映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

※2019年の“はてなダイアリー”終了に伴い、2018年9月にブログを移行しました。

『ロビン・フッド』(2010年版)


※以下は、2010年に書いた感想に一部加筆したものです。


リドリー・スコット監督、ラッセル・クロウケイト・ブランシェット出演の『ロビン・フッド』。
2010年作品。

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12世紀末、十字軍遠征から仲間たちとイングランドに還った、のちのロビン・フッド=ロビン・ロングストライドは、戦場で出会った騎士の遺言に従い、ノッティンガムへ向かう。


いわずと知れた(ってよく知らんけど)シャーウッドの森に棲む伝説の義賊のお話。

ロビン・フッド、といって現在多くの人が思い浮かべるのは、やはり1991年のケヴィン・コスナー主演作でしょう。

ロビン・フッド』(1991) 監督:ケヴィン・レイノルズ 出演:メアリー・エリザベス・マストラントニオ アラン・リックマン*1 モーガン・フリーマン クリスチャン・スレイター
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(Everything I do) I Do It For You 歌:ブライアン・アダムス
この主題歌、好きでした。
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あの映画は当時『アンタッチャブル』や『ボディガード』などでノリノリだったコスナーの活躍とともに、適度に笑いもまぶした痛快娯楽アクションとしてなかなか愉しめました。ロビンに縁のある有名俳優も獅子心王ライオンハート)リチャード役でカメオ出演してたりして。

今回の映画でもリトル・ジョンとか呑んべぇの修道士とか、もちろんロビンの恋人マリアンなど、聞き覚えのある名前の登場人物たちが出てきて、それはちょうど日本で「忠臣蔵」が幾たびももさまざまな俳優によって映画化されるのと同じような感覚で心なしかワクワクしてくる。


しかして監督がリドリー・スコットなんで、わかりやすい勧善懲悪の英雄譚になるはずがない。そんなの予告篇観ればすぐに想像がつく。

つまりいつものリアル志向。

リドリー・スコットの歴史大作というと、まずジェラール・ドパルデュー主演の『1492 コロンブス』を思い出す。

『1492 コロンブス』(1992) 音楽:ヴァンゲリス 出演:シガーニー・ウィーヴァー フェルナンド・レイ アーマンド・アサンテ マイケル・ウィンコット チェッキー・カリョ
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縛り首にされる女性の顔がゆがんで舌を出して絶命するシーンに見られるような残酷描写が印象的だったけど、やがて『グラディエーター』(感想はこちら)が登場するとそれに活劇的な要素が加わる。

あきらかに『プライベート・ライアン』以降のスピルバーグを意識しているリドリー・スコットが描こうとしているのは、“まるでその時代に本当に迷い込んだような史劇”ということか。

ケヴィン・コスナー版でモーガン・フリーマンが演じていた頼りになるムーア人とかノッティンガムの悪代官に仕える魔女、といったようなファンタスティックなキャラクターはここでは出てこない。

あとタイツも穿いてないんで(^_^)

アメリカ版のトレイラーを観て、「あぁ、またこういうの撮ってるんだ」と思った。

で、日本でも予告篇が流れるようになっても正直あまり食指が動かなかったのだった。

というのも、5年ほど前に観た同じくR・スコットの『キングダム・オブ・ヘブン』が同様に十字軍を描いた作品だったんだけど、(まだこうやって映画の感想を書くようになる前だったこともあって)まったくといっていいほど記憶に残ってなくてオーランド・ブルームが出てたこと以外思い出せず、しかもミラジョヴォ主演の『ジャンヌ・ダルク』やブラピの『トロイ』、クライヴ・オーウェンキーラ・ナイトレイの『キング・アーサー』などと頭の中で合体してしまってる始末。

ようするに、剣と鎧の男たちが戦場でぶち殺し合う映画を別に今観たくはないな、ってな感じだった。

それにリドリー・スコットラッセル・クロウのコンビ作は『グラディエーター』で十分堪能させてもらってるんで(今でもたまにサントラ聴いてる)、その二番煎じ的なものを観せられても、という気持ちもあったから。

でも観てみたらよかったです。

以下、ネタバレあり。


コスナー版ではノッティンガム領主ロクスリーの実の息子という設定だったロビンは、今回はなりゆきでロクスリー卿(マックス・フォン・シドー)の息子となる。


この映画でのロビンの実の父親は石工で、彼はそれまでは一方的に王に従う存在だった民の権利、法律や憲章の必要性を説いた思想家だった、という設定。

ロビン・フッド”というのは複数の実在した人物の伝承が合わさって、その後いろいろと尾ひれがついてさまざまな設定や登場人物が加わり、やがて彼が活躍したとされる時代も変わっていった伝説上の人物。

それをちょうど『グラディエーター』で見せたように、架空のキャラクターをあたかも実在したかのように描く手腕はさすがリドリー・スコット

コスナー版ではスネイプ先生ことアラン・リックマンが楽しそうに演じていたロビンの宿敵ノッティンガムの悪代官は、この映画では王の命令で村人たちから税を取り立てる単なる木っ端役人でしかない。

それに代わる敵はフランス軍のスパイでリチャード1世の弟ジョンオスカー・アイザック)の腹心ゴドフリー。演じるのはガイ・リッチー監督の『シャーロック・ホームズ』でも悪役ブラックウッド卿を演じていたマーク・ストロング


頭を剃りあげてマントをひるがえして馬に乗る姿が実に様になっててカッコイイ。

わかりやすい形での悪役は、ひとまず彼が一人で引き受けている。

また、フランス側ではQ・タランティーノ監督『イングロリアス・バスターズ』の冒頭のエピソードで非常に印象に残る演技を見せてくれたフランス人俳優デニス・メノシェが、チョイ役ではあるけれど顔を見せている。

リチャード王やジョン王同様、実在の人物ウィリアム・マーシャルを演じるのはウィリアム・ハート

全篇とにかく男臭い映画。

男臭い、というのは汗臭く血生臭いということ。

これはロマン主義的な騎士道物語でもなければ、富める者から奪い貧しき者に分け与える義賊の話でもない。

それでもロビンとその仲間たちは粗野ながらも気持ちのいい奴らで、『1492』での船乗りたちほどの“無法者”ではない。


後半、展開がどんどん性急になっていくけど、おかげで飽きることはない。

リドリー・スコットがこの映画の“イングランド”に現代のアメリカの姿を重ねていることは明らかだが、僕はまたちょっと違う感想を持ったのだった。

とりわけイングランド対フランス、という構図に興味をそそられたわけである。

イギリス人のリドリー・スコットが撮ったこの作品は、愚王として描かれるジョンの描写でもわかるようにけっして単純な“英国万歳映画”ではないのだけれど、それでもフランスの計略によって分裂、崩壊しつつあったイングランドの諸侯たちがロビンの演説でひとまず団結してフランス軍を迎え撃つ場面には、グッとくる。

この映画で描かれた、フランス軍イングランド上陸を目前にして撤退、というのが史実なのかどうかは知らない。

だがフランス人の観客は、自国の王が侵略者として現われて「これがバラバラになっていたはずの国か」と言い残して退却してゆく姿を観て、はたしてどう思っただろう。

ジャンヌ・ダルク』のように、フランス側から見ればまったく違う描き方にもなるはずで(王様がどーしようもないのはどちらもあんまり変わらない気もするが)。


たとえが不適切な気もするけど、それでもやはりここは特に最近の日本と近隣諸国との関係を連想せずにはいられないのだ。

他国からの挑発なんか受けちゃってる様は、この映画のイングランドにソックリではないか。

かつてモンゴル軍が上陸を企てて“神風(天災)”によってこれを断念した史実を御旗に、その後アメリカの占領を味わうまでは外国軍の本土上陸を経験したことのなかったこの東洋の島国は、近代以降、大英帝国の海軍を手本にしてきたのだった。

まぁ、日本とアジア近隣諸国との関係と英仏との明確な違いは、ヨーロッパのようなキリスト教を中心とする共通の権威(ローマ教皇)が存在しないこと、そして日本の皇室には海外の王朝と血統的な交わりが(基本的には)無いこと。

イギリス王室とフランス王室の戦いは、イタリアやスペイン、ロシアなども含めたほとんど血を分けた兄弟や親戚同士の諍いである。

イギリスのコメディ集団モンティ・パイソンのギャグのように、英国人と仏国人との間には僕ら日本人には理解できない部分で歴史に根ざした深い深い溝があるのかもしれないが(関東人と関西人のいがみ合い程度に思えなくもない)、その互いに劣等感が入り混じった国民感情が、僕なんかには不思議かつ面白い。

モンティ・パイソン 完全にフランス人をコケにしてます(^_^;)
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日本と近隣諸国の関係だってそうだ。

僕としては、それぞれがたがいの国の文化や歴史、そこに住む人たちを尊重しあえる時代がはやく訪れたらいいのにな、と素朴に思う。

ロビン・フッド伝説からずいぶんと遠くへ来てしまったようだが、こういう映画を通した歴史の解釈、物語の語り直しは面白い。

歴史に詳しい人ならなおさらだろう。


問題は、イスラム教徒との戦争に明け暮れたり、民をないがしろにする王様に異議申し立てをした英雄が“現実には存在しなかった架空のキャラクター”だということだ。

そこに決定的な弱さを見ることもできるけど、僕は「映画」だからこそ描き得るものとして、むしろそこにこそ興奮をおぼえる。

ロビン・フッドはもはや鼠小僧的な義賊ではないが、それでもまぎれもない英雄、我らのヒーローなのである。


僕はリドリー・スコットの『ブレードランナー』や『ブラック・レイン』(感想はこちら)が好きなんで(脳みそパカッに笑ってしまった『ハンニバル』も)、個人的には政治とか社会情勢とか難しいことより“映像美学”を優先してた頃のような映画をまた撮ってくんないかなぁ、と思ってんですが。『グラディエーター』は最高の“見世物映画”でした。しかも泣けたし。


ここんとこ10年ぐらいに渡って、すでに齢70を過ぎて1~2年に1本ぐらいのペースで映画を撮り続けるリドリー・スコットの“精力”には感嘆します。

『プロメテウス』(感想はこちら)もなかなかぶっとんだ(いろんな意味で)映画だったしね(^o^)


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