ドロール・ゾレフ監督、サイモン・ベイカー主演の『リピート 許されざる者』(原題“NOT FORGOTTEN”)。2009年作品。日本劇場未公開。ネタバレなし。
アメリカとメキシコの国境の町。主人公のジャックは前妻の娘トビーと後妻アマヤと3人で暮らしている。だがある日、娘がサッカーの試合中に行方不明になる。
小学生の娘・トビーをクロエ・グレース・モレッツが演じている。
ただ、これはすでに観る前から知っていたことだが、彼女の出演時間はけっして長くない。
なにしろ映画が始まって30分も経たないうちに姿を消して、クライマックス近くまで出てこないので。
今だからこそほんの少しでもクロエが出てたら今回のように観てみようと思うけど、『キック・アス』以前にこの作品がリリースされててもまったく眼中になかったと思う。
『キック・アス』(感想はこちら)や『(500)日のサマー』(感想はこちら)よりちょっと前の彼女の姿が見られる、ということではファンには嬉しい作品かもしれないが、逆にそれ以上の売りがないともいえる。
まぁ、僕はすでにクロエ・ファンなんでしっかり観たわけですが。
ただ、2時間とか1時間半ぐらいの作品を最後まで観続けるには、クロエの出演時間が短ければ短いほど作品そのものに面白味がなければさすがにキツい。
そういったことでは、『グレッグのダメ日記』(感想はこちら)や『(500)日のサマー』も彼女の出番はそれほど多くはなかったけれど、僕はそれなりに楽しめました。
では、この『リピート』はどうだったか。
クロエが演じるトビーが何者かに誘拐されて主人公が右往左往するあたりまでは普通に面白かった。
犯人は一体誰なのか。
性犯罪者や人身売買目的の犯行の可能性が出てきて、おまけになにやら怪しい悪魔崇拝の儀式まで登場するに及んで、オカルトがらみか?と興味をそそられる。
映画の冒頭、トビーに初潮がきてちょっとしたやりとりがある。
車の中で口紅を塗る彼女に父親が「拭きなさい」と命じる。彼女はしぶしぶティッシュで拭く。
こういう、第二次性徴期前後の子どものなんともいえないモヤモヤとした感覚がオカルトテイストのストーリーとうまく組み合わさればとても効果を上げると思うんだけど、結論からいうと物語はその後、急激に失速する。
おそらくその理由は(勝手な想像だけど)、まずこの映画のシナリオが「人物の行動」「話の整合性」などを無視してなにより「オチありき」で書かれたであろうこと。
親子の関係、性犯罪、思春期のさまざまな問題など、深く掘り下げれば重厚な人間ドラマにもなったであろう題材を、この映画ではとにかくサスペンスを盛り上げるためのツールとしてしか見なしていないためにすべてが浅く中途半端なままで終わっている。
よーするに、「意外な犯人像」、あっと驚く「どんでん返し」を狙うあまり、ストーリー展開におもいっきり破綻をきたしたということ。
しかもその「どんでん返し」が「どんでん返し」にすらなっていない。
劇中、しつこいぐらい繰り返し出てくる言葉「死の聖人」の正体が明らかになっても、そこにはなんの衝撃もない。
ラストのオチには、ため息すら出た。
頑張って演じたであろうクロエたんが気の毒になってきてしまった。
あれはないよ。
だって、あれじゃ犯人は最初からトビーの実の母親の死まで計画に織り込み済みだった、ってことになるけど、それはありえないでしょ。偶然に頼りすぎ。
どんだけ壮大な、というかめんどくさい復讐なんだ。
『リピート』という邦題は、この復讐の「繰り返し」ってことを意味してるのか。や、安い…。
これはあきらかに脚本がダメダメだと思う。
とりあえずなんとなくオカルトっぽい雰囲気を出しておけば多少(多少どころではないんだが)お話のつじつまが怪しくても通用するでしょ、という甘えを感じる。
シナリオは監督さんが自分で書いたようだが、撮影に入る前に「この話には無理がある。リライトした方がよいのでは」と誰も進言しなかったんだろうか。
こんなこといったらいろんな人から叱られそうだけど、あちらの映画でもシナリオがすっとこどっこいなサスペンスドラマってあるんだな、と思いました。
日本でDVDスルーなのも当然の出来でした(僕らが映画館で観ているのは選ばれた作品、ということですね)。
それでも、劇場未公開作品も含めて今まで観てきたクロエ出演作はどれも楽しめていただけに、この作品のチョンボはイタい。
なぜこれに出たクロエ?と問いたくなってしまう(本人じゃなくて親の判断なんだろうけど)。
売れっ子になった今は、ぜひとも出演作品は厳選していただきたいものです。
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