映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

※2019年の“はてなダイアリー”終了に伴い、2018年9月にブログを移行しました。

『チョコレート・ソルジャー』


※以下は、2011年に書いた感想に一部加筆したものです。


ラーチェン・リムタラクーン監督、ジージャー・ヤーニン・ウィサミタナン主演の『チョコレート・ソルジャー』。2009年作品。

チョコレート・ファイター』(感想はこちら)のジージャーの主演第2作目。

つっても阿部ちゃんも出てたプラッチャヤー・ピンゲーオ監督の『チョコレート・ファイター』の続篇ではない。

チョコレート関係ないし、ソルジャーじゃないし(英題は『Raging Phoenix』)。

あれですか、セガールの『沈黙の〜』みたいに、これからは彼女の主演映画にはぜんぶ“チョコレート”つける気か(※そのとおりでした)。

…ほんとやめてほしいなぁ。


“チョコレート”つけなきゃジージャー主演映画だと気づかれないからってことかもしれないけど、でもそれにしても安直すぎるよ。

なにより紛らわしい。

『レイジング・フェニックス』でいいじゃないか。


2009年に日本で『チョコレート・ファイター』が公開された頃からすでに新作の話は知ってて、その後予告篇観たらこれがもう面白そうで。

で、早く公開されないかなぁ、と思っていた。

やがてジージャーの兄弟子的な存在でもある同じくタイのアクションスター、トニー・ジャー主演の『マッハ!弐』(感想はこちら)が公開されて僕は観に行ったんだけど、どうやらこれがコケちゃったらしくて、なんとその続篇の『マッハ!参』(感想はこちら)は日本では劇場公開されずにDVDスルー。

そのあおりを食らったのか、それとも『チョコレート・ファイター』が思ったほど当たらなかったのかわからないけど(でも映画館にはお客さんけっこう入ってたけどな)、こちらも映画館では上映されずじまい。

なんだかなぁ。

ひと頃のインドのマサラムービーみたいな扱い。すぐ飽きられちゃった、みたいな。

僕もタイ映画はトニー・ジャージージャーの映画以外は『七人のマッハ!!!!!!!』ぐらいしか観たことないけど、そんなに数が多くはない彼らの主演映画はできれば映画館で観たいのに。

まったく観られないのにくらべれば、DVDで出してくれただけでもありがたいと思うべきなのかもしれないが。

↓有志のかたによる日本語テロップ付き予告篇。とっても面白そうでしょ?
www.nicovideo.jp

タイでは幾人もの若い女性たちが忽然と姿を消していた。主人公のデューは所属しているバンドの演奏中に客席で彼氏の浮気を発見、逆上して暴れたためにバンドをクビになる。ヤケクソになって呑みまくり泥酔しているところをギャングたちに襲われて拉致されかかる。そこにひとりの男が現われて彼女を救う。


上の予告篇を観るとおもわず、これは『チョコレート・ファイター』を超えるか?なんて期待してしまいそうになる。

でも、今回の『チョコレート・ソルジャー』に前作『チョコレート・ファイター』(あぁ、タイトル紛らわしい)と同じぐらいかそれ以上の超絶スタントアクションを期待してしまうと、残念ながらガッカリすることになるかも。

まぁ、前作以上に面白かったらDVDスルーにはなってないだろうし。

予告篇は見どころをとても巧くつまんで作ってると思います。

見どころのほとんどを見せちゃってる、ともいえるが…。

もちろんおなじみのじかにひじやひざをアテる痛そうな場面はあるんだけど、危険きわまりないド派手なスタントアクションというのはそんなにない(俳優がケガしやすいのは一見地味なアクションシーンだとはよく聞きますが)。

ガチな格闘というよりも、擬斗仕立てのダンスを観ている感じ。

Jeeja Yanin - Raging Phoenix fight scene
www.youtube.com

あと『マッハ!!!!!!!!』や『チョコレート・ファイター』みたいにエンドロールにNGシーンは流れません。

そんなわけで、これから『チョコレート・ソルジャー』のストーリーを追いつつ感想を書いていきますが、特にネタバレといえるようなネタもないので、未見で読んでもかまわないんではないかと思います。


映画がはじまってまもなく、なにやら広くてきらびやかな装飾の家のなかで寝そべって母親と電話している若い女性が映る。

なんか化粧が濃い女だなぁ、と思って観ていたら、なんと主演のジージャーだった。軽くショックを受けてしまった。ケバっ。

金持ちの家の子の役なのか?

その後は化粧も薄めになったのでホッとしたけど。

ジージャーはデビュー作の『チョコレート・ファイター』では障害があってほとんど喋らず笑いもしない、でも戦うとメチャクチャつおい少女役だったけど、今回は一転して生意気なお転婆娘を演じている。

髪も切っていかにもヤンチャそうな外見。

ちょっとイタい感じもするが。


ちなみにこのジージャーさん、小柄で童顔なので一見すると少女みたいだが、2011年現在27歳の立派な大人の女性。

それにしても、あらためて彼女の腕の細さやその華奢な体躯に驚かされる。

この身体であんなアクションをするんだ、と。

その意外性がほかのアクションスターにはない彼女の魅力のひとつでもある。


寒そう。でもかわええ。


拉致られそうになっていたデューを救ったのはサニムという男で、彼には二人の仲間、ドッグとピッグがいる。

三人は“泥酔拳”の使い手だった。

彼らが曲にノッてダンスしてるように戦う場面は予告篇にも使われてるけど、なかなか気持ちイイ。

デューはもともとは別に格闘の名手ではない普通の女の子という設定なので、はじめのうちは追っ手に襲われそうになっても逃げ回ってるだけ。

たとえばこれがミシェル・ヨー姐さんだったら弱々しい女性にはぜったい見えないところだけど、サニムに手を引かれて逃げるジージャーはほんとに普通の女の子にしか見えなくて、酒呑んでフラフラだし、とてもそのあとに敵とガンガン蹴り合って戦うキャラクターとは思えない。

前作ではほぼシリアス・モードだったジージャーが、この映画ではコミカルな演技を披露している。

椅子にお尻がハマったままキャーキャー逃げ回る場面なんか、とってもカワイイ。

彼女がコメディ演技も達者なのがよくわかった。

大酒呑んで男のひざや顔にゲロ吐いたりして。


たとえばトニー・ジャーはあの生真面目で朴訥としたキャラと凄すぎるスタントアクションにおもわず笑いが巻き起こるといった具合で、本人はいたってシリアスという、今のところ演技のパターンはほぼ1つにかぎられている。

それとくらべるとジージャーは、たとえばジャッキー・チェンが見せるような「コミカル・アクション」ができる人材なんではないかと。

アクションと笑いを両立できる人って意外と少ないんだよね。

どちらか片方ならいるんだけど。

ジージャーの別な才能がわかっただけでも個人的には収穫があったかな。


デューはサニムに頼み込んで(というか上から目線で強引に)“泥酔拳”を教えてもらう。

とにかくいろんな種類のアヤシげな酒を呑みまくって戦うという、酔拳とどこが違うのかよくわからないが、ヒップホップと組み合わせたファイトスタイルがなかなか目新しい。


デューはめきめきと腕をあげて文字どおりマッハで強くなり、ついに単身ギャングのアジトのひとつに乗り込んでさらわれた女性たちを救い出す。

そんなデューに、サニムは「思い上がるな」と釘を刺す。

サニムやドッグたちにも大切な人をギャングにさらわれたつらい過去があった。

ギャングの「ジャガー団」にさらわれた妻を救うために、サニムたちは数年かけて準備をしていたのだった。

軽快だった映画がシリアス・モードに変化していく。


しかし、困ったことにこのあたりから映画のストーリーが急速に停滞しはじめる。

サニムたちは精神力を試す「テスト」に失敗したデューを見限って縁を切る。

…なんで?

彼女の実力ではギャング団のアジトをつきとめるための囮は務まらない、という理屈らしいが、なんで貴重な戦力をわざわざ捨てるのかわからない。

ってゆーか、テストとかいって死んだフリしたり味方同士で殴り合ってる暇があったらもっと仲間を集めるなり情報を収集するなりしろよ、と思うんだが。

またしても捨てられた、と捨て鉢になりかけたデューだったが、自分を負かしたサニムの仲間に再度挑戦、けっきょくまた彼らと組むことになる。


…このくだり、要る?

いまいちよくわからない展開。

そんでもって敵がなかなか出てこない。

サニムの回想が延々つづいたり、そんな彼に好意を持ちはじめたデューも悩んだりしてるんだが、悪いけどそういうのはもういいから話を先に進めてくれよ、と。

そしてようやく敵の「ジャガー団」の話になるんだけど、彼らの女性誘拐の目的が「人間の分泌物から作られた香水」で、特定の女性が発するフェロモンが狙われるのだ、とドッグから説明される。

そのフェロモンの持ち主がデューやサニムの妻だったのだ、と。

…な、なんだそりゃ。


まぁ、いいや。

それでデューは囮になって人ごみを歩く。

すると彼女から発せられる“フェロモン”が可視化される。

CGで表現されてるんだけど、デューの身体からモワモワ〜っと立ちのぼるその“フェロモン”の映像が、なんていうか「目に見える体臭」みたいで^_^;

ふざけてるのか真面目なのかどっちなんだ。

多分、大真面目なんだろうけど。


ようやく出てきたジャガー団によってデューはさらわれてしまう。

サニムたちはデューの強烈な体臭、いやフェロモンの匂いを追って敵のアジトにたどり着く。

ここまでで1時間20分近く。

そこからは女ボスとジージャー&サニムの戦い、ドッグやピッグたちの戦いがそれぞれ描かれて、それは「待ってました!」という感じで気持ちイイんだけど、なんていうんだろ…これは贅沢なことなのかもしれないけど、やっぱり『マッハ!!!!!!!!』や『チョコレート・ファイター』を観たあとだと、どうしても見劣りしてしまう。


それでもマッチョな女ボスとジージャーの戦いなんか、けっこう延々とスゴいことやってたりするんだけど。

いつのまにか泥酔拳、どっかいっちゃってますが。


とにかく戦いと戦いのあいだがやたら長いのだ。

この映画の上映時間は114分だけど、『チョコレート・ファイター』は93分。

あの作品でそれだけなら、この『チョコレート・ソルジャー』はもっと短くていいはず。

だって、この映画ほとんどお話なんかないんだもの。

どう考えても長い。


それと、トニー・ジャーの『マッハ!弐』で思ったんだけど、「笑い」がないとキツいよね。

『マッハ!弐』は僕はそれなりに楽しんだけど、でもいつ笑わせてくれるんだろうと思ってたら、『アポカリプト』みたいな笑いなしの残酷ヴァイオレンス・アクションだったんでビックリした。

あれはあれで悪くはなかったけど、でも80年代のジャッキー世代だからなのかシリアス一辺倒の格闘モノは観てて途中で飽きてくる。

僕がドニー・イェンジェット・リーの映画に敬意を表しながらもどこかいまひとつのめり込めないのは、彼らの作品にはシリアスなものが多いこともあると思う(それでも彼らほどスゴいとそれなりに楽しめちゃったりもするんだが)。

それとドニーやジェットの作品はちょっと通好みというか、若干、間口が狭い感じがしなくもない。

マッハ!!!!!!!!』の1作目が大好きなのは、あの作品がジャッキー映画のテイストを継承していたから。

誰にでもわかるし愉しめる。

ああいう映画を求めてる人は多いんじゃないかなぁ。

ジージャーはコメディエンヌの才能があるんだから、映画のなかにもそういう要素をもっと入れたらどうだろうか。

ブコメっぽくすれば女性だって興味がわくだろうし、ジージャーはキュートなんだからそういうジャンルも可能でしょう。


ここんとこタイの作り手のみなさんは、どうも油断するとシリアスな方に話をもっていこうとするところがあるようで(それは『チョコレート・ファイター』でも感じた)、僕としては、う〜んと、そっちの方にあまり行かないでほしいなぁ、と思ってしまう。

あと、これいまさらあまりいいたくないけど、脚本の質がどんどん落ちてきてる。

いま思えば『マッハ!!!!!!!!』がすっごくよく出来てたように感じるもの。

チョコレート・ファイター』だってたいがいツッコミどころだらけだったんだけど、今回はそれに輪をかけて雑だった。

デューの家庭の事情(冒頭の電話のシーンで母親とあまりうまくいっていないような雰囲気だったり、どうやら父親は他界しているらしいことなど)やバンドをやってたことなどが映画の本筋とまったく関係ないことなんかからも、あまり脚本が練りこまれていないのがよくわかる。

だからアクションとアクションのあいだがとても退屈に感じられてしまう。


お話がないんだったらそういう余分な場面は最初からバッサリ切って、「お話を描く」のではなくてアクションによって映画を転がしていくようにしたらいいんじゃないか。

よーするに、小道具ひとつで事件が起こるジャッキー・スタイル。

ジージャーは身体が動く人なんだから。

かつてのジャッキー映画『プロジェクトA』とか『スパルタンX』『ポリス・ストーリー』など、ただの懐古趣味じゃなくてどれも無駄なシーンがなく、アクションとアクションの合間にも観客を飽きさせない工夫が凝らしてあった。

『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(1985) 監督・主演:ジャッキー・チェン
www.youtube.com

ジャッキーがチャップリンキートンの映画を研究して自分の作品に取り入れていたことはよく知られている。

チャップリンの映画もキートンの映画も、今観てもとても面白い。

それはシンプルで無駄のないストーリーと彼らの身体を使ったギャグが見事に調和しているから。

ジージャーにはぜひこれを目指してほしいなぁ。

女ジャッキー。

こんな逸材を無駄にするのはほんとにもったいないよ。

まだまだ若いんだから、いま彼女にしか出来ない作品を1本でも多く残してほしい。


なんか悪口だらけみたいな感想になっちゃったけど、僕は別にこの映画を観たことは後悔してませんよ。

だって貴重なジージャーの主演作を観られたんだし、それにくれぐれもおことわりしておきますが、この映画はそのへんの劇場公開作品よりもよっぽど肉体アクションしてるからね。

マッハ!!!!!!!!』や『チョコレート・ファイター』にくらべれば、といっただけで。

チョコレート・ファイター』でジージャーに魅了された人なら観て損はないと思います。

映画のなかの彼女と同じように酒呑みながらイイ気分で観たら、途中のかったるさもさほど気にならないかもしれない(^o^)

トム・ヤム・クン2』でのトニー・ジャーとの共演の予定や『チョコレート・ファイター』の続篇(日本ロケもありとのこと)の企画もあるようで、ジージャーの快進撃はこれからもつづく。


※…と、以上は2011年に書いた感想なんですが、その後またしても『チョコレートなんとか』と題された作品がDVD化されたもののジージャーはゲスト出演だったりして、『チョコレート・ファイター』や『トム・ヤム・クン』の続篇の話もあれから聞かないなぁ、と思っていたら、「映画秘宝」2013年1月号に、なんとジージャー妊娠・結婚女優活動休止のニュースが。

…マジで!?Σ(゚д゚;)

いや、赤ちゃんがうまれるのはおめでたいことだけどね。ジージャーさんだって20代後半なんだし別に不思議はないのだが。

う~~ん、でも続篇ずっと楽しみにしてたんだがなぁ…。

そんなわけで『チョコレート・ファイター』の続篇やトニー・ジャーとの共演作はしばらくおあずけに。

でも来年にはすでに完成している別の新作が日本で公開されるそうだから、ともかくそれで渇きが癒せられれば。

無事ジージャー2世がうまれますように。ママになったジージャーがまた不死鳥のようによみがえってアクション映画界にもどってきてくれるのを首を長~くして待ってます。


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