作るのは大変だが、ストップモーション・アニメキャメラと人形があれば素人にだって真似事ができる(もちろんその出来は商業映画とはくらべものにならないが)。

子ども心に、プラモデルや超合金のオモチャを使ってがんばれば自分にも作れそうな気がした。

そういう「実体感」が、あの時代の特撮映画をいまなお魅力的なものにしているのだ。

この映画のファンが多いのも、そういった理由からだろう。

もうひとつ、僕はそれほど好みではないのだけれど、「グロ好き」な人にとっては80年代というのはホラー映画の全盛期だったといえて、この「インディ・ジョーンズ」シリーズにもその影響は見てとれる。

というか、監督のスピルバーグ自身が『ジョーズ』や『ポルターガイスト』(製作)などでこの手のブームを牽引してきた人物なのだから。

『魔宮の伝説』では、おもにパンコット宮殿の晩餐会でのゲテモノ料理の場面と“虫関係”でその「残酷趣味」を発揮している。


この映画は撮影当時、「インドの人々とその宗教に対する偏見、差別意識が見られる」として舞台となるインド政府から撮影を拒否られている(撮影はスリランカで行なわれた)。

まぁ、完成作品を観ればその気持ちも理解はできる。

日本人がなんでもかんでも生で食う、なにかといえば日本刀で切腹したり人の首を刎ねるようなわけのわからない野蛮人として描かれたハリウッド映画が僕らにとって不快なのとおなじことだ。

ハリウッドで昔から作られてきた「秘境冒険映画」というのは、白人の主人公に対して、舞台となる国の現地人を「土人」として描くことで成り立ってきた。

このシリーズもその伝統(?)にのっとっている。

大蛇の腹に詰められたウナギにカブト虫の内臓、目玉入りのスープや猿の脳ミソのシャーベット。

そんな料理が実際にインドにあるのかどうかは知らないけど、ともかく観客を気持ち悪がらせることができればなんだっていいのだ。

ハリウッド映画における「外国」というのは、観客の目を楽しませてくれるエキゾティックでときに残酷、野蛮な世界である。

『魔宮〜』もまた、「秘境!インドの山奥に邪教集団を見た!!秘石サンカラ・ストーンの謎を追え!!!」と水曜スペシャルみたいなタイトルが出てきそうな雰囲気。

川口浩探検隊」でおなじみ水曜スペシャルもこの「インディ・ジョーンズ」シリーズも、もとは60年代のグアルティエロ・ヤコペッティによる『世界残酷物語』に端を発する「モンド映画」(起源は50年代の観光映画にさかのぼる)の影響をうけている。

基本的には“西洋人”から見た東洋やアフリカ、白人以外の有色人種に対する優越感とまさしく差別意識によって、ときには捏造された「異民族の奇習」を見世物的に描く。

現在ではポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)的におおいに問題がありそうなそういった残酷ドキュメンタリー(その多くがヤラセ)を観て育った世代にとっては、このいかがわしくもカオスな世界というのはどこか心のふるさととでもいえる存在であったりする。

『魔宮の伝説』が好きという人は、あるいはこのいかがわしさに惹かれているのかもしれない。


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