映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『ダーリンは外国人』


※以下は、2010年に書いた感想です。


宇恵和昭監督、井上真央主演の『ダーリンは外国人』。2010年作品。

www.youtube.com

漫画家を目指す“さおり”とアメリカ人のダーリン、トニーとのユーモラスな毎日を描く。

ネタバレあり。


小栗左多里の原作漫画が好きで続篇の「ダーリンの頭ン中」や「~with BABY」も読みました。

なのでその実写化作品ということで密かに楽しみにしてたんですが。

すみません、褒めません。

…う~ん、なんだろう、この入り込めなさは。

いつ面白くなるんだろう、と思いながら観てたら終わってしまった。

けっこう厳しいこと書きますが、残念ながら一本の映画としてはかなり拙いと言わざるを得ない。

だらしない音楽の使い方も、まるで英会話教室のCMみたいな外国人の出演者たちの演技も、「英語喋っただけでモテモテな白人」とか、一体いつの時代に撮られた映画なんだろう、と思った。

繰り返すけど、原作は好きなんです。

でも漫画では別に気にならなかった細かいことが、実写になるといちいち気になって。


たとえば主人公さおりの“ダーリン”ことトニーにどれだけ稼ぎがあるのか知らないけど、まだ漫画家にもなってないヒロインがよくあんな広い一軒家に住めるよな、とか。

それよりも決定的なのは、原作には常に漂っていたどこかすっとぼけたユーモアが映画にはあまり見られないこと。

井上真央演じるヒロインのさおりは頑張り屋さんなのはよくわかるんだけど、映画の作りと同様に生真面目過ぎて見てて疲れる。

漫画ン中の左多里さんはカレシにもっとがんがんツッコミ入れる「面白い人」ですよ。

トニーのつぶやく「抜かれるなら度肝がいいよね」だって、ほんとはもっと笑えるフレーズのはずなのに。


後半になってヒロインの家族に重大な出来事が起こってからは映画独自の展開になっていくのだけれど、でも互いの習慣や価値観の違いによる「外国人と結婚することの困難」は、実は映画の中では描かれていないんだよね。


父親に結婚を反対されたといっても(原作では別に“反対”はしていない)、具体的な理由はない。

ただ外国人だから、ってだけ。

もともとトニーは日本文化に理解があるわけだし、少なくとも映画の中では彼とヒロインの間にわだかまりが生じる余地なんか見当たらないんだけど。

洗い物や洗濯のやり方がマズいとか仕事中にやたら話しかけてきてウザい、なんてのは別に相手が外国人だからとか関係ないし。

深刻に悩むにはあまりに些細過ぎる。

別々の人間が一緒に暮らすこと、結婚するということは相手との違いを互いに受け入れること、といった(当たり前過ぎる)この映画のテーマは大竹しのぶが演じるヒロインの母親が娘に言う台詞に集約されてるんだけど、いろいろと劇的な要素を持ち込んで映画を盛り上げたいのなら、台詞でぜんぶ喋っちゃうんじゃなくてドラマの中で見せて欲しかった。

いつも何を考えているのかイマイチよくわからないトニーは、原作ではそのマイペースぶりやどこか浮世離れした天然キャラが生きるんだけど、一組の男女が紆余曲折を経て結婚するに至るこの映画で同じようにやったら、それは単なる描写不足でしょう。

特にプロポーズのくだり。あれはタイミング的にどうなんだろ。

さおりがわざわざ逢いに行ったからいいものの、行かなかったらどうする気だったんだか。

なんか感動的なエピソードみたいに描かれてるけど、劇中の彼の行動がことごとくいきあたりばったりに思えてどうも腑に落ちない。

原作では外国人と付き合ったり結婚することの難しさをシリアスに描くのではなくて、互いの考え方の違いやちょっとした衝突などを交えつつもトニーのユニークな性格や習慣、こだわりやその語学オタクぶりが笑いとともに綴られてます。

外国人はカキ氷をすばやく食っても頭がキ〜ンとならない、とか、トニーは日本語を喋るようになってから初めて肩こりになったとか(英語には“肩こり”に該当する単語が存在しない)、そういう他愛ない蘊蓄や日常の可笑しみがあの原作の魅力なわけで。

ようするに、本来もっと肩の力を抜いてユル~く余裕をもって描くべき題材なのです。*1

ほんとは「あたしンち」みたいにアニメにするのが一番だと思うんだけど、そこをあえて実写でやるんであっても、やっぱりウェットではなくて基本コミカル路線でいってもらいたかった。

前半のトニーの面白エピソードの羅列はとてもじゃないが巧くいってるとは言い難いんで、やっぱりそのあたりは監督のセンスが問題なんじゃないかと(生意気言ってスミマセンが)。

あ〜、また原作読み返したくなったなぁ。


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ダーリンの頭ン中 英語と語学

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ダーリンは外国人 with BABY

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*1:あと、映画の中に出てくる「“全然”のあとは“否定形”でなければならない」というトニーの主張については、昔の小説や漫画に「“全然”+“肯定形”」の表現もあって諸説ある(本物のトニー・ラズロ氏もゲスト講師で出演してたNHKの番組「みんなでニホンGO!」でも検証してました)。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%A8%E7%84%B6
http://www.nikkei.com/article/DGXBZO37057770W1A201C1000000/
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Soseki/3578/2003/zenzen.htm