※以下は、2010年に書いた感想です。
吉田大八監督、菅野美穂主演の『パーマネント野ばら』。2010年作品。
原作は西原理恵子の同名漫画。
土佐の港町。離婚して母親(夏木マリ)が経営するパーマ屋「パーマネント野ばら」に子どもを連れてもどってきたなおこ(菅野美穂)。母は再婚した夫(宇崎竜童)と別居しており、元同級生のともちゃん(池脇千鶴)やみっちゃん(小池栄子)たちもみな男運の悪い女性たちである。そして、なおこは高校教師のカシマ(江口洋介)とひそかに交際をつづけていた。
菅野美穂、という女優さんは僕の中では長らく「精神的に不安定な女性を演じるのが巧み」で、中谷美紀と並んで「とりあえず目がヤバい人」という印象が強いんですが、なんでそんな失敬なイメージを持つようになったのかよく思い出せないんですよね。
というのも、思い返せば実は彼女の出演した映画をまともに観たことがなかったので。
『エコエコアザラク』にも『Dolls』にも、『さくらん』にだって出てることは知ってたけど、たまたま縁がなかったというか。
それが、以前たまたまTVをつけるといつも決まって菅野美穂主演のドラマをやってて、「こんなアンドロイドみたいな喋り方する女の子はいねーよ」と独りツッコんだり(寂しい奴だなぁ)毎度同じような展開に呆れたり、そこで大泣きしながら台詞をまくしたてる菅野美穂に「よくあんなに毎回涙が出るなぁ、どっかにスイッチでもあるのか?」と感心したりしながらなんとなく観てました。
それで、年齢が近い、たとえば先ほど挙げた中谷美紀とか、あるいは竹内結子といった女優さんたちが年々貫禄を増していってるのに比べると、芸歴長いのにいつまでも可愛い人だな、と思って。なんだか今でも女の子というイメージなんだけど、もう30代半ばなんだもんね。つくづく不思議な女優さんです。
そんなわけで、これまでは女優目当てに映画を観るということはなかったんですが、冒頭に書いたとおり最近なぜか女優さんに注目することが多くなってて、この『パーマネント~』は完全にカンノさん目当て。
原作や監督さんについてもまったく予備知識なしで(サイバラ原作の漫画だってこと観終わってから知った)、ただとにかく映画の中の菅野美穂を観たい、と思って。
観る前までは題名や雰囲気から、もしかしたらいわゆる「癒し系」みたいな途中で眠くなるタイプの映画なのかしら、と思ってたんですが。
以下、ネタバレあり。
この映画を観てて、なぜ今まで自分が菅野美穂の主演作品を避けてたのか(意識的にじゃないけど)少しわかった気がしました。
恋人役の江口洋介とイチャつくカンノさん。甘えたり、思わず守ってあげたくなるような(そーゆータイトルの映画にも出てましたな)その痛みを抱えた体躯がかつてはちょっと重かったんではないか。
だからこそ、今観るとちょうどいいのではないかと。
ところが菅野美穂を観るつもりで劇場へ足を運んだのが、始まっていきなり予期してなかったキャラクターたちが登場。
いかにも“ザ・龍馬”な土佐弁が飛び交う高知の田舎町。
頭がスゴいことになってるパーマ屋の夏木マリと、同じくパンチ頭の大仏おばさんたち。
特に大仏おばさんの一人の下ネタ連呼とのちに繰り広げられる見たくもない「はたきこみ」デートシーンには耳と目が腐るかと思いました(;^_^A
なんか『川の底からこんにちは』といい、おばちゃんたちはいつもたくましいですね(おばちゃん役の出演者、あの映画とカブってないか?w)。
そして小池栄子が男運が悪い友人役として出てきて早速暴走。場面をかっさらっていってしまう。
さらに、これまた主人公の友人役で絶妙な地味顔の眼鏡女子が出てきたなー、と思ったら池脇千鶴だった。
この人がまた男を見る目がなくて(とゆーか、この映画にはろくな男が出てこない)、彼氏にぶっ飛ばされる時の表情とか、何とも言えないナチュラル・エロスなウエストの弛み具合など、「パーフェクト」としか言い様がないハマりぶり。
で、どうやら今回のカンノさんはこういう人たちと関わりながら一歩引いた狂言回し的な役柄なのだろーか、と思ってたら…。
…まぁ、しかしそこはやはり菅野美穂。一番ヤバいのはこの人でした、というお話。
今回もまた「泣き芸」を見せてくれてます。
「なんでうちこんなに寂しいが?なんで寂しゅうて寂しゅうてたまらんが?」
いつまでも少女のような雰囲気をもった女優さんだと思う。
だから年齢的には別におかしくはないんだけど、母親役だったのには最初ちょっと違和感が。
でも、この主人公が少女っぽいのには理由がある。
ストーリー的にはこういう“オチ”がある話って好きですが。
後半に高校時代の回想シーンが出てくるんだけど、一瞬「三十路でセーラー服?」とそのチャレンジ精神に思わず期待してしまった。さすがにそこは避けてましたが(残念!)。
…なんていうかなぁ。
ストーリーとは全然関係ないんだけど、かつてこの菅野、小池、池脇という女優さんたちが10代の頃「女の子」として映画やTV、グラビアなどに出てるのを見ていた者としては、結婚してたり母親役やバツイチ役で、それもそんな姿がけっこう「リアル」に見えてきてる様子を眺めてるうちに、感慨深いというか、確実にヘコんでる自分を発見したのでした。
すっげぇ笑える、とか泣ける、とかいうんじゃなくて…なんか切ねぇっスわ。
「どんな恋でもないよりマシやき」という小池栄子に「みんな、そうだよ」と同意する菅野美穂。
…そうなの?^_^;
池脇千鶴の夫役でギャンブル中毒男を演じる山本浩司はいかにも過ぎて「またこーゆー役か!」と可笑しかったけど、人生諦めたようなこの人の表情見てたら笑えなくなってしまった。
正直、途中まではかなり「ビミョー」と感じながら観てたんだけど、微温、というか、作品の中にたえず漂っている不穏な感じ、しばしば我が子を見つめる主人公のまなざしに表われる「大切なものが決定的に失われてしまうんではないかという怯え」など、妙に心に引っかかる要素にじょじょに病みつきになっていったのでした。
「この町に残っているのは搾りカスだけ」とつぶやきながら、仮にまた飛び出してもおそらくは再び戻ってくることになるのではないかという恐怖映画めいた予感、そしてこれからもまた繰り返されるであろう幻との逢瀬。
永遠に少女っぽさを残した菅野美穂の姿が浮かび上がってきて切なくも怖い。
「うち…狂ってる?」
…わからんき。
あぁ、やっぱり凄いね、女優さんって。
Zoo〜愛をください(2000) 映画と関係ないけど懐かしかったので。
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