映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

夢と時間 『インターステラー』『インセプション』

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最新作『TENET テネット』の公開の前にクリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』(感想はこちら)『ダンケルク』(感想はこちら)『インセプション』『インターステラー』がIMAXで再上映されていて、あいにく今回『ダンケルク』は観られなかったんですが、7月の『ダークナイト』に続いて『インターステラー』(2014)と『インセプション』(2010)を鑑賞してきました。

ネタバレにご注意ください。

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僕が観たのはIMAXレーザー版で、でもどうやら本当にIMAXの映像を隅々まで観るには限られた上映館でなければならないようなんですが、僕が住んでるところにあるのはIMAXレーザーの上映館だけなので、ともかくそちらでということで。

それでも2本連続でのIMAX上映でなかなか贅沢な時間を過ごせました。

上映時間は『インターステラー』が169分、『インセプション』は148分。

それぞれ結構な長時間なのでこの2本をハシゴしたら途中でくたびれて眠ってしまわないかちょっと不安だったんですが、観始めたら自分でも驚くほど集中して入り込んでしまったのでした。

どちらも初公開時に観ていますが、『インターステラー』は6年前、『インセプション』の方はもう10年前の作品なんですね。

これからも新作が公開されるたびにこうやって過去作をIMAXで再上映するのか、それとも今回限りの企画なのかわかりませんが、最初に劇場公開されてから数年~10年経って再びスクリーンで観られる映画って限られてるから貴重な体験でした。お金はかかるけど^_^;

こんなに短期間でクリストファー・ノーランの映画をIMAXで観まくることができるなんて。

また、ノーラン監督は『ダークナイト』以降は常にIMAXでの上映を意識して作品を作っているから、わざわざIMAXで観る価値は大いにあるし。

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で、すでに各作品の感想は書いているので、初公開以来何年ぶりかの劇場鑑賞で気がついたことなどをちょこっと記しておきますね。

まず『インターステラー』が約170分もあったことが少々驚きだったんですが、すでに一度観ているとはいえ、全然長さを感じなかった。むしろ、そのあと観た『インセプション』の方が長く感じたほど。なんでしょうか、時間の感じ方が2つの作品で変わってたのかな。どちらも「時間」が重要なキーとなるお話でしたが。

主演のマシュー・マコノヒーの息子トムを演じるケイシー・アフレックの少年時代をティモシー・シャラメが演じていたことを今回初めて知ったのでした。確かに彼の顔と名前を認識したのはここ2年ほどのことだから、2014年の時点ではまったく意識してなかった。

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あと、ジェシカ・チャステイン演じるマーフィー(少女時代を演じているマッケンジー・フォイは、その後2018年に『くるみ割り人形と秘密の王国』に主演してキーラ・ナイトレイと共演)の同僚をトファー・グレイス(『ブラック・クランズマン』→感想はこちら)が演じてたことも気づいてなかった。

年老いたマーフィー役はエレン・バースティンだったのね。

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ノーラン監督って同じ俳優を何本かの作品で使う傾向があるので、続けて観るとまるで劇団かなんかのようで面白いんですよね。

僕は『インセプション』でトム・ハーディという俳優さんのことを初めて意識したんだけど、彼とマリオン・コティヤールジョセフ・ゴードン=レヴィットは続く『ダークナイト ライジン』(感想はこちら)に(トム・ハーディは『ダンケルク』にも)、また『ライジング』でキャットウーマン役だったアン・ハサウェイは『インターステラー』に続投。

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マイケル・ケインは『バットマン ビギンズ』以降、毎作出演しているし、キリアン・マーフィも「ダークナイト」トリロジーと『インセプション』『ダンケルク』に出ている。「ダークナイト」トリロジーバットマン役のクリスチャン・ベイルは『プレステージ』にも出演。渡辺謙は『ビギンズ』以来2回目。今回はちゃんと見せ場のある役でした。

ちなみに『インセプション』の“設計士”アリアドネ役のエレン・ペイジは2007年の『JUNO/ジュノ』でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたけれど、受賞したのは『エディット・ピアフ愛の讃歌』のマリオン・コティヤール。そのコティヤールが演じたフランスの国民的歌手エディット・ピアフシャンソン水に流して」が『インセプション』では重要な役割を果たす。偶然だそうだけど、なんだかちょっと因縁めいていて面白いですよね。

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インセプション』でコティヤール演じるモルはディカプリオが演じる主人公コブの亡き妻で、エレン・ペイジ演じるアリアドネはモルの幻影に囚われたコブを救おうとする。

インセプション』を観ていると、『ダークナイト ライジング』の敵の黒幕も予想できちゃうんですが。

エレン・ペイジってひと頃よく映画で顔を見たんだけど、最近ちょっとご無沙汰だなぁ。また彼女の主演映画が観たい(『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』の感想はこちら)。マリオン・コティヤールも同じく(『エヴァの告白』の感想はこちら)。

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二人とも、どちらかというとハリウッドの超大作よりもミニシアター系の小粒な映画が似合う女優さんだと思うけど。

今回ハシゴして観た順序は『インターステラー』が先なんですが、ちょっと文章がゴチャゴチャしてきちゃったんで^_^;とりあえず『インセプション』の方から書きます。

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あらためて、ぶっ飛んだ映画だな、とw

人の夢の中に侵入してそこから情報を盗み出したり逆に潜入している相手の心にこちらが意図した考えを植えつけるスパイたちの物語なんだけど、それらの技術についての説明は一切省いて、いきなりお話の途中から映画は始まる。

ディカプリオと老けメイクをした渡辺謙が対峙する冒頭とラストが繋がるようになってるんだけど、スパイたちは途中で加わるアリアドネを除くとほとんど全員がすでに仲間だったり同業の知り合いで、彼らの出会いからいちいち描かない。

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だから状況を把握したり展開についていくのが結構大変で、集中して観ていないと置いてかれそうになる。

でも、この手際がなかなか見事なんですよね。すごくわかりづらい設定を時々挟まれる台詞による説明と、タイムリミットを作ることで観客にじっくり考える余裕を与えず、どんどんストーリーを先に進めていく。

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たとえば、夢の「第二層」でどうしてみんながプカプカ浮いてんのかはよくわかんないんだけど、もうその絵ヅラが面白いから細かいことは気にならなくなるんですよね。

「もしかしたら、これは全部夢ではないのか?」という疑問に囚われてしまう恐怖。

夢を見ている最中の、その夢の中での状態が映像で再現される面白さ。時にそれはシュールだったり不条理だったりもする。でも夢って確かにそうだもんな。通常の物理法則を無視できたり、かと思えばまるで起きている時のようなリアルな苦しさや痛みを感じているようにも思えたり。

昔、ある友人が「自分は現実の世界をまるで映画のように考えている。人生を映画のようにエンディングまで自分で演出したい」というようなことを言っていて、そういう考えは自己実現のための助けにはなるだろうから、その時は「なるほどねぇ~」と聞いていたんだけど、でもよくよく考えてみるとちょっと恐ろしいことでもあるな、と。

だって、映画なんだったら死んだって生き返ることが可能だろうし、人を殺してもそれは「本当に殺したわけじゃない」から罪の意識を覚えたり罰を受ける必要もない、という結論に至りかねないでしょう。

現実を、映画=フィクション=夢、のようなものとして考える、というのは、ものの例えとしては有効かもしれないが、それをほんとにやってしまうと危険なんではないか。

そんなことを考えてしまった。

というのも、戦争をゲームと同様に考えていたり、自分の中の勝手な「美学」やら「正義」などに世の中の他の人々を付き合わせようとする輩はすでに存在していて、そういう連中の「夢と現実」の区別のついてなさに恐怖を覚えることがしばしばあるので。

夢と現実の区別がついてない人間は案外多いのではないか。

現実があまりにデタラメで突拍子もないことばかり立て続けに起こるものだから、「これは誰かの夢なんじゃないか」と思ってる人もいるだろう。

マリオン・コティヤール演じるモルは、夫のコブとともにあまりに長い間夢の中にとどまり続けたせいで現実に戻ってももはやそこを現実だとは思えず、夢から覚めることを望むようになる。

これが現実なんだ、といくらコブが説得しても彼女は納得せず、子どもたちのことも本物だとは思えなくなって、ついに「目を覚ますため」に建物から身を躍らせて死ぬ。

モルを失ったことでコブもまた常に彼女の幻影に悩まされて任務にも支障をきたすことに。

最後にコブは仲間となんとか仕事をやり終えて離ればなれになっていた我が子たちとの再会を果たすが、それが現実なのか夢なのかを判断するためのトーテム=コブのトーテムは独楽(コマ)──は、倒れたのか廻り続けているのかわからないまま映画は終わる。

この映画の不気味さは初公開時よりも今の方がさらに増しているんじゃなかろうか。

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そんなわけで、お次は『インターステラー』ですが。

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正直なところ、2014年の初公開時にはその映像に圧倒されながらもストーリーがよく理解できないところがあって、そこまで好きな作品ではなかったんだけど、今回、再びIMAXで観て、何かとても打たれるものがあったんですよね。以前観た時には感じなかったものが込み上げてくるのがわかった。

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それは実際、コロナ禍というこのタイミングだったためなのだけれど、地球を捨てなければならないような極限の事態となっても、それでも私たちは未来を諦めるわけにはいかないのだ、と訴えるような想いが伝わったから。

家族を、仲間を、なんとか救おうとするその気持ちが人類全体を救うことに繋がるんだ、という信念。全体のために犠牲にしてよい命などない。

また、「時間」はけっして戻らないので人間は死に別れた者とは二度と会うことはできない、という冷徹な現実を実感させながら、それでも「未来」は変えることができる、という希望を描いているところにグッと惹き込まれました。「過去」は変えられないけど、それでも悲観するには及ばない。私たちには明日があるのだから。

アポロ宇宙船が月に到達した史実が「捏造」ということにされて、宇宙に行くなどという無駄な行為はやめて地道に今の生活を見つめよう、という風潮の中で再び宇宙に飛び立つマシュー・マコノヒー演じるクーパーの姿から、ノーラン監督の姿勢がうかがえる。

面白いのが、2018年(日本公開2019年)にデイミアン・チャゼル監督がアポロ11号の月面着陸を描いた『ファースト・マン』(感想はこちら)は、この『インターステラー』への返歌のような作品になっていたこと。

映像の面でもチャゼル監督がノーラン作品を意識しているのは明らかだったし、『ファースト・マン』ではライアン・ゴズリング演じる主人公ニール・アームストロングが月に向かったのは、亡き娘との別れのためだった、というふうに描かれていた。

国家の威信を懸けた事業、ではなくて、とても個人的な動機。実にノーランっぽい。

インターステラー』と『ファースト・マン』を続けて観たら、感動が倍増するのではないか。

そのうちやってくれませんかね?(^o^)

…2本の長大な時間と空間の旅を描いた映画を観終わって、一瞬、今がいつで自分がどこにいるのかわからなくなるような錯覚に陥った。まさに“インセプション”の世界そのもののような。

いやぁ、充実した数時間でした。

『TETET テネット』の公開も迫ってますが、これもIMAXでぜひ観たいと思います。


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