またしてもしつこく『この世界の片隅に』についてですが。
映画や原作漫画の感想に書かなかったけど、ちょっと気になった些細な点について。
この映画の中で、ヒロインのすずさんは晴美と一緒にしゃがんで“ありこさん”を眺めたり、石段に腰掛けて呉の軍港の船をスケッチしたりする。
その時のすずさんのしゃがみ方が、中途半端に股を広げた状態の、ちょうど幼児やおばさん、おばあちゃんがよくするような無造作に座り込む感じなのだ。
おそらく現在ならスカートを穿いている彼女と同じ年頃の女性は、膝をくっつけて足を閉じてもうちょっとお行儀よくしゃがむと思う。
でも、すずさんはスカートの中が見えるかもしれないとか、そんなことをいちいち気にしないんですね。
それはあの世代の女性たちがみんなそうだったのか、それともたまたますずさんはパンチラなど意識すらしない環境に生きていた人だからなのかわからないけれど、そういえばもう15年以上も前に亡くなった僕の祖母(すずさんよりもほんのちょっと若い世代だが)も昔撮った8ミリフィルムの中で池の鯉にエサをやる幼い僕と一緒にああいうしゃがみ方してたなぁ。
祖母が亡くなってから久しぶりにその映像を観た実の娘である僕の母が、「パンツ見えそう」と笑っていたっけ。
だから、すずさんは見た目は若くてほくろがちょっと可愛い美人さんだけど、中身は“おばあちゃん”みたいな人なのだw
彼女を見ていてちょっとほっこりするのは、そういう無防備さもあるのだと思う。
若いけど、たとえばリンさんのような艶っぽさとは無縁なおばあちゃんっぽい女性。
でも、だからこそあの初夜や水原との一夜が妙に艶めかしく感じられるギャップ。
このすずさんの無防備な座り方は映画版独自のもので、原作漫画ではそういう表現は特にないので、片渕監督が意識的にそのように描いたんでしょう。
しゃがみ方一つにもそのキャラクターに合わせた演出がされている。
もっとも、あの時代の女性は下着を穿いていないことも多かったそうなので、ヘタするとすずさんもノーパンだった可能性が*1(;^_^A
怒られちゃうかもしれませんが、そんなことさえ考えてしまうような親しみやすい作品だということでw
何年か前に読んだ「パンツが見える。」という本を思いだした(なんちゅータイトルの本を読んでいるのか俺は。いえ、戦前から戦後にかけての日本の女性たちの“パンチラ”について書かれた至極真面目な研究本です)。
白木屋ズロース伝説。
1932年(昭和7年)、東京日本橋にあった白木屋百貨店の火災で当時まだ下半身に下着を着ける習慣がなかった多くの和服の女性たちが着物がはだけるのを気にしたため避難が遅れて多数の死傷者を出した、という通説である。
本書によってそれが虚構であったことが判明する。
そこから見えてくる日本女性の羞恥心の歴史。
そして、私たち日本男性はいつから「パンチラ」を喜ぶようになったのか。
目から鱗が落ちまくりである。まぁ実に下世話な話ではあるのだが。
このような視点(スケベ心)からの風俗史というのもなかなか興味深い。
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*1:モンペの下にはズボン下みたいなのを穿いていたが。スカートの時にはズロースか何かを穿いていたのかも。※追記:8月6日の朝に広島に向かうために着替えをする場面で、ワンピースの中にモンペの時と同じ長めの下穿きを穿いていた。