映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『ウォッチメン』


※以下は、2009年に書いた感想に一部加筆したものです。


アラン・ムーア原作、ザック・スナイダー監督によるアメコミヒーロー映画『ウォッチメン』。

2008年作品。日本公開2009年。R15+。

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舞台はスーパーヒーローが実在する世界。彼らの介入によって歴史も世のなかの趨勢も史実とは異なるものとなっている(アメリカはヴェトナム戦争で勝利し、リチャード・ニクソンは大統領三期目)。1980年代、かつてのヒーローたちの多くは引退し、ある者は精神を病んで自殺、ある者は暗殺されていた。米ソによる全面核戦争の危機を回避するため、少数の生き残ったヒーローたちが暗躍する。


スナイダー監督の前作『300 スリーハンドレッド』は、古代ペルシャとスパルタの戦いを描きながら“史実”など軽くフッ飛ぶ武論尊イズムあふれる実写版「北斗の拳」といった感じで、腕の先が大変なことになってるハート様みたいな奴とか、あきらかに生身の人間のサイズを超えてる敵のペルシャ王が「ズゥゥ〜ン」と効果音付きで登場するなどなかなか笑える快作だったけど、さて今回はというと、ダークなヒーロー物ということで。

以下、ネタバレあり。


知ってはならない、真実がある─。

けっこう期待してたわけだが…まぁとにかく長い(163分!*1)。そして想像してた以上にブッ飛んでいた。ついていくにはかなりの集中力が必要。

ヒーロー活動が禁止された世界。何者かによって一人の元ヒーローが殺された。…というとスーパーヒーロー一家が活躍するピクサーアニメ『Mr.インクレディブル』を思い出すが、『ウォッチメン』で描かれるヒーローたちは平和で暖かい家庭などとは無縁な面々ばかり。

Mr.インクレディブルもそうだったけど、あちらのヒーローってのは覆面タイツの筋肉ムキムキ男やド派手なコスチュームのお姉さんとかで(そんな仮装みたいな格好でも正体はバレないお約束)、しかもリングネームみたいな名前の持ち主というのが定番。


おまけにこの『ウォッチメン』に出てくるのはイケメンのお兄さん(オジマンディアス 演:マシュー・グード)だけでなく、アイマスクしたヒゲ面のオッサン(コメディアン 演:ジェフリー・ディーン・モーガン)だったりする。一般人よりは頑丈だし寿命も長いが、正義の味方というよりほとんどプロの傭兵か殺し屋。

大好きですけどね、ヒーロー物=子ども向け、ヒーロー・ヒロイン=若者、っていう定石を無視しまくったこーゆーキャラクター造形って。メタボ腹のおっさん仮面(ナイトオウル2世 演:パトリック・ウィルソン)や娘に跡継がせた元スーパーヒロインのオバサン(初代シルクスペクター 演:カーラ・グギノ)とか、「ヒーロー」というより「怪人」にしか見えないソフト帽にコート姿のトラウマ系覆面男(ロールシャッハ 演:ジャッキー・アール・ヘイリー)など。


しかし何より問題なのがこの人。「Dr.マンハッタン」と呼ばれるフルチンのブルーマン(演:ビリー・クラダップ)。完全に反則、とゆーか規格外。やはり生身の人間のサイズを超えて巨大化したり、分身の術で恋人と複数プレイをしようとしていた。

ブライアン・シンガーの『スーパーマン リターンズ』の主人公も何考えてんだかよくわからない(というか多分何も考えてない)人として描かれていたけど、この青入道もそれに輪をかけたぐらいワケがわからなくて、その存在自体がかなりハタ迷惑な人。


出だしから中盤まではフィルム・ノワールのような探偵物風の展開で、第二次世界大戦からヴェトナム戦争後という時代背景にヒーローたちが絡んでなかなかイイ感じなんだけど、やがて話が宇宙規模になるに従って筋立てを追う気力が急速に失われていく。

ラストの「悪いジョーク」はたしかに笑えない。目的の意義はともかく、黒幕の手段がセコ過ぎて腰が砕けた。スーパーヒーローってのはつまり基本的にみんなバカだ、ってことか。

ただ、まるで先が読めない、ヒーロー物のお約束を外しまくったストーリーとその結末は、「こんな料理の仕方もある」ということを示してくれてはいます。

アメコミファンには評価する人もいるようだが、正直多くの人にはお薦めできない。セックス場面がしつこく出てくるけど全然ありがたくないし。

客席に混じってたアメリカ人たちが登場人物のセリフや「日本敗戦」の新聞記事とかにやたらウケてて、日本人客は誰一人笑わない劇場に鳴り響くメリケンさんたちの笑い声がブキミでした。


以上は2009年に書いた感想です。

ザック・スナイダーは、これから日本でスーパーマンのリブート『マン・オブ・スティール』の公開がひかえているけど、公開されたばかりのアメリカではまずまずの成績で評価も悪くないんだそうな。

スーパーマンといえば、かつてのクリストファー・リーヴ主演によるシリーズのイメージが強いが、「ダークナイト」組のクリストファー・ノーラン(製作総指揮)とデヴィッド・S・ゴイヤー(脚本)、そして『300』や『ウォッチメン』のザック・スナイダー監督という布陣によるシリアス風味のリブート版は、はたして2010年代の“鋼鉄の男”をどのように描きだしたのだろうか。

昨年の『ダークナイト ライジング』と同様に、個人的には今年の夏一番楽しみにしている作品です。

さて、ハリウッドのスーパーヒーローたちはこれからも“ウォッチ”していきたいけど、できれば邦画にも頑張ってほしいところ。

変態仮面』(感想はこちら)もいいが、それだけじゃなぁ^_^;

…え、ガッチャマン

作ってはならない映画がある─…。


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『スーパーマンII 冒険篇』
『ダークナイト ライジング』
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*1:さらに長いディレクターズカットや200分を超えるアルティメットカットもあるが、いずれも現時点で日本ではソフト未発売。