
久しぶりに名古屋市美術館に行って「松本零士展 LEIJI MATSUMOTO EXHBITION 創作の旅路」(26.3/20~6/7)を観てきました。
2023年に亡くなられた漫画家・松本零士さんの初期の作品から晩年の活動まで、豊富な資料が展示されていて見応えありました。
実のところ、僕は松本さんが原作を描いたりアニメ化のために尽力してやがてライフワークの一つとなった「銀河鉄道999」を少年時代にTVで観ていた以外では彼の漫画をリアルタイムでは読んでいなくて、有名な「宇宙戦艦ヤマト」も「宇宙海賊キャプテン・ハーロック」もタイトルは知ってるし断片的に映像は観ていて主題歌も唄えるほどだけれど漫画版に触れたことはほぼないし、アニメさえちゃんと観ていなくて特に強い思い入れのある漫画家というわけではないんですよね。
せいぜい「999」の原作漫画を近所の図書館で借りてきたり古本で読んでた程度で。
そういえば、小学生の頃に近所で「セクサロイド」の単行本を拾って、なんかエッチな絵がいっぱい出てくるので密かに家の倉庫に隠しておいたら、いつの間にか親に処分されていたっけ^_^; 晩年までずっと現役を貫かれたかただけど、僕は松本零士の漫画って新作を読んだ記憶がない。
ただ、「999」も含めて幼少期に観ていたアニメの中には氏がかかわった作品がいくつかあるし(「惑星ロボ ダンガードA」や「SF西遊記スタージンガー」など)、だから子どもの頃に馴染みのあった絵柄のクリエイターとして記憶されてて、今回もこういう催しがあることを知って観にいきたいと思っていました。



もともと少女漫画を描いていただけに動物(特に猫ちゃん)がとても可愛くて、松本零士漫画のヒロインたちのあの大きくて華麗な瞳の原点も少女漫画にあったんだな、って改めて思いました。
貴重な原稿をたくさん見られたのが嬉しかったし、これまで展示会で何人かの漫画家の生原稿を見た時にも感じたようにほんとに細かくて丁寧で一点一点が“アート”でした。
松本零士さんが描く宇宙の美しさ。あの“色”もさまざまな試行錯誤の末の賜物だったんですね。
一方で、漫画というのはコピーを駆使して原稿が作られるものでもあって、そこんところの「手の抜き方」も見事だな、と(^o^) 一時期は忙しさから絵が荒れて人気が落ちたことにも触れられていました。
宮崎駿監督もそうだけど、兵器類に対してのマニアックなまでのこだわりがあって、だからこそあの独特なメカたちを生み出せたのだな。お父さんが戦争中に戦闘機のパイロットで、その父への憧れがああいった形で作品の中に「戦場のロマン」として色濃く残されたんですね。
子どもの頃からの昆虫への強い興味、という部分は手塚治虫さんと共通するし、虫たちの姿が松本零士が描くメカたちのデザインにも大きな影響を及ぼしていることがわかって面白かった。
「999」に登場した“インセクター“(「終わりなき夏の物語」)のあのどこかエロティックな姿も印象的でしたが、機能美や精巧さにおいて機械と虫には相通ずるものがあるということなんだな。
「男おいどん」に代表されるような見果てぬ夢を追う冴えない容姿の主人公の日常的な風景と、銀河やSF的な世界の融合─何かと目を見張る美女との出会いとか─そういうコンプレックスの昇華の手段としての創作。いろいろと身につまされるものがあるし、共感を覚える人が多いのもわかりますが、でも松本零士さんご自身は若くして漫画家として才能を認められて活躍もされていたのだし、やはり結構若い頃に同業の女性と結婚もしているわけで(妻は牧美也子さん。夫婦でのコラボ作品もある)、だから松本零士さんを「モテね男」の大先輩みたいに見做すのは大間違いで(笑) 若い頃の松本零士さんの写真も展示されていたけれど、なかなかの美男子でしたよ。
アニメ版の「999」の鉄郎は少年らしい無邪気さが特徴的だったけど、原作の彼はもっとなんていうか「おっさん」入ってるところがあって、イケメンに暴言を吐かれて「ぶっ殺したいな」と呟いたり、それこそ敵を容赦なく撃ち殺したりもする。原作者がそのまま投影されているような、そんな主人公だったんですよね。
ハーロックのモデルとなった父親と「ガニマタザル」なその息子──それらは松本零士さんの理想とかなり自己卑下した自画像で、そのふたり(そして美しき母と恋人)は遺された作品群の中で生き続けている。
会場内の一角に、長らくアニメ版999でメーテルの声を演じてこられて今年3月3日に亡くなられた池田昌子さんへの追悼の言葉が書かれていました。あらためてご冥福をお祈りいたします。
じっくり観られてとても楽しかったですが、僕が行った日は意外と来場者に子どもさんは多くなかった。入場料、中学生以下は無料なんですけどね。
むしろ、若い頃に松本零士漫画に触れたり彼の作品のアニメを観ていた中高年の人たちの姿が目立ちました。懐かしそうに語り合っている女性たちも。
すぐ近くの名古屋市科学館の前で「999」にちなんだ機関車や客車の展示があって(機関車の車輪を回す実演も)、そこには子ども連れのご家族が大勢来ていました。


「銀河鉄道999」については、僕は何年か前に観た劇場版を散々こき下ろしてしまったし(5/16(土)には同美術館で上映会もあります。展示会の入場チケットを持っていれば先着180名が鑑賞可)、松本零士さんの「男のロマン」に苦言を呈したりもしましたが、それでも彼が遺したいくつもの作品たちが魅力的であることは間違いない。
嫌らしい言い方で申し訳ないですが入場料はなかなか値が張ったし、僕には今後もこういう催しに必ず足を運べる余裕もありませんが、でも今回はとても良い機会でした。
休日に晴天の下で、くつろいだり楽しそうに過ごす多くの人たちを眺めていると、こういう時間がどれほど大事かほんとにしみじみと感じました。
松本零士さんの漫画をまた読みたくなりました。
…久々の投稿でしたが、あれからいろいろあって病気をしたり映画を劇場で気軽に観ることもなかなかできず、ブログを書き続けるのもちょっと厳しい状況ですので、次にいつ更新できるかはまだわかりません。
以前のように定期的に投稿することは難しいですが、またいつか映画の感想を書けたらいいなと思っています。
それでは。

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