※以下は、2010年に書いた感想に一部加筆したものです。
ジョセフ・コシンスキー監督、ギャレット・ヘドランド、ジェフ・ブリッジス、オリヴィア・ワイルド出演の『トロン:レガシー』。2010年作品。
www.youtube.com
www.youtube.com
サム・フリン(ギャレット・ヘドランド)は、20年前に姿を消した父ケヴィン(ジェフ・ブリッジス)の行方を知る手がかりとなるコンピューターシステム“グリッド”に入りこむ。そこには父の若い頃の姿をしたクルー(ジェフ・ブリッジス 2役)がいた。
全世界同時公開の初日にIMAXでの鑑賞。
気合い入れて前売り券まで買ってしまったのだった。
劇場で前売り券買うなんて何年ぶりだろうか。普段はもっぱら駅前の金券ショップにお世話になってるんだけど、IMAXは普通の前売り券は使えないので*1。
ポスターとベアブリックストラップもらった。なんだかもったいなくて封を開けられない。
いつも洋画は字幕版を観るんだけど、こと3D作品に限っては『アバター』や『バイオハザードIV アフターライフ』の経験から吹替版を選択。
その方が圧倒的に映像に集中できるので。
思えば1年前のこの時期に『アバター』を観てたんだなぁ。
月日が経つのは早い、早過ぎる。まるでコンピューターの中の出来事のようだ。
1982年公開のジェフ・ブリッジス主演による前作『トロン』のCG映像を観ると、そっか、30年前はこんなんだったんだ、とあらためて驚く。
『トロン』(1982) 監督:スティーヴン・リズバーガー
www.youtube.com
実は『トロン』はちゃんと観ていません。
82年といえば僕は祖母にスピルバーグの『E.T.』につれてってもらったのを憶えてるけど、当時この映画のことを知ってたかどうか記憶がさだかでない。
だいぶあとにディズニーのヴィデオになってたのをレンタル店で見かけたことがあったぐらい。
今回その続篇を観るにあたってネットで無料で配信してないかと虫のいいこと期待してたんだけど、さすがになかった。
なので予告篇以外の予備知識なしでの鑑賞。
光る円盤をぶん投げ合ったりライトサイクルに乗ってたたかうシーンにダフト・パンクの曲がかぶさって、視覚と聴覚の快感を味わいましたよ。
Daft Punk - Derezzed
www.youtube.com
ディズニーなだけにTDLのアトラクションみたいな楽しさがありました。
ご家族連れやカップル、友達同士誘い合って観に行くには最適。もちろん僕みたいに一人で行ってもいいし。
IMAX専用の効果がある、ってどっかに書いてあったけど、通常の3D版を観てないんでどこのことなのかはわかりませんでした。
そんなわけで、とりあえず観て損はないと思います。アトラクションとしてはね。
なんか含みのある書き方だけど。
それとこれも余計なお世話だけど、過剰な期待は禁物なんで。
お薦めであることを前提として、以下はもうちょっと内容について。
一本の映画として自分がどう感じたのか書きとめておこうと思います。
ネタバレして困る内容じゃないので書いてかまわないと思うんだけど、予備知識や先入観なしで観たい人は以下の感想は鑑賞後にお読みください。
前作を観てなくても話はわかる。
というより、ハッキリ言ってストーリーはあって無きに等しい。
コンピューターの世界“グリッド”から父ちゃんを助け出すために主人公が頑張る。それだけ。
主人公がプログラムの世界に入る、というと真っ先に思い浮かぶのはもちろん『マトリックス』(感想はこちら)。
似たような発想で、すでにその17年前に『トロン』が作られていたという事ですね。
で、その続篇であるこの『トロン:レガシー』を観ると、登場人物のほとんどすべてを『マトリックス』のキャラに当てはめることができる。
主人公サム・フリンはネオ。
主人公の手助けをする美女クオラ(オリヴィア・ワイルド)はさしずめ“2010年代のトリニティ”といったところだろうか。
そしてジェフ・ブリッジスが演じるケヴィン・フリンはモーフィアスとオラクル、そしてアーキテクトも兼ねている。
悪役のクルーは当然エージェント・スミスである。
メロヴィンジアンみたいな奴も出てくる。
ただ、『マトリックス』のように興味を引く謎や入り組んだ設定、物語としての斬新なアイディアがあるわけではないので、そのあたりはおおいに物足りない。
監督のジョセフ・コシンスキーは、これが長篇初監督作品というから大抜擢である。
ナイキやアップルのCMを手がけてた人なんだそうな。
だから何よりもまずヴィジュアル先行の人なんでしょう。
短い時間でワッと盛り上げるのは得意なのに違いない。
でもワン・シークエンスはカッコ良くても、その場面と次の見せ場をつなぐ部分(ポータルに向かうとか向かわないとか言い合ってるくだりなど)でなんだか急にフッと力が抜けたようになって、興奮が持続しないんである。
ストーリーテリングの緩急で「ドラマを描く」のではなく、なんとなく見せ場の数珠つなぎみたいな印象を受けた。
この映画を観ただけでは、“プログラムたち”がなぜゲームに熱狂していて、そこで勝ち残らなければならないのかよくわからない。前作には描いてあったんだろうか。
それと、タイトルになってる“トロン”って主人公のことじゃないんだよね。
実はトロンさんはそんなに出番は多くなかったりする。
“彼”が突然行動を覆す理由も不明。
また、「父と子の物語」というのも描かれているのは非常に表層的なもので、あまり深みが感じられない。
そもそもケヴィンがいう「科学や医学、宗教までもが変わる発見」自体がまったくの架空の存在なので、一体それが何を意味しているのか、彼らが何を守ろうとしてたたかっているのかもよくわからない。
主人公が現実世界に持ち帰った“遺産(レガシー)”で人間がどう変わるのか。
そのあたりは作品の肝だと思うんだけど、投げっぱなしである。
だから「物語」としての感動は薄い。
僕が『マトリックス』以外で思い浮かべたのは、フランシス・フォード・コッポラ監督、マイケル・ジャクソン主演の3D映画『キャプテンEO』でした。
15分ぐらいの短篇でTDLでやってた。
あの作品はマイコーと大勢のダンサーたちの歌と踊りを3Dで楽しむもので、別にそれ以上のテーマとかメッセージがあるわけじゃない。
歌とダンスは宇宙を救う、ってことか。
とにかくただ気持ちよく愉しめばいいんである。
『トロン:レガシー』もようするにそれと同じ(どちらもディズニー映画ですし)。
先ほどの円盤投げやライトサイクルのバトルはけっこう前半にあってけっして全篇ずっと続くわけじゃないので、そのシーンが始まったら全力で楽しむように(^o^)
モーションキャプチャーを使って作られたCGで30歳若返ったジェフ・ブリッジスの顔が微妙に気持ち悪い^_^;
(本物の)ジェフ・ブリッジスの最後の表情がとてもいいんだけど、実際の撮影では彼は他のキャストと同様に合成用のブルーバックの前で演技してるわけで、つくづく俳優というのは想像力を駆使する職業なんだなぁ、と思う。
あの説得力のある顔の演技はまだCGにはできない。そこに若干ホッとしたりして。
あと、身体にピッタリとフィットしたスーツを着たアンドロイドみたいな動きのおねえさんの胸とかお尻がスクリーンに大写しになって、なんともまぁステキで見とれてしまった。
ちなみに、この作品は『アバター』で使用されたのと同じような3D用のキャメラで撮影されていて公式サイトでは「全篇3D」と書かれているけど、厳密にいうと全篇ではなく“現実の世界”の場面は一部が2D。
あそこはストーリー上、最後の現実の世界でもおもいっきり3D効果を効かせた方がよかったんじゃないかと思うんですが。
また、「『アバター』の映像が過去のものに」と自信満々だけど、おそらく『アバター』の興行収入を超えることは難しいと思う。*2
なぜなら、『アバター』でリピーターを増やし、多くの“アバター鬱”を生み出したあの衛星パンドラの映像は、どこにも存在しないものではなくて、僕らが見慣れた風景を巧みに組み合わせて観客を心地よい気持ちにさせたのであって、それに比べてこの『トロン:レガシー』の描く世界は、刺激的ではあってもずっとそこにいたいと思わせるまでのものではないから。
より瞬間的な快楽といえる。
でもこの映画の長所は、主人公が「この星のために!(『ア○ター』)」とか「俺たちの星のために!(『ヤ○ト』)」とか胡散臭い演説を一切しないところ。
そういう意味では「感動させよう」とか変な色気を出さずに「見世物」に徹していて快い。
この『トロン:レガシー』が何か主張してるとすれば、それは「Survive.(生き残れ)」ってことか。
…生き残る、ってどういうこと?
人間のことじゃない。もちろん「3D映画」自身のことをいっているのだ。