
久しぶりの「午前十時の映画祭16」でピーター・ハイアムズ監督、ジェームズ・ブローリン、エリオット・グールド、ブレンダ・ヴァッカロ、ハル・ホルブルックほか出演の『カプリコン・1』を鑑賞。1977年作品。アメリカ公開は78年。
有人火星探査用の宇宙船カプリコン1号の発射直前に拉致同然で連れ出された3人の宇宙飛行士たちは、荒野の中にある廃棄された基地で火星着陸の捏造映像を撮るよう強要される。宇宙船は担当した会社のせいで生命維持装置が正常に作動しないことがわかっていた。
ピーター・ハイアムズ監督の映画はジャン=クロード・ヴァン・ダム主演の『タイムコップ』(1994) と、『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』(感想はこちら)と併映だったジーン・ハックマン主演の『カナディアン・エクスプレス』(1990) をリアルタイムで劇場で観ています。
『2001年宇宙の旅』(感想はこちら)の続篇の『2010年』(1984年作品。日本公開85年)はTVで観ました。
いかにも職人監督といった印象だし、これまで特に注目したこともなかったけど、ショーン・コネリー主演の『アウトランド』(1981) やこの『カプリコン・1』は一部の映画ファンに高く評価もされているし、僕もタイトルは知っていた。
『カプリコン・1』は以前BSでやってたのを観たような気がしていたんだけど、実際に今回観てみたらまったく覚えていなかったんで、もしかしたらちゃんと観るのは初めてなのかも。
まず、この映画のタイトルから連想したのは何年か前に観たスカーレット・ヨハンソン、チャニング・テイタム主演の『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』(感想はこちら)なんですが、あの映画はアポロ11号の月面着陸の捏造説をもとにしたお話だったんでこの『カプリコン・1』が思い浮かんだし、だからてっきり『カプリコン・1』って『フライ・ミー~』同様に火星着陸の模様を偽装して放送する人々のお話だと思っていたんですよね。

そしたら、火星への着陸や船外活動のくだりは前半でわりとあっさり描かれて、人々がそれを信じたまま本物の宇宙船は地球への帰還を迎えるんで驚いた。
そして、あとは着水するだけとなった時点で本物の宇宙船が大気圏で燃え尽きてしまったため、さすがにこれ以上隠せなくなって宇宙飛行士たちは死んだことにされてしまう。
…あぁ、そういうお話だったんだ、と。
そんなわけで、ほとんど初見のような感じでの鑑賞でしたが、70年代的な匂いがなかなか濃厚で(よく知りもせずに言ってますが)よかった。
放送記者のコールフィールドを演じるエリオット・グールドの顔つきや髪型、街の風俗など、僕が幼い頃に目にしていたアメリカ映画っぽさがあった。
カレン・ブラックも最初にちょっとだけ出てくるけど、出番はあれだけかと思っていたら最後にも都合よく助っ人的に現われました。「私を襲うつもり?」とか、しつこくお誘いモードなところなんてほんと70年代っぽい。

コールフィールドの車が何者かによって細工されてブレーキが利かなくなる場面は自動車のバンパーの下にキャメラを取り付けて撮ったらしいけど、迫力あってハラハラさせられる一方で、キャメラの視点でしばらく映し出されるのがまるで『裸の銃を持つ男』のオープニングみたいでちょっと可笑しかった。O・J・シンプソンも出てますし(笑)
彼が離陸寸前の飛行機のハッチを必死で閉めようとする場面では、思いっきり痛い目に遭うのを期待してしまったw 炎天下で飲み水がなくなり錯乱して、あっという間に捕まっちゃったのが残念。
サム・ウォーターストン演じる宇宙飛行士の1人が命懸けで崖を登りきると追っ手の2機のヘリコプターが停まって待っている絶望感溢れる場面は、あの頃の終末を描いたバッドエンドな作品群を思わせる。
ジェームズ・ブローリン演じるブルーベイカーは大佐で、アメリカの宇宙飛行士は軍関係者が多いんだけど、だからこそ飛行機やヘリを操縦できたり、アクション映画としてなんとなくさまになってる感じはある。
映画の中盤以降は、隔離されて火星着陸の捏造に協力したものの、宇宙船が消息を絶ったことを知り身の危険を感じた3人の宇宙飛行士たちの逃亡劇になる。
アクション物かと思っていると、まるで「川口浩探検隊」みたいにヘビやサソリが出てきたりして(^o^) ヘビ食べちゃうし。
ジェリー・ゴールドスミスの不安感を煽るような音楽がまたどこか懐かしくもある。
陰謀劇もあれば実際に複葉機の翼につかまりながらのスタントシーンもあったりして、サーヴィス精神旺盛で、簡単にジャンル分けできない面白さがある。
70年代的なパニック映画の名残りと80年代に向かっているノーテンキさの両方があって。
お客さんは結構入ってました。人気作なのがうかがえる。中高年が多かったけど、そこまでお年寄りばかりではなくて意外と若めの人もいました。
やはり有名な作品だからでしょうかね。
冒頭のクレジットで出演者としてテリー・サヴァラスの名前があったんでどこに出てくるんだろうと思っていたら、かなり終盤になってこれまた助っ人として飛行機乗り役で唐突に出てくる。
赤い複葉機でコールフィールドを乗せてブルーベイカーを捜すんだけど、これ観てあらためて『紅の豚』(感想はこちら)の主人公ポルコ・ロッソのモデルの一人はテリー・サヴァラスだと確信しましたね(^o^)

主演のジェームズ・ブローリンは“サノス”でおなじみジョシュ・ブローリンのお父さんですが、確かに面影はあるけど正直親父さんの方が男前だな。それからクリスチャン・ベイルによく似ている。



ちょっと前にもジェームズ・ブローリン主演の『ジャグラー ニューヨーク25時』が再上映されていて、あちらも映画好きの人たちの間で評価が高い作品だけど、残念ながら僕は観られず。またいつか機会があったら。
宇宙飛行士たちを陥れるケラウェイ博士役のハル・ホルブルックは『ダーティハリー2』の主任役や『大統領の陰謀』(感想はこちら)のディープ・スロート役など、何かを企んでる人物をあの当時はよく演じてましたね。出てくるだけで怪しくていい。

ブレンダ・ヴァッカロは1984年の『スーパーガール』ではフェイ・ダナウェイ演じる悪役の仲間を演じていたけど、この映画では気丈な妻役(ハスキーヴォイスは変わらずだったが)で、最後は彼女と生きて戻ってきた夫との再会で映画は幕を閉じる。

出演者の中でも一番の驚きだったのが、副大統領(ジェームズ・カレン)にも憎まれ口を叩く態度のデカいお偉いさんを演じていたのが、僕が子どもの頃に映画館で観た『サンタクロース』でサンタを演じていたデヴィッド・ハドルストンだったこと。


全然気づかなかった、ってゆーか気づけるわけがない(;^_^A
映画の中では人類はすでに木星にも火星にも降り立っているけど、現実の世界ではそのどちらもまだ達成されていない。でももうずっと昔に済んでたことみたいに錯覚する。
火星や木星に行くことはそんなに重要だろうか。地上の多くの問題よりも?クリストファー・ノーランならきっと「重要だ」と言うだろうけど。
「午前十時の~」の選定委員の笠井信輔さんは『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』を「コメディとして作ったのが失敗だった」と仰っていたけれど、僕はあの映画をコメディとしては中途半端だと感じていたので、むしろもっとお笑い寄りにしてほしかったぐらいで、それでもこの『カプリコン・1』でいくらでもコメディとして描ける題材を大真面目に描いたからこそ、アポロの月面着陸にまつわる陰謀論は多くの人たちにとってより説得力が増したように思えたんでしょうね。
自分たちの失敗を隠蔽するために宇宙船の着陸を捏造する、しかも本物の宇宙船が破壊されてしまったために乗組員を始末しようとする、という本末転倒にもほどがある展開はちょっと前なら笑い話になってたところを、現在のアメリカの状況を見ていたら「いや、あいつらならやりかねんな」と思えてきてしまうのが怖い(あ、僕は捏造説とか陰謀論とか一切信じてませんので、念のため)。
この映画は、ヴェトナム戦争やウォーターゲート事件などでアメリカの国民が政府に不信感を募らせていた当時の空気を反映しているのでしょうが、2020年代半ばの今だってただの荒唐無稽な絵空事だと一笑に付してもいられないんですよね。現実の世の中があまりにもデタラメだから。

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