映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『キック・アス』


マシュー・ヴォーン監督、アーロン・ジョンソンクロエ・グレース・モレッツニコラス・ケイジクリストファー・ミンツ=プラッセ出演のアメコミヒーロー映画『キック・アス』。2010年作品。R15+

いまさらだけど、映画監督マシュー・ヴォーンと若き女優クロエ・グレース・モレッツの存在を世に知らしめた作品。

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なんの超能力もなく金持ちなわけでもないボンクラ高校生が、通販で買ったコスチュームを着てスーパーヒーロー気取りで車上狙いに戦いを挑むが、あっちゃりやられて病院送り。その後も懲りずにチンピラに襲われていた男を助けようとするが、当然ながらボコられる。やがてそんな彼のもとへ、やはりコスチュームに身を包んだ謎の父娘が現われるのだった。


それはいまから2年ぐらい前のこと。たまたまネットで観た映画の予告篇で、アイマスクをしてコスチュームを着た、どう見ても小学生ぐらいの女の子がナギナタや拳銃でイカつい大男たちを惨殺していた。

それが「これはアレ的に大丈夫なのか?」と思うほど容赦がなく、即座に「この映画は観なければ」と思った。その時点ではまだ日本での公開は未定だったけど。

で、まだかまだかと待ち続けてようやく日本上陸。

感想を一言で云おう。

いやぁ、面白かった!!

おしまい。


…困るんだよな。満足しちゃったらこれといっていうことがなくなるから。

まぁそんなわけで、まだ観てない人ははやく観るがいいさ。

でもそれじゃあんまりなので、いつものようにまたうだうだと感想書いていきますが。

ネタバレは無し。


しょっぱないきなりオニー・ネタから始まるのには笑った。

主人公の、オバサン先生だろうが誰だろうが「とりあえずオッパイならなんでも発情する」頭の悪さ加減には、自分の学生時代を顧みて実に身につまされるものがありましたが。

それとコスチューム着て鏡の前でポーズをキメて悦に入るのも世界中のアホに共通の習性( ´艸`)

ただ、実際にはこの映画を僕が“誰目線”で観たのかというと…。

当然主人公の“キック・アス”?

ではなくて。

たしかに「スパイダーマン」の主人公をリアルに描くとこうなる、みたいな冴えない高校生が、誰も立ち向かおうとしない町のチンピラたちの犯罪に苛立ちをつのらせ立ち上がる姿には共感をおぼえるけど、僕がこの映画で憧れたのは、部屋中に銃器を飾り、わが子をキリング・マシーンに育て上げた狂気のオッサン、“ビッグ・ダディ”。

年端もいかない娘に「誕生日プレゼントに子犬とお人形が欲しい」といわれてうろたえ、「冗談よ。バタフライナイフが欲しい」といわれてホッとするイカレた親父である。

自身が熱烈なアメコミマニアで、かつてティム・バートンが監督で「スーパーマン」を演じる計画もあったニコラス・ケイジ(ちょっと想像を絶するけど)が説得力抜群で演じるこの復讐に燃えるお父さんと、まるで天才スポーツ少女が競技に打ち込むようなノリで悪党をぶち殺しまくる娘の“ヒット・ガール”の親子の団欒に“萌え萌え”してしまったのだった。

ココアにマシュマロ入れるのなんて初めて知ったけど、美味いのかな。


この映画でヒット・ガールは主人公キック・アスの相棒(サイドキック)みたいな立ち位置だけど、むしろ彼女が主人公といっていいでしょう。

見せ場のアクションはほとんど彼女のシーンだし。

The Pretty Reckless - Make Me Wanna Die
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ポスターでも真ん中で、ロゴに写ってるのも彼女だし。

主人公の友人の一人の「俺は彼女が大人になるまで童貞を守る」という台詞には笑ってしまったけど、気持ちはわかる(^^)

演じるクロエ・グレース・モレッツについては、この映画を観た時点では『(500)日のサマー』は未見だったので彼女の出演作を観るのはこれが初めてだったんだけど、こまっしゃくれた感じがなんともいえず「イイ」(『ラピュタ』のロリコン船員的に)。

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『レオン』で映画デビューしたナタリー・ポートマンに自分を重ねて目標として、アクション・シーンではアンジェリーナ・ジョリーの演技を参考にしたという、素晴らしすぎる姿勢。

なるほど、ヒット・ガールの戦闘時のあの口のかたちはアンジーがお手本だったのね。


こんな娘がいたらダディは幸せだな。

う~む、おもいっきりケツ(アス)をキックされたい。

…何を口走ってるんでしょうか、私は。

これ以上続けると危ないオジサンになってしまうのでこの辺にしとくけど。
  

彼女のおかげでロリコンにめざめたかたもいらっしゃるかと思いますが(「ヒット・ガールは芦田愛菜ちゃんに似てる!」とかいってる人たちは一度眼科で診てもらった方がいいと思います)、映画が公開されたときにはすでにクロエ本人はだいぶ成長していた。


ちなみに2010年10月に来日したとき、インタヴューで「日本のマンガで好きな作品はありますか?」と質問されて「日本のマンガは読んだことないわ。だってあたし日本語読めないもの」とそっけなく答えている。

いやいや、クロエさん、日本のマンガは英訳されてけっこうアメリカでも売られてますが^_^;

おそらくインタヴュアーは、彼女が「日本のマンガは大好き。「ワンピース」も「NARUTO」もCOOLよね!」なんて具合に親日アピールしてくれるのを期待してたんでしょう。お気の毒さまでした。

というわけで、クロエさんは同世代の女の子たちと同様、ファッションや流行りの音楽が好きで(来日時も渋谷の女の子たちのファッションに関心を示していた)、お兄ちゃんたちの影響でゲームはやるようだけどアニメとかコミックなどにはまったくといっていいほど興味がないご様子。

キック・アス』でコスプレ少女を演じたからといって、ご本人はヲタクな趣味に特に理解があるわけではないようで。


主人公キック・アスことデイヴを演じるアーロン・ジョンソンは、あの常に半開きの口元が実にマヌケな感じで絶妙なヘタレ感を醸し出しているけど、実際は身長もあるしガタイもよく、顔だってイケメン。

そんな彼が、こちらは本物のブサイク君(クラーク・デューク。しかし彼の顔の造作については劇中で一切言及されず、最後には可愛いカノジョも出来ちゃう不思議な存在)が混じってる友人役たちと「モテね男」を好演していて、これまた役者というのは実に不思議な存在だと思う。


敵のボスをマーク・ストロングが演じてるけど、この人も悪役俳優として今や売れっ子だなぁ(最近彼が出演していた『ジョン・カーター』の感想はこちら。悪役ではない『裏切りのサーカス』の感想はこちら)。

ロビン・フッド』(感想はこちら)ではスキンヘッドだったからわかんなかったけど、もともとハゲてたんだ。

ワールド・オブ・ライズ』では毛がいっぱいあったし『シャーロック・ホームズ』でもオールバックがキマッてたけど、あれどっちもヅラだったのか。

なんかアンディ・ガルシアを邪悪にしたようなこの人の顔、好きです。

僕はゲイぢゃないですが。


ところで、これだけ絶賛しといてなんだけど、多分、観終わって「そんな大騒ぎするほどでもなかった」っていう人もいると思う。

映画館で僕の斜め後ろの席で観ていたお兄さんが、どこがそんなに可笑しいのか、時々「うひゃひゃひゃっ!」と耳障りな笑い声を上げてたんで少々迷惑したけど、こういう類いの映画にはちょっとアレな感じの人もけっこう来るんでそこはしょうがない。

ただ、そのお兄さんの反応はちょっと特殊であって、ヘナチョコ・ヒーローが巻き起こす騒動を描いた大笑いできる「おバカ映画」を期待すると、ちょっと違うかもしれない。

先ほどの残酷描写(といってもたいしたことはないんだけど、それを楽しそうにやってるのが小学生の女の子、というとこがミソ)もそうだけど、劇場での反応は大爆笑の渦というわけではなくて、ちょっと引き笑いが起こる、みたいなのが大半。

主人公がチンピラたちに対抗して袋叩きに遭う姿がYouTubeにUPされるというのは映画『[リミット]』でもそうだったように、今まさにとてもリアリティを感じる展開ではあるけれど、でも実際あの程度でアクセス数が急増してTVでも取り上げられて人気者になれるなら、多分すでに誰かが同じようなことをやってるはず。

あそこは主人公が人気者になっていく過程で、そのパフォーマンスがどんどん派手になっていく様子をもっと描いてもよかったんじゃないかと思う。


あと、ヒット・ガールは最高だったけど、主人公たちとくっつく女の子たちをもっとちゃんと描こうよ。

あまりにもヲタクの妄想がストレートに実現し過ぎちゃってて、観てて恥ずかしかったではないか。

ゲイだと勘違いされるとあんな嬉しい思いができるんなら、俺もゲイ宣言しようかな。

けっきょく、「リアリティ」という面では冒頭のチンピラたちにカツアゲされる場面が一番だったかな。

さしあたって怖かったりウザかったりするのはギャングなんかではなくて、町なかでいきなり「財布とケータイ出せ」っていってくる連中だもの。

原作はもっとガツンとくるようだけど、『ウォッチメン』(感想はこちら)もそうだけど評判は耳にしててもなかなかアメコミを気軽に手にとれるような環境じゃないので(映画館の売店でも売ってたけど、けっこういいお値段でした)。

あ~、ザ・ディッキーズが歌う「バナナ・スプリッツ」が耳から離れない。

The Dickies - Banana Splits (Kick-Ass Film Version)
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ところで、映画の前半はフツーの高校生がヒーロー活動をはじめる、というコメディ色が強かったのが、後半はコミックヒーロー物そのものになる。

それはそれでじつに爽快なのだが、じつは主人公のデイヴはふつうの高校生にもかかわらず最終的に何人も殺している(相手はギャングではあるが)。

同様にヒット・ガールの場合は父親であるビッグ・ダディとともに、やはり相手はならず者とはいえ殺す必要はない者の命まで奪っている。「この“お○○○野郎”」の捨て台詞とともに。


続篇でデイヴは、そしてヒット・ガールことミンディは前作で敵をぶち殺しまくったことに対して、なにがしかの代償を払わなければならないんじゃないだろうか。

といっても、それをリアルにやっちゃうとエレン・ペイジがコスプレヒロインを演じた『スーパー!』(感想はこちら)みたいになってしまうし、「キック・アス」シリーズでああいう展開が見たいわけじゃないので、作り手がそのあたりの倫理的な問題をどれほど意識した上で主人公たちのヒーロー活動を描くかにかかっていると思う。


キック・アス2』では多くの自称ヒーローたちが登場するらしい。

ちょっとイーストウッドの『ダーティハリー2』のような展開を予想させるが、はたしていかに。

また女性の悪役“マザー・ロシア”がヒット・ガールをボコボコにするシーンがあるともいわれる。

ヒット・ガールはどのような贖罪を強いられるのだろうか。

そしてキック・アス=デイヴとレッド・ミストの戦いの行方は?



ヴォーン監督はその後『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(感想はこちら)を監督。当初はその続篇の撮影のため、ということで『キック・アス2』の監督は降りてプロデュースにまわることに。

しかしやがて『ファースト・ジェネレーション』の続篇の監督も降板。『スターウォーズ』の最新作を監督するのではないか、といわれている(※その後、『スターウォーズ エピソードVII』の監督はJ・J・エイブラムスに決定)。

けっきょく『キック・アス2』(日本公開タイトル『キック・アス ジャスティス・フォーエバー』)の監督に抜擢されたのはジェフ・ウェドロウで、すでに撮影は終了して来年6月の北米公開にむけて(※その後8月16日に決定)現在ポストプロダクション中。

1作目の撮影時には11~12歳だったクロエちゃんも来年2月にははやくも16歳。

おっきくなったヒット・ガールが帰ってくる!(*゜▽゜ノノ゛☆(最近のヒット・ガールについてはこちら→ヒット・ガール再臨キック・アス2』の予告篇はこちら

待ち遠しいな~っと。


MIKA, RedOne - Kick Ass (We Are Young)
www.youtube.com

Mean Video Mash Up: The Soft Pack vs Chloe Moretz, Clark Duke & Christopher Mintz-Plasse
その後のミンディ(ヒット・ガール)(^o^) なぜかレッド・ミストと共闘。眼鏡のおデブ君クラーク・デュークが飛ばしてるお菓子はトゥインキー(詳しくは『ゾンビランド』を参照のこと)です。
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