相変わらず毎朝(夜も)連続テレビ小説「とと姉ちゃん」を観ているわけですが。
放送が始まって二ヵ月半が過ぎて、そろそろかなりヤバいことになってるので、記録のつもりで。
といっても膨大な量のエピソードを一話ずつ丁寧に語るような余裕はないので、超高速でざっくりした印象、感想です。一応ストーリーのネタバレもありますから、まだご覧になっていないかたはご注意を。
で、何がヤバいって、シナリオが。…大丈夫か?これ、って。
前回この番組についての記事を書いたのは、ヒロインの常子たち小橋一家が深川にある母・君子の実家、青柳商店に身を寄せるが、常子を店の跡取りの嫁にしようと考えた祖母・滝子と意見が対立し、実家のすぐ隣の仕出し弁当屋「森田屋」に居候することになった、というところでした。
その時点ではまだ森田屋の人々がそれぞれどんなキャラクターなのかもわかっていなかったし、もちろんその後の展開も知らなかったんで、よしよし、これから盛り上がっていくぞ、と期待が高まっていたんですが、結論から言うと、このあとからドラマにどんどんツッコミどころが増えてきたのだった。
それまでは好意的な感想が多かったTwitterでの呟きも、ストーリーや登場人物たちの言動への疑問、あるいは憤慨に満ちたものが見られるようになっていく。
このドラマの最大の問題点は、ヒロインに降りかかる災難や事件が彼女の行動によってちゃんと解決せずに、毎回うやむやなまま話が先に進んでいってしまうこと。
転校先の学校で常子に意地悪をした同級生たちは結局最後まで彼女に謝罪もせず、劇中で断罪もされない。気づいたら出てこなくなる。
森田屋にしても、常子たちに対してやたらと横柄だったピエール瀧演じる大将の宗吉はいつの間にか小橋一家の味方になっているが、なぜ彼の態度が変わったのかよくわからない。わからないままなんとなく次の話になる。こういう展開がずっと続く。
「葉っぱのにいちゃん」に出会ったり、学校を卒業して歯磨き粉を作って売ろうとして失敗したりいろいろあったのちにようやくタイピストの職を得た常子だったが、やはり彼女が行くところで必ず苛めに遭う。
しかしあっという間に時が経ってそのことは別に解決しないまま、またしても常子はまわりの女性たちと打ち解けている。
ちゃんと結果が描かれないのだ、このドラマは。もう徹底して。
極めつきは、そんな常子が社内で仲のよかった同じタイピストの多田さんに騙されて、会社をクビになるくだり。
この会社の人間は女も男もほとんどが人として最低な奴らで、特に男どもは常子に自分の仕事を手伝わせておいて礼も言わずに邪険に扱ったり、パワハラ、モラハラ三昧のクズばかり。
そこでタイピストのリーダーである早乙女と先輩で少々頼りなさげな多田は例外的に常子に理解があるように見えていたが、その多田に彼女は裏切られる。
もうそのあたりの描写がテキトーにもほどがある。
これ、会社と多田さんが共謀して事件をでっち上げでもしないと成り立たない展開なんだよな。常子が男たちに因縁つけられるってなんでわかったんだ?と。“プロバビリティの犯罪”か? #とと姉ちゃん #とと姉ちゃん反省会
— ei-gataro (@chubow_deppoo) 2016年6月14日
思えばまだ舞台が浜松だった頃から、玉置三兄弟の件などで腑に落ちない展開はあった。
あの時はまだ見過ごしていたけど、すでに物語の綻びは始まっていたのだ。
そういえば似たような経緯をたどったドラマを以前観た記憶があるなぁ、と思ってたら、「花子とアン」だった。
あのドラマも始まった当初は評判が良く、かをる子様や蓮様や炭鉱王の伝ちゃんなど“キャラ萌え”の要素もあって、ツッコミどころは満載ではあったが途中まで“イヴェント”としては悪くない感じだったのが、中盤以降、次第に物語やヒロインの行動に無理や納得できないものを感じ始めたのだった。
それは他の視聴者のかたがたも同じだったようで、TwitterのTLにもだんだん揶揄や皮肉っぽい呟きを散見するようになった。
今回の「とと姉ちゃん」の迷走ぶりは、残念ながらそんな「花アン」をすでに超えている。
登場人物たちはいきなり出てこなくなったり(同級生で友人の綾*1や東堂先生*2など)、伏線らしきエピソードが尻切れトンボのまま放置されて忘れられたり。
自転車操業のようにとりあえず次から次へとエピソードを繋げていって新たなキャラクターを出すことで視聴者を飽きさせないようにしようという試みは、雑な人物描写と性悪説に基づく不快なストーリー展開によってまったく効果を上げておらず、「#とと姉ちゃん反省会」というタグには連日のようにストーリーの破綻、登場人物たちの行動への批判が書き込まれるように。
って、僕も書き込んでる中の一人ですが。
朝ドラの前々作「まれ」は途中でリタイアした旨を書きましたが、今回は一応、昭和の時代が描かれているために最後まで観ようとは思ってるものの、ほんとここんとこアタマにくる展開がず~っと続いてるんでストレスが溜まっちゃって。
ヒロインがヒドい目に遭わされて、毎度のように各エピソードがちゃんと納得のいくように描ききられず中途半端なまま終わってしまうので、ちっともカタルシスを得られない。
なんで毎朝こんな不愉快なドラマを観てるんだろう、と虚無感に襲われたりも。
個人的にはすでにメインの視聴は、この前にアンコール放送されている「てるてる家族」の方に移ってしまった。上野樹里のマンボダンス見てるほうがよっぽど元気もらえるよ!
あちらを観たついでに新作の「とと姉ちゃん」を観てる感じ。
そのあとの「あさイチ」でいのっちがどんな反応見せるのか気になるからでもある。
新作の「花子とアン」がその前の「カーネーション」のオマケだったのと、もはや同じ。
これはとても残念なことだ。
期待していただけに、余計「裏切られた感」がハンパない。
「とと姉ちゃん」の視聴率は好調のようで、それは「花子とアン」もそうだったんですが、今回の場合は前作「あさが来た」の記録的な大ヒットの影響も大きいと思うし、今後予定されている唐沢寿明や及川光博の登場を心待ちにしている人たちによって支えられてもいるのでしょう。
これでもし彼らがたいした役じゃなかったら、お茶の間で暴動が起きるんじゃないか^_^;
ドラマの中ではまだ太平洋戦争も始まってないのに、すでにかなりきな臭い空気が。
果たしてこれから挽回してくれるんでしょうかねぇ。
このまま迷走・暴走しまくったまま取り返しのつかないことになるんじゃないかと(もうすでに結構取り返しつかなくなってますけど)心配しております。
このまま悪口言うためだけのドラマに成り下がってしまってはあまりにもったいない。
出演者たちが気の毒でしかたない。
たとえば通常、ドラマの「憎まれ役」って俳優としては“おいしい”はずだけど、このドラマで常子たちに酷い仕打ちをする人物たちにはそういう悪役ならではの魅力というのが皆無。ただただ腹立たしいばかりで、しかしそれは作品にのめり込んだ結果のキャラクターに対する怒りではなくて、あまりに杜撰なシナリオによる作り手たちの登場人物たちの軽視への怒りなんだよね。
伏線も何もないまま、思いつきみたいに登場人物たちの言動がコロコロと変わる。そしてほとんどは最悪の後味を残す。
だからそこで生じたストレスは最後まで解消されない。
「花アン」での失敗が別に主演の吉高由里子さんのせいではなかったのと同様に、「とと姉ちゃん」の迷走はけっして高畑充希さんのせいじゃない。すべてマズいシナリオ書いてる脚本家とマズい演出でヴェテランや旬の俳優たちから魅力ある演技を引き出し損ねているディレクターのせいだ(ディレクターは一人ではないが)。
特に脚本家のかたは寝ボケてないで、目を覚ましてちょっと気合い入れ直していただけないでしょうか。これではあまりに視聴者を舐めすぎてますよ。起・き・てっ。
でないと、あと三ヵ月半後にはこれは朝ドラ史上でもかなりタチの悪い失敗作という烙印を押されかねないでしょう。
まだ、大逆転を期待しています。
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