映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『スターウォーズ エピソード6 ジェダイの復讐』


※以下は、2012年に書いた感想です。


ジョージ・ルーカス製作総指揮、リチャード・マーカンド監督、マーク・ハミルハリソン・フォードキャリー・フィッシャー出演の『スターウォーズ エピソード6 ジェダイの復讐』。
1983年作品。

第56回アカデミー賞視覚効果賞(特別業績賞)受賞。

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友人ハン・ソロハリソン・フォード)を邪悪な魔王ジャバ・ザ・ハットから救い出すため、ルーク・スカイウォーカーマーク・ハミル)は故郷のタトゥイーンに帰ってきた。同じ頃、帝国軍はかつて反乱同盟軍に破壊された要塞デス・スターをふたたび建造していた。この究極兵器を防御するシールド発生装置を破壊するために、ルークやハン・ソロたちは緑の衛星エンドアに降り立つ。


スターウォーズ」シリーズ完結篇。 *1

これは僕のスターウォーズ初体験作品で、初公開時に母に連れられて映画館で観ました。

だから最初に観たときは、多分これまでのあらすじもオビ=ワンやヨーダが誰なのかもよくわかってなかった。

ジェダイ”というのはあの黒い頭巾かぶった悪いおじいさん(銀河皇帝)のことだと思っていた。

それでもものすごく面白くてぜんぜん問題なかった。


さて、さっそく「ジェダイの復讐』じゃなくて『ジェダイの帰還』だろ!」とツッコミ入れてる人のために説明させていただくと、じつはこの作品の原題はもともと『REVENGE OF THE JEDI』だったのが、公開直前にジョージ・ルーカスが「ジェダイは復讐なんかしない!」といって突然現在の『RETURN OF THE JEDI』にタイトルを変更したんである。

タイトルに注目
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だったら最初からそう付けろよと思うが、どうやらこれはオモチャなど関連商品を映画の公開前にフライングして発売するメーカーをいぶり出すためだったらしい。

違うタイトルの商品を売ってるメーカーがあったら一目瞭然というわけ。

銀河皇帝並みの策略である。おそるべしルーカス。

前作『帝国の逆襲』(感想はこちら)で、ルークは引き止めるヨーダやオビ=ワンを振り切って友人たちを助けに向かうが、そのときふたりに「かならずもどります(I'll return.)」といっている。

だから『ジェダイの帰還』というタイトルは当初から考えていたものだろう。

ところがルーカス側から伝えられていたとおり「ジェダイの復讐」という邦題で準備していた日本側は劇場公開直前に急にそんなこといわれても代えられなくて、けっきょく日本でのタイトルは『ジェダイの復讐』のままになったということ(“復讐”の方がキャッチーだから残した、という話もあるがホントか?)。

だからこれは日本側のミスでも意訳でもなくて、ぜーんぶルーカスが悪いんである。


ファンのあいだでは長らく原題どおり『ジェダイの帰還』に代えてほしい、という要望があったが、2004年に『エピソード3』のタイトルが『シスの復讐』に決まり、それにともなってようやく『エピソード6』の邦題が正式に『ジェダイの帰還』に変更された。

また、この『ジェダイの帰還』というタイトルは、のちにピーター・ジャクソンによって映画化された「指輪物語(「ロード・オブ・ザ・リング」)」の最終章『王の帰還』からヒントを得てもいるのだろう。

冒険物語は、最後は主人公の「帰還」で終わるものなのだから。


…とまぁ、こんな経緯があったのです。

で、僕が映画館で観たときにはもちろんこの映画の邦題は『ジェダイの復讐』だったし、TVで放映される際も同様だった。

だからそれに準じているということです。

それに、僕が支持するのは97年の「特別篇」以降のいろいろと手が加えられたヴァージョンではなくて、あくまでも1983年の【オリジナル版】なので、これはやはり昔のままの『ジェダイの復讐』というタイトルこそふさわしいかと。

以下、ネタバレあり。


SW旧三部作の最後にふさわしく、物語<サーガ>は大団円をむかえる。

前半は1作目でルークが旅立ったタトゥイーンが舞台。

マツコ…いや、ジャバ・ザ・ハットの宮殿でのソロの救出劇が繰り広げられるが、ここでも「特別篇」ではジャバの手下たちのダンスシーンで踊り子たちやCGで描いたモンスターたちが追加され、音楽も差し替えられている。

しつこいが僕はオリジナル版の方が好きだ。

特別篇
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オリジナル版
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ソロの救出は失敗に終わり、ルークたちは処刑されることに。

しかしあわやというところでR2の機転で形勢は逆転。

「チビ・ジェダイ、チビ・ジェダ~イ」と悦に入っていたジャバを怪力で絞め殺すレイア、凄腕のバウンティハンターだと思ってたらあっけなく砂漠の怪物サルラックのえじきになるボバ・フェット。


特にボバ・フェットの大活躍を期待していた人たちはおもいっきり肩すかしを食らったようでおあいにく様だけど、僕はこのスカし方はありだったと思う。

映画以外のメディアやのちの新三部作によってこのボバ・フェットはなんだかたいそうなキャラクターに祭り上げられてしまったが、そもそも彼は「マカロニウエスタン」に出てくる賞金稼ぎのような、やられ役の一人にすぎなかったわけで。

たしかにボバ・フェットがルークたちを相手に大立ち回りするところを観てみたかった気もするが、けっきょくは因縁のあるハン・ソロの一撃でやられちゃうとこが映画的にはいいオチになってたんではないかと。


こうして悪者たちを退治して、一行は無事全員そろって宇宙へ。

前作『帝国の逆襲』ではダース・ベイダーとルークの関係が判明したが、ではヨーダがいい残した「もうひとりのスカイウォーカー」の正体は誰なのか。

「銀河を舞台にした壮大な親子ゲンカ」といわれるように、SWは終わってみればスカイウォーカー家のお話だった。

悪い魔法使いはじつは主人公の父親で、これまでいっしょに戦ってきた王女は彼の双子の妹だった。

なんだそりゃ、と思った人もいるようだが、再三いってるように神話やおとぎ話のパターンにのっとれば、これはごく自然な展開だ。

これはある一族の物語であると同時に、ひとりの人間の成長の物語でもある。

ルークはベイダーや皇帝の誘惑に打ち勝って、闇にとらわれた父親を救う。

悪い魔法使いに変身させられていた父親は最後にもとにもどり、魂を救済されて死ぬ。

悪は滅んで銀河は平和と秩序を取りもどし、仲間たちとともに宴を囲む主人公を、いまでは霊体となった師や父が見守っている。


僕はこの作品は、数あるシリーズ物のなかでももっとも完成度の高い「完結篇」だと思っている。

前作『帝国の逆襲』が傑作といわれるのも、この『ジェダイの復讐』が最後をしっかりとシメたからだ。

この作品にケチをつけてる人たちがいるのも知っているけど、私見だがそれはこの映画の公開当時に中高生以上だった人が多い(あとはやはり成長してからこの映画をはじめて観たという人たち)。

彼らはどうやら「イウォーク族」と呼ばれるちっちゃなクマのヌイグルミみたいな生き物たちが帝国軍を翻弄して同盟軍を勝利にみちびくのが面白くなかったらしい。


いかにも子どもに媚びてるように感じられたのだろう。

背伸びしたい年頃の子たちには、イウォークは幼稚に見えたのだ。

ジェダイの騎士たちでもかなわなかった帝国軍に、なんでこんな原始的な小熊ちゃんたちが勝てるんだ、と。

ルーカスはもともとチューバッカ*2が属するウーキー族が同盟軍たちとともに戦うSW版『地獄の黙示録』(感想はこちら)のような話を考えていたらしい(このアイディアから『エピソード3』でのウーキーたちのバトルシーンが生まれたのだろう)。

でも、このどう考えても強そうには見えないイウォークたちが最後に勝利するからこそ大きな意味があるのだと思う。

身長2メートル以上の獰猛なウーキーたちが相手ならば、皇帝だってあそこまで油断しなかったはずだ。

それにイウォークたちがやったのは「シールド発生装置」の破壊であって、彼らが帝国軍を全滅させたわけではない。

それでも多くの犠牲を払った彼らの活躍によって、同盟軍はデス・スターの突破口を開くことができた。

彼らを指揮したのがハン・ソロチューバッカだったことも作戦成功の大きな要因だろう。

だから彼らの勝利は理にかなったもので、文句をいわれる筋合いはない。

『エピソード1 ファントム・メナス』で陽動に使われて通商連合のバトル・ドロイドたちに制圧されてしまったグンガンやジャー・ジャー・ビンクスたちとは、果たした役割がまったく違うのだ。

また、この映画では帝国軍との戦いのなかで仲間が命を落として悲しみに暮れるイウォークの様子がちゃんと描かれている。

彼らはただの子どもウケをねらったマスコットキャラではない。

それを理解せずに見た目の可愛らしさだけをあげつらってイウォークを忌み嫌ってるような奴らは、スターウォーズという作品をなにか別のものと勘違いしてるんだと思う。

スターウォーズ」は“小さき者たち”が活躍するシリーズだ。R2-D2しかり、ヨーダしかり。

これはかつてハン・ソロに「KID(坊や)」と呼ばれていたルークが、偉大なるジェダイの騎士に成長する物語なのだから。

そしてタイトルに「ウォーズ」とついていても、スターウォーズは戦争映画ではない。冒険活劇なのだ。

戦争ゴッコが観たいんならゲームでもやってればいい。

ちなみに、レイアと仲良くなるイウォークの子どもウィケット役のワーウィック・デイヴィスR2-D2の中に入っていたケニー・ベイカー*3とおなじく小人症の俳優で、SWのスピンオフ作品『イウォーク・アドベンチャー』や『エンドア 魔空の妖精』でおなじ役を、またロン・ハワード監督の『ウィロー』で主人公を演じたり、『ラビリンス 魔王の迷宮』や『エピソード1』、「ハリー・ポッター」シリーズなどにも出演している。*4


この作品では中盤からクライマックスにむけて、「ルークvsベイダー&皇帝」「ハン・ソロやチューバッカとイウォークたち」「ランド・カルリジアンの乗ったファルコン号と同盟軍」の3つのパートが替わるがわるクロスカッティングされる。

このあたりの展開はほんとうに見事で、それが最後のデス・スターの大爆発によってひとつに収束する。

またしても悪い例としてあげてしまうけれど、これと似たことを『エピソード1』でルーカスがやっているが、こちらは失敗している。

両者を観くらべてみれば、その違いはあきらかだ。

また、今回描かれるミレニアム・ファルコン号や同盟軍の戦闘機と帝国軍艦隊との戦闘場面は、やはりSFアドヴェンチャー映画のなかでも屈指の名場面となっている。

僕はいまだにこの映画のドッグファイトシーン以上に高揚させてくれる場面を知らない。

この『ジェダイの復讐』の特撮にはまだCGは使用されておらず、フィルムを何重にも合成して何百機もの戦闘機を映し出している。

現在にくらべればかなりの制約があった技術でここまで迫力のある特撮場面を作り上げたことにまず驚く。

それは技術的なことももちろんだが、場面を組み立ててストーリーボードを描き、実際に映像にしたスタッフのセンスと技量、そしてその映像にさらに迫力を加えた音楽の力だ。

そのどれが欠けてもこれだけのものはできなかったはず。


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前2作までは“帝国軍親衛隊長”にして“悪の権化”だったダース・ベイダーが、この『ジェダイ~』では妙に弱々しくなってしまったことに不満をおぼえる人もいる。

中盤で投降してきたルークとふたたび会ってからのベイダーは、これまでのまるで機械のような冷酷さをうしなって葛藤している。

『新たなる希望』の感想で「悪役が改心しちゃったら悪役としては失格」と書いたが、だとすればこの映画でのベイダーはまったくもって「悪役失格」である。

しかし、ではベイダーが最後にルークにライトセイバー首チョンパされるか斬り刻まれればよかったのか。

それでは物語は完結しない。

これは救済の物語でもある。

前作でベイダーがルークの父親であることがわかった時点で、ただの悪者だったベイダーはもっと血のかよった存在に変わったのだ。

通常の人間ドラマであれば、いままであれだけ人を殺しまくっておいて「私が間違っていた」で済むかよ、と思うところだが、これは「神話」であり、見方をかえれば「ひとりの人間の“誘惑からの勝利”、もしくは“失敗からの復活”」を描いたものともいえる。

ルークとベイダーはふたりでひとりでもある。

だからルークは父を救い、よみがえった父は皇帝を奈落へ投げ落として息子を救う。


たしかにベイダーの中身の父親が年寄りすぎるきらいはある。

1作目で元師匠のオビ=ワンを老人呼ばわりしといて、あんたもじゅうぶん爺さんやないかい!って感じだ。

多分、この老人というのは、撮影当時のルーカスにとっての父親像だったんじゃないだろうか。僕にはそんなふうに思えるのだけれど(演じていたセバスチャン・ショウは当時70代だったから、ルークとは親子というよりどう見ても祖父と孫だ)。


ダース・ベイダーの中の人、デヴィッド・プラウズ。この人ぐらい精悍な感じだったらよかったのにな。


父を荼毘に付し、ともに戦った仲間たちのもとにもどるルーク。

ジェダイは復活し、帰ってきた。

勝利の凱歌とともにサーガは幕を下ろす。


ところで、ラストのイウォークたちが踊るエンディングだが、信じられないことに「特別篇」では音楽が丸々差し替えられている。

また、プリクエル(前日譚)三部作に登場する星の風景などの新撮ショットが加えられて、ルークたちを見守るヨーダとオビ=ワンとならんで立っているルークの父アナキン・スカイウォーカーが、これまたオリジナル版のセバスチャン・ショウから「エピソード2&3」でアナキンを演じたヘイデン・クリステンセンに差し替えられている。*5

特別篇
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若きダース・ベイダーを演じたクリステンセンは旧三部作にはまったく出てこないのだから、ルークにしてみれば(そして旧三部作だけ観た観客にとっても)「…誰?」って感じである。


最悪だ。

特にこの場面のオリジナル版の音楽はよほどルーカスのお気に召さなかったのか、いかなるサントラCDにも入っていない。*6

僕はあの合唱が大好きだったので、「特別篇」でそれがまるっと別の曲に差し替えられているのに気づいて劇場で愕然とした。

この曲“Yub Nub”は、いまでは単品で販売されたオリジナル版のDVDでしか聴くことができない。

オリジナル版
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嗚呼、ルーカス皇帝をもち上げておもいっきり穴ん中に叩き込んでやりたい。

かつて銀河を混沌から救ったはずの英雄は、いまや“皇帝”として君臨している。

まるでローマ帝国を地でいくような話だが、いつか誰かがこの男を倒さねばなるまい。

懐古厨だのオヤヂだのと罵られようと、僕にとっての「スターウォーズ」はあくまでも初公開当時に観た【オリジナル版】のことだ。

これはもう、どんなにウザがられようが、これからも口をすっぱくしていいつづけていこうと思う。


以上は2012年に書いた感想です。

その後、ジョージ・ルーカスルーカスフィルムをディズニーに売却。

シリーズ最新作『エピソード7』(監督:J・J・エイブラムス)は2015年公開予定。

銀河帝国はあらたな胎動をはじめた。


はるか銀河のかなたの物語は、こうして語り継がれる。

いついかなるときも、フォースとともにあらんことを。


レイア姫役のキャリー・フィッシャーさんのご冥福をお祈りいたします。16.12.27

ダース・ベイダー役のデヴィッド・プラウズさんのご冥福をお祈りいたします。20.11.28


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*1:その後、続篇が作られることになったのはご存知のとおり。

*2:チューバッカ役のピーター・メイヒューさんのご冥福をお祈りいたします。19.4.30

*3:ケニー・ベイカーさんのご冥福をお祈りいたします。16.08.13

*4:彼は2015年公開のSW最新作『エピソード7 フォースの覚醒』にも出演する。

*5:アナキンの顔の差し替えは「特別篇」のDVD化以降のヴァージョンから。97年の劇場公開時およびVHS版では(その時点ではまだ『エピソード1』も作られていなかったため)オリジナル版どおりだった。『帝国の逆襲』での皇帝の顔の差し替えも同様。

*6:正確には83年にLP化されて91年発売のCDにも「イウォーク・セレブレイションとフィナーレ」として収録されているが、映画本篇よりもイウォークたちの歌声が強調されていて印象がかなり違う。オリジナル音源なのかアレンジver.なのかわからないが、「俺が聴きたいのはこれじゃない感」がハンパない。2004年に発売された2枚組CDでは「特別篇」用の新曲「勝利のセレブレーション」に差し替えられている。