遅ればせながら、漫画家でアニメーション監督の安彦良和による「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」をフィーチャーしたアート展の最終日にようやく行ってきました。
ジオン・ズム・ダイクンの胸像と1/10スケールのガンダムさん
てっきり「THE ORIGIN」すべてについて網羅しているんだと思っていたんだけど*1、どうやらアニメ版に絡めてのもので、展示品は「シャア・セイラ編」がメインでした。
あぁ、なるほど、宣伝も兼ねてたのか、と。
展示されているものも、ほとんどは安彦さん直筆の原稿や絵コンテで(他には「シャア・セイラ編」のアフレコ台本など)、あとはガンプラがちょこっと飾ってあったり会場に設置されたモニターにアニメ版の予告篇が延々ループで流れているといった塩梅。
正直、もうちょっといろいろメイキング的なものを見られるのかと思っていたんだけど。
でも、何よりも安彦さんの生原稿が見られたから嬉しかったな。
漫画の原稿って意外と小さいんだ、と思ったり、その中でキャラクターたちがほんとに細かく描き込まれて彩色もされていたりして、つくづく、これは匠の技だ、と思いました。
美術品みたいだった。
一方で気になったのはアニメ版の声。
会場に響き渡る予告篇の「声」が実に耳障りだった。*2
アニメの方も安彦さんが監督されているんだけど、やたらと女性の声優さんが叫んでいたり、誰もがいかにもな“アニメっぽい”声の演技で、あぁ、こういうの苦手だ、と。
結局、僕はいまだに「THE ORIGIN」のアニメは1本も観ていないんです。
コミック版が連載されていた当時は「これをぜひアニメ化してほしい!」と強く願っていたくらいなんで、だったら真っ先に観ればいいんだけど、いまだにDVDにも手が伸びないのは、予告篇を観て「なんか違う…」という気持ちが拭えないから。
声の演技も3DCGによるモビルスーツなどの作画も、僕がコミック版を読んでイメージしていたものとは微妙に、というか明らかに“何か”が違っていた。
いや、わかりませんよ。実際に観てみたら「面白ぇ〜!!」って夢中になるかもしれませんが。
一番の違和感はやっぱり声なんです。
池田秀一や田中真弓、古谷徹、銀河万丈などお馴染みのヴェテラン勢も多く参加しているけど、なんというか、声優さんたちの声の演技が僕にはちょっと堪えられない感じなんですよね。あまりにアニメアニメしてて大仰すぎる。
ちょっと前に『この世界の片隅に』で違和感のない声優さんたちの声の演技をしっかり耳にしているから、余計作り物っぽさが強調されて聴こえてしまう。*3
安彦さんはこれまでにもアニメーション映画を何本も監督しているけど、基本的に80年代の頃からキャラクターの演出方法が変わっていないなぁ、って。
だから登場キャラの演技やその台詞などもいちいち気恥ずかしい。*4
漫画の場合は絵だけだし、自分の間合いで読み進められる。また空白の部分は想像で補うことができるけど、アニメはそうではなくてタイミングも動きも声もすべて半ば強制的に見せられるので、特に「声」という重要な要素が受けつけないとキツいんですよね。
それと、やっぱり僕にとって“ガンダム”といえば「ファーストガンダム」なので、安彦良和のキャラクターデザインによるガンダム、というこれ以上ない条件にもかかわらず、たとえばドズルが微妙に三枚目として描かれていたり、キシリアの若い頃がほとんど別人だったり(それに「ファーストガンダム」では確かドズルがキシリアのことを「姉上」と言う場面があったと記憶しているが、「THE ORIGIN」ではキシリアは妹という設定。でも僕にはキシリアはどう見てもドズルの姉に思える)、ランバ・ラルがちょっとお茶目だったり、そういうほんの少しの改変が気になってしまうのです。
オイオイ、そんなキャラじゃなかっただろ、と。
…とかなんとか言っといて、しばらくしたらシレッとまとめてレンタル店で借りてるかもしれませんが。
懐かしいファーストガンダムの世界がリファインされて新しく生まれ変わったこと自体には魅力を感じるし、だから「THE ORIGIN」は定期的に読み返すんですが、いつかは映像作品の方も観てみたいと思います。
来年には「ルウム編」が映像化されて、いずれ本筋の「一年戦争」の方もあらためて再アニメ化される可能性はあるのかな。
スター・ウォーズの新シリーズが始まったのと同じ年に「THE ORIGIN」がアニメ化されて今後も続いていく、というのもなかなか面白い縁ですね。
関連記事
『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』
僕のガンダム
「この世界の片隅に」こうの史代原画展
『クラッシャージョウ』