映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

「午前十時の映画祭」で「マトリックス」三部作


ラリー&アンディ・ウォシャウスキー監督、キアヌ・リーヴスキャリー=アン・モスローレンス・フィッシュバーンほか出演の『マトリックス』(1999) 『マトリックス リローデッド』(2003) 『マトリックス レボリューションズ』(2003) (いずれも4Kマスター版)を「午前十時の映画祭12」で鑑賞。

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マトリックス」三部作は1999年に初公開された1作目からすべて劇場初公開時に観ていますが、1作目は2019年に4DX版を、また去年の12月に4作目『マトリックス レザレクションズ』が公開される前の週にIMAXで上映されたのをあらためて観ました。

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1作目の感想はすでにもう一つのブログに書いているので、こちらでは主に2作目『リローデッド』と3作目の『レボリューションズ』について触れます。

シリーズのネタバレがありますのでご注意ください。

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2003年公開の2作目と3作目は1作目と同様にTV放映やDVDなどで何度も観ていますが、劇場で観るのは初公開以来19年ぶりで、特に2作目『リローデッド』は増殖したスミス(ヒューゴ・ウィーヴィング)やメロヴィンジアン(ランベール・ウィルソン)の手下たちとの戦いが実にスクリーン映えするので、ぜひともこの機会を逃したくなかった。


無印の1作目がそれだけで1本の作品として完結しているということは以前書いた感想の中でも述べましたが、三部作(+4作目)の中で主にアクション面で個人的に一番のお気に入りは2作目『リローデッド』なんですよね。

この作品のみの出演である悪役キャラ“ザ・ツインズ”(ニール&エイドリアン・レイメント)もかっこよかったし、ドン・デイヴィスによる劇中曲も絶好調でアクション場面を大いに盛り上げてくれる。

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スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』(感想はこちら)に出演していた、トリニティ役のキャリー=アン・モスのバイクスタントを担当したデビー・エヴァンスの雄姿もしっかり確認。


マトリックス」シリーズには皆さんいろいろと思い入れがおありだろうし、好きな作品や場面、キャラクターもさまざまだろうけど、僕が『リローデッド』を面白いと思ったのは、これが「ヒーロー物」とか「アクション物」をメタ視点で描いたものだったから。


主人公たちに助力するが途中で命を落とす“キー・メイカー”(ランドール・ダク・キム)は、ネオ(キアヌ・リーヴス)に「我々には役割がある」と語る。味方にも、そして悪役にも役割があり、そこにいる理由がある。

フィクションの登場人物たちについて語っているんですよね。

コンピューターの中のプログラムだった預言者〈オラクル〉(グロリア・フォスター)やその守護者セラフ(コリン・チョウ)、メロヴィンジアンとその妻パーセフォニー(モニカ・ベルッチ)、彼の手下たち。


でも彼らは見た目は人間そっくりだから(演じてるのは生身の役者たちだし)、メロヴィンジアンやキー・メイカーたちによる「役割」とか「因果律」についてのゴタクは、まるで私たち人間について語られているようでもある。

マトリックス」という仮想の空間で繰り広げられる、“フィクション”についての問答。

いくらでも深読みできるし、自分たちに引き寄せて意味付けを行なうことができる。

ラクルの言葉が聞く人によって如何様にも解釈できるように。

クンフーや銃撃戦を描いたアクション映画で、そういう想像力が刺激される設定が施されていることに僕はとても面白味を感じたのです。

残念ながら、3作目の『レボリューションズ』ではマトリックス内でのアクションは大幅に減って、映画の上映時間の多くはザイオンに残った人類とそれを殲滅しようとする機械軍との戦いのシーンに費やされる。

正直、この「現実の場面」は僕はあまり面白いと思えなくて、今回久しぶりに観て『リローデッド』や『レボリューションズ』でのザイオンの描写の多くを忘れていたことに気づいた。前作ではせっかく生き残ったはずだったタンクは、演じた男優さん(マーカス・チョン)が続篇のギャラのことで揉めたとかで『リローデッド』『レボリューションズ』には出てこなくて、代わりに新キャラとして登場したリンク(ハロルド・ペリノー・Jr.)が妻のジー(ノーナ・ゲイ)だったかその兄のドーザーの妻カズ(ジーナ・トーレス)との会話の中だったかで、タンクは死んだみたいなことを言ってた。

この辺の登場人物たちの関係がゴチャゴチャしてるわりには物語の本筋には絡まないので、観ていてほんとに退屈だった。ザイオン関連の場面の退屈さは『レザレクションズ』でもまったく改善されてなかった。

ナイオビ役のジェイダ・ピンケット・スミスは結局『レザレクションズ』でも同役を演じて、全4作品中3作出演というメインキャラクターの一人になりましたが、夫のウィル・スミスが今年のアカデミー賞授賞式でやらかしたもんだから、つまらないことで話題になっちゃいましたね。お気の毒様でした。

まるでジェダイ評議会みたいなザイオンのあの評議会の爺さん婆さんたちの存在もよくわかんなかったしなぁ。サイババみたいなおっさんがモーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)に「ただ従えばいい」とか言ってて、あいつなんだったの?

ジーやチャラ(レイチェル・ブラックマン)がセンティネルズと戦う場面は演者たちは頑張ってたと思うし、監督たちも力を込めて描いたのは伝わるんだけど、でもこのシリーズで強く印象に残っていたり面白かったシーンって、ほぼすべて「マトリックスの中」での場面なんだよな。メカゲソ軍団との戦いとか全然興味なくて。

だいたい、戦闘用なのに前方がガラ空きで敵が大量に突っ込んできたらやられちゃうあのロボノイド…じゃなくてAPUって、兵器としては役立たずにもほどがあるんじゃないだろうか。


ミフネ船長も「ノー、ノーー!!」とか叫びまくってんじゃなくて、乗組員の前に鉄板や金網でも貼り付けろよ。いくらなんでも無防備過ぎるだろ。

なんか、あの現実の世界のザイオンの住民たちの戦いにまったくノれなかった。

世間的にも『レボリューションズ』が三部作の中では一番評価が低いのは、前半でのメロヴィンジアンのSMクラブに殴り込むとことネオが雨の中で大勢のスミスたちに見つめられながら戦うクライマックスぐらいしか見どころがなかったからでしょう。


未来の現実世界でやってることが、まるでその後作られた『ターミネーター4』(感想はこちら)みたいで新鮮味がゼロだったんだよなぁ。「マトリックス」シリーズって、人類と機械軍の戦いという設定を「ターミネーター」シリーズから頂いてるわけだけど、その「ターミネーター」が今度は「マトリックス」からいろいろパクってるというループ感がスゴい。

だけど観客が見たいのはそういうんじゃなくて「マトリックスの中」でのスタイリッシュな戦いだったんだよな。軍隊ゴッコみたいなんじゃなくて。

「今夜!」を連呼するモーフィアスの演説とか、サムくてしょうがなかった。

人類側が使ってる兵器とか乗り物、ザイオンそのものを管理するためには彼らはコンピューターを使ってるはずで、機械と戦うために機械を使ってる、というのがほんとに意味がわかんないんですよね。これは一体何を描いているんだ、と。

アニメ作品の『アニマトリックス』では人類VS機械、というのを差別との戦いのメタファーみたいに描いていたけど、そんなの手塚治虫がとっくの昔にやってることだし、そもそもロボットをマイノリティや弱者の譬えとして描くこと自体、僕は抵抗があるんですよね。譬えとして適当じゃないなぁ、と。

1作目では「機械軍」というのはあくまでも社会の抑圧者の譬えだった。1作目の物語が今も色褪せないのは、物事に疑問を持ち、納得いかないことには抗うこと、一方的に「従え」と命じてくる者たちから自由になることの大切さを訴えていたからだ。

それが3作目では人類と機械が「手打ち」する、というなんだかよくわかんない締め方をしていた。だから観終わってポカーンとしながら劇場から出てくるしかなかった。

ラクル役のグロリア・フォスターが『リローデッド』の撮影後に亡くなってしまったので『レボリューションズ』では別の女優さん(メアリー・アリス)が演じたんだけど、そのことに劇中でいちいち理由付けをしているところが現実とフィクションが融合しているような感じがして、そこんところは面白かったですが。

メロヴィンジアンに命じられて現実とマトリックスの間をプログラムたちに行き来させているトレインマンブルース・スペンス)から逃れてオラクルと行動をともにする少女サティー(タンヴィール・K・アトワル)は、続く『レザレクションズ』では成長してプリヤンカー・チョープラーに。プログラムなのに(笑) まぁ、ネオやトリニティもマトリックス内では年を取っていたからおかしくはないのだろうけれど。

機械の親玉と話し合ったらわかり合えた、みたいな結末はコロナ禍の今観ると本当にのどかな発想で、僕たちは映画で描かれた世界よりももっと苛酷な世界で生きていることを痛感する。だってウイルスには言葉は通じないし、親玉が攻撃を止めたらすべての攻撃が止むなんてこともない。

まぁ、環境破壊による異常気象とか、コロナ以外の脅威も山ほどありますし。お話がまったく通じないどっかの国の元首とかね。

「多様性」などという言葉が頻繁に使われるようになる前から、クンフーとかインドっぽい要素などいろんなものを取り込むことでこのシリーズは面白さを保ってきたわけだけど、そして4作目が公開された翌年にこうやって旧三部作を上映してくれたことはとても感謝してますが、『レザレクションズ』に満足できなかったように、なんとなく「マトリックス」という“コンテンツ”に「賞味期限切れ」の匂いも嗅ぎ取ることになったのでした。

やっぱり、そろそろあのシリーズを超えるような新たな作品が生み出されなければならない頃だよなぁ。


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